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4話 アシュの涙
しおりを挟む風の塔に仕える獣人達の中に…人に姿を変えることなく、長い年月を生きている猫たちがいる。
一番長く生きた一組の番は、生き続ける事よりも…同じ塔で、死の淵にいる若き『風の番人』に、溢れるほどに残る命の力を分け与え生涯を終えた。
そんな彼らには60年前の闇の魔女との戦いで生涯を終えた仲間がいた。その『番』には産まれたばかりの子がいた…仔猫の名はアシュ。風の番人トーマに命を分けた番の黒猫と、風の塔の獣人たちに育てられた彼女は、いつからか人化できるようになっていた。
そんなある日…60年前に戦った魔女が現れ、魔法使いになっていたアシュを拐って行った。
それがアシュの辛く苦しい日々の始まり…罪を重ねたアシュはようやく呪いから開放された。
❖
風の塔、長いテーブルを囲み、風の塔に仕える住人達が食事を始めていた。
多くいる人化した獣人達がいるなか、トーマは黒猫姿のアシュを前にしゃがみ込むと不思議そうに問いかけた。
「アシュ…」
「にゃ…?」
「君その姿だと食事は?」
アシュは空の皿を前に、トーマを見上げた。
「にゃ、私は罪を犯しました。だから…」
「魔女の呪いでしょ?」
アシュの言葉を遮りトーマはそう言うとアシュの頭をくしゃりと撫でた。
「でも…番人様に酷いことを…自分を許すことはで…ふみゅ。」
トーマはアシュの顔を両手で覆うと、アシュは口がうまく動かせなくなりその先の言葉が発せなくなっていた。
「僕は許します。アシュの意思ではないし、アシュは呪いが解けたあとも反省してる…十分だよ。」
「ふみゃ~~えっぐ、えっぐ、ふわあ~あ~ん。」
アシュは涙をポロポロと沢山流して泣きじゃくり、トーマの前でそのまま人化し、メイド服の可愛らしい少女へと姿を変えた。
「アシュ、今日からみんなと一緒に、食べようね。」
「はい!」
アシュは涙を拭い、トーマに促されて隣の席に着きトーマに向かい笑顔を向ければ、トーマはその可愛さに胸の奥を『ドキン』と弾ませたのだった。
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