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序 章【出逢い】
リュシン
しおりを挟む《・偽の暴君・》
リュシン・ザバス。彼はその容姿と冒険心の強かった幼い頃に起きた出来事をきっかけに…やることなすこと、悪くとられ…弁解の余地なく…。
彼はただ、誠実に父と兄を支えようと…生きる道を選んだ。それは偏に世話役達の熱心な教育のお陰だった。
しかし、彼の印象の悪さは国中に広まり、気の荒い黒い暴れ馬を操り一団を率いて反乱の鎮圧、他国の襲撃を一網打尽にする姿を、情け容赦なく、敵を切り捨てる残忍な暴君だと噂する者達はあとを絶たず…
【暴君の漆黒騎士】と呼ばれるようになったのだった。
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ギュイ・ピッシュ国王陛下と現れた…小さき姫は昔の自分を見ているようだった。夢の国と呼ばれる…争いの無い緑豊かな平和な国。そんな…ザバス国と正反対な場所から来た彼女は、見たこともないものばかりで、ご機嫌だったのかもしれない。ザバスの黒歴史とも言える当時を思わせる外壁、至るところにある…薄暗い部屋。
周りの噂が聞こえない閉ざされた部屋が地下の昔の拷問部屋だった。手付かずの部屋は昔の歴史を思わせる…貴重な物が無造作に置かれ…歴史を知る意味でも捨ててはいけないと思い埃を払い綺麗に壁に掛けた。
大人になった今も自分のしてきたことが大袈裟に広がり…暴君と言われるようになってしまい…20歳には許嫁をとるのが普通だったが、数人眷族から連れてこられた女性と会っても…次の日にはお断りの返事がくる。その日あって断られることも…。気付けは自分の年が25歳を迎えていた。
一生独身でも良いかとさえ思い出していた矢先。国内では居ないからか…隣国の姫君を紹介された。それが、ピッシュ国の姫だった。
ピッシュ国の方々は噂に動じない…自らの目で見たものを信じる…自分の中身を知ろうとしてくれていることが…新鮮に思えた。
マヤ・ピッシュ王女殿下は…初めて出会った癒される存在だった。成り行きとは言え許嫁になったが…まだ幼い彼女がこれから見る様々な【モノ】で…どう変わって行くのか…不安だ。
叶うことなら…ずっと怖がらず、今のままでいて欲しい。自分の側で微笑む少女の姿を思い浮かべ…彼女の乗る馬車を見送った。
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