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ルイの旅立ちとその後の二人の話

17 旅立ちの数日後

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ルイが旅立ち、グリアとジンは森の巡回を少し寂しく感じていた。昼も過ぎる頃家に戻った二人を前に、ジンの妹パルが子供たちを寝かし、ジンとグリアを呼んだ。

「兄さん義姉さん、今日はお仕事も早く終わったんだし、たまには街にデートしてきたら?」
「パル一人にして不審者が来たら…」
「兄さん大丈夫。もうすぐ彼が来る頃なの。子供が好きだって言うから、休暇日の今日は子供たちと遊んでくれる予定なの。」
「『彼』って、いつも来る騎士のソクトくんか?」
「ええ。あ、もう来たみたい。」

 ジンとグリアが部屋の窓から外を見ると、馬を颯爽と走らせ現れた騎士がいた。

 パルは家の扉を開け、青年騎士ソクトを招き入れ、玄関に現れたグリアとジンは軽く挨拶を交わした。

「やあ、ソクトくん休暇にすまない。パル…じゃあ、行ってきていいんだな?」

 ジンはパルに聞けば、パルはソクトと何度か顔を見合せ、頷いた。

「うん。楽しんできて。」
「どうぞ。」
「困った時はパルに預けてる首に掛けている魔石に呼び掛けてくれたら俺とグリアはすぐに戻ってくるからね。」
「はい。兄さん。」

 ジンはパルの頭をくしゃりと撫で、グリアがジンの手を握った。

「ありがとう。お言葉に甘えて、少し街に出掛けてくるよ。」

 グリアは積極的にジンにしがみつき二人はにこにこして、パルたちに手を降り転移した。

    **

 ジンは行きたいところがある。ルイが勇気を絞り話してくれた指輪のことだった。

 近くの町は特に見て回るほどの店も並んでいないため、やって来たのは王都の街。

 食べ物のお店が並ぶ道を抜け、ドレスを作る服屋、宝石店、高価な物を売る店が並ぶ道を歩き、ジンはグリアを連れて入ったのは宝石店だった。

 グリアは森の巡回意外、ジンと二人きりで『男』を意識するときは口数も減り、恋する乙女に変わってしまう。それは、夫婦として夜を共にしてから目覚めてしまったもので、グリアにとってジンはそれだけ特別な存在となっていたのだ。

 ジンはよくわかっていないグリアの宝石に目を向ける様子を見、サイズだけ図ると、店員に耳打ちをし店を出た。

「ジン、もうおわりなの?」
「またあとで来るさ。たまには流行りのパンケーキの店とか行かないか?」
「なんだ?食べ物の店か?」
「パルが女子に人気だと話していたから、グリアも喜ぶかと思ってね。」

 ジンは店の前に立ち止まれば、ジンにくっついて離れないグリアの目に、フルーツと生クリームのたっぷりのったパンケーキの看板が目に入り、グリアは目を輝かせた。

「な、なるほど!」
「気に入ってもらえるかな?」
「ジン、早く!早く入ろう!」

 グリアはジンの腕をひき店内へと足を踏み入れた。

 森に隠っている年月が長いグリアには、夢の世界に来たようなわくわくした空間に目を輝かせ、注文したパンケーキがテーブルに置かれると鼻にクリームを付けたことに気がつかないまま、美味しいと頬張り、ジンはそれを微笑ましく思いながら、注文した飲み物のカップに口をつけた。

そのあと二人は宝石店によりジンはなにかを購入し、二人は転移魔法で夜の森近くの丘に来た。

 空はすでに暗く星が一面に広がり、丘のしたには森が広がる。

 ジンはグリアと夜空を眺めた後、ポケットから小さな箱を取り出した。

「グリア、目を閉じてくれる?」
「ん?なんだ?」
「「・・・」」
「いいよ。」

 ジンの声を合図にグリアが目を開けると、左手の薬指には先ほど宝石店で綺麗だと思いてにしていた指輪があった。

 瞳と同じ桃色に輝く宝石に、グリアはジンを見ればジンはもう1つをグリアに差し出した。

「俺にも付けてくれる?」

 グリアはジンから受け取ったもう1つの指輪をジンの左手の薬指にはめた。

「グリア、君のお陰で今の俺がいる。妹も、可愛い子供たちも…いつもありがとう。どうかこれからも、末長く夫婦でいよう。愛してるよ。」

「わ、私も…幼い頃、助けてもらったあの日から、私はジンが好きだった。あの感情の意味をわからずにいたけど今になってそうなんだとはっきり言える。ジンが好きだ。」

 グリアは目を潤ませ見上げれば少し背の高いジンは見下ろし見つめあった後、二人は星空のした、キスをした。

 まるで結婚式の誓いのキスをしているように。

 「そろそろ戻ろう。ソクトくんも送らないとな。」
「ああ。」

 グリアはジンの胸に収まるように顔を寄せぎゅっと抱きついたまま…ジンは苦笑いしながら森にある我が家へと転移したのだった。



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