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コンヤクノハジマリ
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しおりを挟む翌日私は身支度を済ませて家を出る直前扉が開いて同族である執事が慌てるように屋敷に駆け込んできた。
「お嬢様、リシュア家のカエン様がお迎えに…」
「えっ?わかりました。」
外に出ると…赤獅子の直系の一族であるリュシア家のみが所有する馬車から降りてくる騎士服姿のカエン様がいた。
「今日は俺が送迎する事にした。」
「もしかして昨日の事を怒っていますか?」
「中で話そう…乗って。」
「は…はい。」
私はカエン様に手をひかれて戸惑いながらも馬車に乗り込んだ。昨日の険しい表情と今の表情が重なって、この場は言われたとうりにしようと、断る言葉を飲み込んだ。
馬車は走り出し、車内に二人向き合って座り…恐る恐るカエン様を見上げると、カエン様は顔を赤くして両手で顔を覆っていた。
「ミュウラ嬢すまない!昨日と言い…今日の突然の訪問もっ!」
「怒っているのでは…?」
「違うんだ。俺が勝手に嫉妬しているだけなんだ。皇女の誘いに嬉しそうにしている君を見て…俺から離れてしまうのではないかと…本当なら騎士団でたくさん活躍してもらうはずが…俺の力不足で宰相殿を説得できずに、側に置いておくことしか…できなくて…」
「カエン様は私ののぞみを叶えてくれました。条件を出したのは、過保護な父の言いだしたことですから…」
「ミュウラ嬢…」
カエン様は顔を赤くしたまま私の手を引き寄せるとその大きな胸の中に包み込まれるように抱きしめられた。
「やはり君を手放せない。君が騎士団でもっと自由に動けるよう努力する。」
私は突然彼の胸に納まって恥じらいながら…ふと、私にできる事は無いか考えを巡らせた。
(2年に一度、騎士団内でランク決めの大会をするのよね…あれにエントリーできたら、私も養成所時代のように暴れられるわよね。カエン様は騎士の私を探してくれた。カエン様は十分私のためを思ってくださってる。エントリーの事はなんとか知恵を使ってお父様に許可をもらって…よしっ!その方向で作戦を練らなくては!)
「ありがとうございます。」
私は彼を見上げながら返した言葉に、カエン様は私を胸の中から解放した。
その後は…突然のカエン様のハグに互いに意識し合ってしまって、ほとんど会話ができず、馬車は、騎士団の施設へと到着したのでした。
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