白薔薇騎士と小さな許嫁

yu-kie

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 その頃スティアは…。

 スティアは前世の夢を見ていた。黒髪に赤い瞳の美少年は、リクウと名乗り魔界の復活の泉から人の姿を持つ魔族として生まれた。

 生まれながらに備わる膨大な魔力。彼は魔王城に住む人間に育てられた。人間の世界を追われこの世界に逃げ込み、生きるために戦い、魔王城の住民として受け入れられた人間。

 彼は短命な人間。老いて寿命を終え、城の仲間たちに敬れてその生涯を終えた。

 彼は仲間思いな人間で、その影響を受けた者たちもいた。リクウもまたその一人。

 生きるために人間達と戦う日々にやがて疲れを感じ…内心では平和にのんびり過ごしたいと思った。魔王である以上叶わない願いと思い非道に生きてきた。いつか、勇者が現れ生涯を終えたなら、戦いの無い世界で…夢にまで見た獣達のふわふわの毛をもふもふしたいと。

    ††††

 スティアは目覚めると、そこには廃墟の城の崩れず残った謁見の間。スティアはあたりを見回すと自分は玉座に凭れかかるように座っているところだった。

「ここは?ん…確かキラルの背中に乗って移動中に網が落ちて来て…、えっ!ひやあ~ん!」

 黒い丈の短いドレスに白いズロースを履いていた。スティアは、慌てるように自身の髪に手を伸ばしてみると、いつもと変わらない白に近い桃色の背中辺りまで伸びる緩やかな巻髪に、ホッと胸をなでおろした。

「お目覚めですか、魔王様。ようやっと貴方様を見つけることができました。ああ、あのロリコン変態キラルが魔王様を独り占めするなんて、許せませぬ。もう大丈夫ですぞ、この城は今日より貴方様の城でございます。いつでも我らは侵略に動きましょうぞ。」

 スティアは玉座の前の猫の集団に前世の記憶を重ねた。

 先頭に膝をつく猫耳おかっぱの黒髪の武装した女性の獣人はキラル同様生き延びた不老の魔族、ギメラ。スティアの記憶にある彼女は魔王リクウの妃の1人だった。

「魔王様、今のお姿も麗しゅうございます。ああ、あの頃貴方様との間に子がいたなら、今の魔王様のように美しい子が産まれたでしょう。」

 ギメラは妄想に浸り1人まぶたを瞑り涙をこらえ口をへの字にしていた。

「変わりませんねギメラ。喋りだしたら止まらないのね。」
「はっ!魔王様!」
「ギメラ、今の私はスティア・メディアン。もう魔王じゃないの。」
「左様で…」
「だから名前で呼んでくださる?」

 ギメラは魔王ではないことを主張された気がし、耳はタレ、少し寂しげな表情をした。

「ギメラ、私をもとの場所へ帰して?家族がきっと心配してると思うの。」
「嫌です。せっかく貴方様を見つけましたのに、手放すなど…」
「そう。」

 スティアは玉座を立ち、ギメラの前に歩み寄った。

「ギメラがお利口にしてくれるなら一緒に来ますか?」

 スティアは天使の笑顔を向け両手を広げるとスティアの体から青白い光の粒が無数に舞い上がり、ギメラは荒んだ心が絆され、スティアの優しさに答えたいと、思い始めた。

「はい。ではスティア嬢とよんでも良いですか?」
「うん。」

 膝をついていたギメラはスティアの前で立ち上がり、スティアにギュッと抱きついた。

 スティアは立ち上がった長身のギメラの胸に顔が包まれ、ギメラのなだらかな胸から聞こえる鼓動に耳を澄まし、腕を伸ばし抱きしめ返した。

「うがー!」
「ボスの裏切りだー!」
「「わあー」」

 背後の小さな猫たちは狂化し猫から得体のしれない化け物兵士へと姿を変えた。

「お嬢…巻き込んでしまいました。配下達は負の感情の塊、もはや私の声は届かないかと。排除いたしますので、玉座にお待ちください。」
「ギメラ。」

 スティアは心配そうに、祈るように手を合わせ、立ちつくす中、ギメラはスティアに背を向け腰に装備する柄に収まる剣を抜き、壁を駆け上がり宙を舞い、ぴょんぴょんと跳ね、配下だった者たちをバッサバッサと切り倒していった。

(ギメラが怪我しちゃう。無事でいて、ライカ様達が来てくれたら…なんとかなるかもしれない。ひん。なんて無力なの?)

 スティアは祈りながら目をつむり、涙を流した。

 廃墟の城の外が騒がしくなる頃、スティアはギメラの攻撃を交わして突進してきた化け物に襲われそうに…

 ザシュ!

「うぎゃ~」

 スティアがゆっくり目を開けると、化け物は真っ二つに。そして化け物は霧となり消えライカがスティアの前で剣を収めたところだった。

 あとから兵士達も加勢するように部屋に押しかけ、化け物達はあっと言う間に霧となり消えていった。

「こいつは。」

 兵士の1人がギメラに剣を向け、スティアは叫んだ。

「待って!ギメラは私を助けてくれたの!」

「大丈夫だよ、彼女は保護して手当をする。スティア…さあ帰ろう。」

 ライカに抱きしめられ、ほっとしたスティアは小さく頷けば、ライカはスティアを軽々と抱き上げ、その小さなおでこに愛しげに笑顔を向けキスをした。

(はわわわぁ~)

 スティアは、顔を紅くし、ライカの腕の中でうつむき言葉をなくしたのだった。

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