赤獅子と可憐な花嫁

yu-kie

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コンヤクノハジマリ

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 大会より1ヶ月前。

 天気の良い日、カエンはミュウラのライーズ家の屋敷前に馬車を停め淡い水色のワンピース姿の小柄な可愛らしい少女ミュウラを馬車へと迎え、走り出した。今日のミュウラは可憐な令嬢そのもの。

 二人は騎士団の休暇日に馬車を走らせ赤獅子の庭園と呼ばれる赤獅子一族が管理する庭園にやって来た。


  †††


 この国に存在する…皇族の管理する金獅子の庭園は、希少な植物が手入れされ、それはとても美しく、緑豊かに、季節の花々が庭園を彩った…地位の高い者しか入れない場所。眷属の黒獅子、赤獅子はその庭園に踏み入れることは難しく、黒と赤の獅子達は一族の管理する庭園を創り、どちらが金獅子の庭園に近いかを競っていた。

 そう言った経緯で創られた赤獅子の庭園はとても美しく緑豊かに…色とりどりの花々が咲き誇り、見に来る者達に癒やしをもたらしていた。


   †††


 カエンたちを乗せた馬車は赤獅子の庭園前に停車。二人は馬車から降り、騎士服姿のカエンに手を引かれミュウラは初めて庭園に足を踏み入れた。

 木々のアーケイドを抜けた先には赤い薔薇園とレストランがあった。

「カエン様…ここは?」
「ああ、叔父が営むレストランだよ。」
「まあ、食事をしながら薔薇園が鑑賞できるなんて素敵ですね。」

 嬉しそうに優しく微笑むミュウラに、カエンは顔を赤くし、ニヤつく口を隠すように手で口を隠すように覆った。

 レストランに入った二人はバルコニーの席に座り薔薇園を間近に鑑賞しながらランチを楽しんだ。

 食事も終わり、食器が片付けられ、ティータイムを迎え、二人は騎士団の話を始め、カエンは子供達が行う剣術の大会に足を運び素質のある者達を探している事をミュウラに話した。そして話は2年に一度行われるランク決めの大会となったのだった。

「この大会はこの先の騎士たちの役職にも影響を与えるものなんだよ。ミュウラの活躍は見てみたいが…」

 カエンは宰相の怒る顔が頭をよぎり深いため息をついた。

「カエン様…お父様に許可はいただきました。私も大会に参加いたします。」
「えっ?宰相殿が許可を?」
「はい。」
「そんな簡単には許可しないだろ、また無茶な条件をつけたんじゃ…」
「カエン様は心配なさらず、楽しみにしていてください。」
「わかったよ。」

 ミュウラは確かに父に条件入りの許可をとっていた。だがその条件はまだカエンには伏せておこうと、満面の笑みを向けたのだった。



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