魔女に惚れた冷酷将官の求愛

yu-kie

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9話【ルハンの魔女】*

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 一時間ほどで本を読み終えたルカイは背伸びをし、深呼吸した。

【本によると滅びかけた小さな国に心優しい王が居た。旅の途中に訪れた魔女は、優し過ぎる王に恋をした。国の衰退を案じた賢い魔女は王に助言し、国は新たらしく魔女の国として生まれ変わり、三人の娘が産まれた。魔女は婚姻を結び一人は魔法使いの長へと育て、二人は王女として育つなか末の娘は外の世界へ旅立つ。自由奔放な娘は魔力を受け継ぎ国のどこかで子孫を増やし、彼らは国を支えた。平民から現れた魔女の素質をもつ者、王族から現れた魔女の素質をもつ者、何れも根源は同じ魔女の母胎から産まれた子供。すなわち、魔女に選ばれた娘達は皆同等である。城をでた末の娘のルハンの名から『平民から現れた魔女』を『ルハンの魔女』と呼ぶものとする。】

ルカイは最後の文面を思い返した。

(ルイスが真剣に考えるなら魔女のヨナには国へ戻った際に王族と同等である証明を受取り、我が国へ提出する必要があるだろう。そうすれば、花嫁教育ができると言うもの。しかし、ルイスがどこまで入れ込んでるか、魔女は本気で息子を受け入れるきか。)

「参考になった。私はこれで失礼する。」

 ルカイは立ちあがり、近くで本とじゃれあいながら修復していたヨナに読み終えた本を差し出した。

「ルイスは真剣だが、イエスかノーかはっきりしてやることだな、我がガーゼル家に相応しい娘でなければ、どんなことがあろうと阻止してやる。心しておくんだな。」

 ルカイは鋭い眼差しでヨナを見下ろすと、ふいと背中を向けてそそくさと去っていった。ヨナはその姿をルイスと重ね、ルイスの仕草も父親譲りなのだと思うと、何故だか少し微笑ましく感じたのだった。

 * ・* ・ * ・ * ・* ・ * 

 本日の作業を終えれば窓の外は日が暮れ始め、ヨナは最近姿を見ていないルイスを案じた。何故ならここ最近、侵略しようと何度か攻め込んできている国があるとか中将のルイスも動き出したとなれば、戦いはより長いものになる。戦争勃発もあり得る状況。気まずいまま別れたきり、会えなくなり徐々にだが、側にいて役に立ちたいと思った自分の心の変化に驚き、思わず顔を手で覆っていた。

「次会うときはどんな顔をしたらいいんだろう。」

 考えるほど心臓がとくとくと高鳴り、胸がきゅんと締め付けられた。

「これが好きってことかしら。」

 本たちと従魔しか居ない図書室の中、ヨナは一人呟いて居たはずだった。

「…中将さま…」

「なんだ?」

 ヨナは誰も居ないはずの部屋に聞こえたルイスの声に顔を紅くして振り返れば、遠征から戻ったばかりの汚れた騎士服を身につけたルイスの姿がそこにあった。

ヨナはとたんに青ざめた。以前負傷した傷を案じて、ヨナは駆け寄ると傷が無いか、身体中を手で触れ目で確かめた。それも念入りに。

「怪我は大丈夫ですか?」
「痛いところは?」
「私の部屋で休みますか?」

慌てたヨナはルイスの返事が来る前に立て続けに質問し、最後の質問のあと、急に恥ずかしくなり、ルイスの胸に手を当てたまま、ゆっくりと見上げると、ルイスは力強くヨナを抱き寄せ耳元に囁いた。

「最後のは、夜のお誘いか?」

 ヨナはそれでもよいと、恥じらいながら小さく頷づけばルイスはヨナのうつむく顎をに触れ自身の顔に寄せるようにしそのまっすぐな瞳にヨナを映すとその唇に自身の唇を重ねた。

 静かな部屋にチュッチュッと唇を触れあう音が何度も室内に響いた。ルイスはキスを止めるとぽぉっと酔ったように顔を紅くし潤んだ瞳をするヨナを冷たく見下ろした。

「悪いがこれからまだ報告があるんだ。夜遅くなるがまた、こちらに寄らせてもらう。」

そう言うとルイスはくるりと背を向けた。

「ようやく帰還できて、真っ先にヨナの顔が見たかった。以前ヨナ言っていたキスの【おまじない】で少し疲れも飛んだみたいだ。行ってくる!」

 ルイスは恥ずかしさから背中を向けたままそう言うと、慌てて部屋を後にした。

「はい。お待ちしてます。」

 ヨナはその背中へ向け声を振り絞って返事をした。戻ってきた時なにが起こるのか、考えてしまうと鼓動が高鳴り、共に朝を迎えた日の事を思いだし、恥ずかしくなり顔を紅くし自身の部屋へ向かった。


  
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