白薔薇騎士と小さな許嫁

yu-kie

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 お昼をすぎる頃、約束どうり、キラルを乗せた馬車がスティアを迎えに来た。

 スティアは友人ミシュンとその姉と別れの挨拶を交わしスイラート邸を後にした。

 それからと言うもの事あるごとに学園や、王都の老夫婦の住むメディアン邸に来る客人から、スティアの知らない、辺境の地へ来る前の学園時代のライカの話を耳にする機会が増え、スティアの心に徐々に変化が現れていた。

 まだ幼いうちからライカが許嫁なのだと父リューイから言われ、ごく自然にそのことを受け入れていた。彼女はライカを慕い、好意はあっても、恋愛で抱く《好き》とは違うもの。

 辺境の地を離れた今、同じ年の子供達に会い、老夫婦の友人たちと言葉を交わすようになり、彼女の気持ちは確かに恋愛感情へと変わりつつあったのだった。

    ††††

 5ヶ月後。長い学園の休暇の合間に、スティアは老夫婦の屋敷をでることに…。両親の暮らす辺境の領地へ向け馬車は走り出した。

 馬車内にはキラルがベテラン侍女に監視されていて、居心地悪そうにしている中、スティアはキラルの助けを求める視線に気づくことなく、馬車の窓から徐々に変わる景色を眺め、脳内はライカに会いたい気持ちが膨らみ、見慣れた景色が見えてくると、スティアは嬉しくて胸を高鳴らせていたのだった。

    ††††

 途中、馬車が止まったのは森の中だった。夕暮れ時に馬車の先頭で綱を引く御者が馬車内を覗いて謝罪した。

「すみません。道が塞がれてまして…土砂と大量の大木が…お屋敷も近いので歩いてゆかれた方が早いかもしれません。」

「歩くなら私が本来の姿になりましょう。」

 キラルは胸を張り自分の活躍の場だと言わんばかりに目を輝かせた。

「そうですか、キラルさんは狼でしたね。私は馬がいるのでここで待つことにします。すみませんが、応援を呼んできてもらえるとありがたいのですが。」
「わかりました。」

 キラルは馬車から降り、早速大きな狼へと姿を変えた。

「キラル、グローリアも乗せてね?」
「げっ。」

 キラルは地上に立つ侍女を見下ろし嫌そうに声を発した。

「よいです。歩いてゆきますから。」

 グローリアは意地をはり、歩くことを主張したが、スティアはグローリアが足を悪くしていることを知っているため、キラルに念を押すことにした。

「キラル、グローリアを労れないなら嫌いになるよ!」
「ひっ!そ、それだけわあ~。」
「グローリア、キラルが乗ってって。キラルは大きいから大丈夫よ。」

 キラルは仕方なく伏せの状態になり、スティアとグローリアを乗せて風を切るように颯爽と走り出した。

「ほぉ~立派な狼になったもんだ。」

 御者は狼が見えなくなるまで手を振り見送った。

 キラルはグローリアの悲鳴を耳にしながらも気にもとめずにひたすら走り、あっと言う間に屋敷の敷地の入り口へとたどり着いた。

「着きましたよ~お嬢様。」

 キラルは伏せの状態になり、二人をおろしたつもりでいたが、降りて来たのはグローリアだけ。しかもグローリアは顔を紅くしてキラルを叱った。

「あなたは!何度呼んでも止まらないのね!あなたのせいよ!お嬢様は森の木々に潜んだ誰かの罠でさらわれてしまったのよ!」

 敷地の要塞の塀の前、門番と迎えに来た兵士を前にグローリアはキラルを罵倒し、キラルは尻尾を垂らし、しょんぼりとした。

「キラルさん、皆さんにどうやって走ったか説明なさって!私は見たことを皆さんにお話しします!」

 こうして突如起きた誘拐事件に、リューイとライカも駆けつけ捜索が始まろうとしていた。

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