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第1章【許嫁の始り】
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しおりを挟む瑠璃色の毛の…鬣のないメスの小柄な獅子は、町や城を見渡せる小高い丘から途方にくれ佇んでいた。
『このまま戻っても…無傷ではすまないだろうし…最悪命が無いよね…あっ!【人間に飼われてました】の設定で行けばいいかも!でも走れないな…走ったら確実に退治されちゃう…人語も話せないし…仕方ない、お利口に愛嬌よく行きますか!』
意を決した現在メスの獅子のマヤはピョンピョンと丘を駆け降りて行き…迷子のようにゆっくり歩いて王都の入口付近に到着した。
「猛獣!野獣の襲撃か!」
門前に兵が集りメスの獅子は取り囲まれた。だが、マヤは必死なため、ちょこんとお座りをして見せて絶対に動くまいと、そこから動かなくなった。
『私は人形、私は人形。今は動いちゃだめ!きっと大丈夫、大丈夫!』
「待て、頭にリボンをつけてるぞ?王族に飼われているのか?リボンは王家の紋章が付いている…」
複数の兵が騒ぎだして…マヤの頭のリボンに注目が集中した。
「これは…城に連絡しろ!早急にだ!」
「はい!!」
指示をされた兵は慌ただしくそこを去った。
『…城ならちゃんと私のことが知られてるはずだけど…』
するとそこへ馬車が一台、門前へと現れた。
「ああ、こんなところにいたのか?すみません、うちで飼っているのが迷子になってしまって…保護して下さったのですね、ありがとうございます。」
馬車から現れたのは褐色のはだの…マヤが見たことのある人物だった。マヤに木箱を渡した時の服装とは全く違い商人風の小綺麗な身なりに変身していたが、マヤはその顔をしっかり覚えていたため警戒をした。
『連れて行かれる!何かいい策はないかしら…!』
獅子は怯えるように身を屈め、ささっと兵達の足元へと逃げ、極端にブルブル震えて見せた。
「お前のペットの証拠はあるのか?どんな扱いをしていた!怪しいやつだ…来てもらおうか?」
マヤは褐色の男が兵に連れて行かれるのを見てホッとして…ペタンと地べたに体をくっつけ項垂れた。
『あ~早く帰りたいよ~お腹すいた。』
獅子になってからも、小さな生き物を狩って食べるなんてマヤにはできず…いつも食べている、調理された料理を思い浮かべながら意識を手放したのだった。
意識が遠退くなか、聞こえてきたのはマヤの名を叫ぶリュシンの声だった。
(…お腹減りすぎて死んじゃうのかな…お迎えかも…)
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