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4話【図書室の魔女】*
しおりを挟む図書管理人の1日の作業は、図書の貸し出しの受付から始まる。生きた図書はそのまま外に出ればモンスターになる可能性があり、図書室内で選んだものをカウンターへと提出する。『申込み日付けと所属場所、名前を専用のカードに書いて本の上に乗せておく。』カードは魔法で本とくっつくようになっているため間違った本を届ける心配はない。最後はヨナの専用の受け付け印を押して、ヨナが申込み者のもとへと届ける。ヨナが届けるのは周りへの配慮で、生きた本の暴走もなく貸出しするためでもあった。
・ * ・* ・ * ・
この日の朝…ヨナは前日の夕方に受け付けた本を届けるために会議室にやってきた。
コンコン!
「図書室責任者のヨナ・ルハンです。本のお届けに参りました。」
「どうぞ。」
ヨナはそっと扉を開ければ、将官達が集まり書記官がテーブルに広げた地図に印をつけていて参謀 の指揮のもと将官たちに意見を求めているところだった。ヨナは誰に本を渡せばよいのか立ち尽くしていると書記官の青年がヨナのもとへと近づいてきた。
「ご苦労様です。本の扱いの説明をお願いします。」
「はい。この本は会議の内容に合わして地図のページを開いてくれます。本は丁寧に扱ってくださればおとなしいです!城からの持ち出しは安全の保証ができないため禁止させていただきます。終わりましたら図書室に届けてください。」
「それだけでいいんですか?」
「ええ。話は以上です。失礼します。」
ヨナは本を渡すと一礼をし部屋をあとにした。
書記官は注意事項が難しくないことに油断したのだろう手が滑り、本を床へと落としてしまう。
『お~の~れー人間!お前の体を乗っ取ってやる!』
落ちた本はパラパラと開き、黒い渦を出現させると書記官の足をとらえ書記官の青年が部屋の外、通路に響く程の叫び声をあげた。
「本があ~!助けてくれー!!」
通路を歩きだしたヨナにその声はすぐに届いた。通路を歩いていたはずのヨナは突如姿を消し会議室にパッと転移したように現れた。
部屋を出たはずのヨナが突如現れ、会議室は騒然とし、書記官を捕らえた渦が足から腰へと這い上がる中、ヨナが右の人差し指をくるくると回せば紫色の光の粒が渦を巻いて現れ、本がバチバチと火花を散らした。
『わっ!あち!』
書記官は黒い渦から解放され床に尻餅をつけば剣を抜いた中将が本の前に現れた。
「…本ごときがてこずらせおって!真っ二つに切り落としてやる!」
ヨナはさっと前にでて本をてにすると中将が剣を振り下ろすところ、ヨナは紫の瞳で見上げれば剣を降ろした中将ルイス・ガーゼルは本を取り上げようとして、ヨナが抵抗をして倒れこんでしまった。その手にはしっかり本が収まり、彼女の腕が本の暴走を抑えた。そのあとようやく会議が続行。参謀が本を利用し会議が進行し、ヨナは壁際の椅子に腰かけ本を監視するようにその場にいた。
会議が終わり図書室に向かう帰り道、ヨナは迎えに来たルーをお供に本を抱えため息をついた。
「はあ、あの人の殺気に満ちた表情は、心臓に悪いわね。あなたもお利口にしないと、バラバラにされちゃうわよ?」
ヨナは腕の中の本に語りかけ本はカタカタと震えていた。
・ * ・* ・ * ・
ヨナはふとここへ来たばかりの時の事を思い出した。
(中将ルイス・ガーゼル様がお詫びに持ってきた大きな花束。なんの気まぐれかと思ったけど男性からもらった花束はあの時が初めてだった。もう彼が気まぐれに気にかけてくれることはないかもしれないわね。)
ヨナは、そう思いながら図書室に戻れば、ドライフラワーにして吊るされた花束がめにはいると踏み台を使い、吊るした花を手にし、水の入っていない花瓶に生けると、色があせないように、そして触って崩れないよう魔法をかけ、カウンターの席に着くと図書室の貸し出し依頼の本をチェックしていった。
孤独な図書室の魔女は自分にも素敵な誰かが現れるのか、失恋をふと思いだし切なくなる気持ちをを抑え込みながら仕事に励んだ。
しばらくすると、食事をとるのも忘れ本の修理に夢中になっていたヨナは図書室に現れた客人に驚いた。
最初にもらった花束よりも大きな花束を持って現れた中将ルイス・ガーゼルがそこにいた。
「今日はむきになって悪かった。詫びに来たのだが受け取ってもらえるだろうか。」
ヨナは席をたち、笑顔でルイスを図書室に迎えいれ、花束を受けとると、満面の笑みをルイスに向けた。
「ありがとうございます。大事にしますね。あっ!以前いただいたお花もこちらにあるんですよ?」
ヨナは自慢げに花瓶に生けたドライフラワーを指差せばルイスの視線がそちらに向いて、瞬間、みるみるうちに顔を赤くしルイスは顔を隠すように片手で顔を覆い、指の隙間からその花をまじまじと見つめた。
「もう枯れて捨てたかと…」
「初めて男性から花束をいただいたんです。捨てたくなくて…」
ヨナは花束越しにルイスに告げれば、ルイスはヨナが手にした花束を奪いカウンターに置いた。
「中将様?」
ルイスはヨナの両肩をガシッと両手で掴むと真剣な眼差しを向け、
「魔女…ヨナ・ルハン…あなたに交際を申し込みたい!」
ヨナは思わず涙を流した。
「…ごめんなさい…私…失恋したばかりで……」
ルイスはとたんに顔を青くし、ヨナを突き放して背中を向けた。
「…いや、急にすまなかった。」
ヨナは帰ろうとするルイスを引き留めるように声を振り絞りなんとか言葉にした。
「違うんです。時間をください。嬉しいけど、気持ちが追いつかなくて」
「…わかった。また来る。」
ルイスは背中を向けたまま少しだけ明るい声で告げると足早に図書室を後にしたのだった。
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