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小兎な許嫁編(2)
13.
しおりを挟む「クラン様お誕生日おめでとうございます。」
真っ先に小さな花束をくれたのはアルトであった。
帰る前の馬車に乗る前にアルトが買って用意した花束で、クランは瞳を輝かせ、アルトに抱きついた。
「アルトさん!一番最初です!ありがとう!大好き!」
黒い鎧の女騎士に抱きつくクラン。アルトは兜をはずし、前に屈むとクランに聞いた。
「婚約者殿からは?」
クランはポカンとした表情をし、小首を傾げた。
「お忙しいかたですから、私にかまってられないのですよ。名ばかりの許嫁ですから。」
「姫、そこは怒ってよいところです!ラパス殿は今日は城の任務についているはずです。さっきも姿を見たので近くにいるはずです!」
「あ、そうなんですね。ふふふ。」
「姫、あなたは大事にされるべき方なのです!ラパス殿にようやくできた大事な婚約者様なのですから、こんな大事なイベント、真っ先に祝うべきものだと私は思うのです。」
「そう?じゃあ帰る前に少し探してみましょう?どこにいらしたの?」
「案内します。」
クランはアルトに連れられ鍛練所にきた。
汗を流す…稽古中のラパスがそこにいた。丁度ルイヴ女王の使者がラパスを呼びに来たところ、素振りを終えたラパスはそれに答え汗をぬぐうなか…駆けつけたクランに遭遇した。
「ラパス様、お疲れ様です。あの…私、今日18歳になりました。まだ見た目はこんな風ですが…大人に一歩近づきました。あの…お暇なときに祝って頂けたら……うれしいです。今日はハミン国で祝ってもらえるのでこれから帰ります。急にお邪魔してすみませんでした。では、私はこれで失礼いたします。」
クランは礼をし、アルトからもらった花束を大事そうに抱え…鎧の黒騎士アルトとその場を去った。
ラパスは固まった。
迂闊さに己を恥じ、大事そうに花束を抱えたクランの姿が目に焼き付き胸にジクジクと痛みを感じた。
「誕生日か…あ、いかん声だけでもかけなくては!」
ラパスは初めての行動に出た。
「クラン王女!」
クランは足を止め振り返り、ラパスは、何となく兜越しにアルトの殺気を感じながら怯むことなくクランにかけよった。
「はい。ラパス様。」
ラパスは膝をつき、忠誠を誓うように語りかけた。
「18歳の誕生日おめでとう。今日は手ぶらですまない。だがなにか祝いたい。」
「では…抱き締めてくれますか?」
クランは笑顔で両手を広げ…ラパスは立ち上がるとクランをギュッと抱き締めた。
クランは上目使いにラパスを見上げ…キラキラした笑顔を向けた。
「ありがとうございます。ラパス様の匂い好きです。お仕事頑張ってください。」
そしてクランはラパスから離れ、帰っていった。
ラパスはこの時…クランに心奪われた。この日を期にラパスはクランとの距離を縮めることになるのだった。
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