黒い仔猫と風使いの番人

yu-kie

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3話 再会と贖罪

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 『精霊リプ』は生身の身体を持たず大樹の一部からできた人形に宿る。リプは普段、太い蔦が幾重にも編み込まれて作られた椅子に腰掛けている。

 それはまるで祭壇に祀られている偶像崇拝の対象物のようで…神聖な存在としてこの風の塔の、『聖樹の間』にいた。

  ❖

「リプ様…ただいま戻りました。」
「うむ。ようやく呪いが解けたようだな。」

 祭壇を前に、萎縮した黒い仔猫が一匹。ちょこんとお座りした状態。しょんぼりと、頭を下げたままブルブルと震えていた。

「ところで、病に倒れた過去の番人達の最期は行方知れずと聞いているが…」
「んにゃ。それはっ!こっここに!」

 黒い仔猫はそっと右の前足を伸ばし地面をトントンと2回叩けば、床の魔法陣は金色に光の柱を放つ。

 そして行方知れずになっていた番人たちの眠る棺がいくつか現れた。

「どうするつもりだったのだ?」
「なんとか自我がのこってまして…魔法で冬眠してます。」
「だが病にかかってるのだろう?」
「にゃ…ですが、もう私は呪いが解けてます。彼らの病は作った薬によりもう治っています。」

 仔猫がちらりと祭壇に目を向ければ祭壇の椅子に座るリプと目があった。

 無表情の人形の目玉が黒い仔猫を追うようにギョロリと動き…黒い仔猫はまた頭を下げた。

「呪いを受けたとはいえ罪は思いぞ。生涯…贖罪の時を過ごせ。」

 仔猫は床に頭が着きそうなくらいに頭を下げた。

「トーマ、来ているか?」
「はい!」
「この仔猫を連れてゆきなさい。この子の名はアシュー、昔からここに住む猫族の獣人の娘だ。薬の研究熱心な魔法使いだ。こき使ってやってほしい。」
「アシュー、僕はトーマ・ザブラスだよ。」
「にゃ…アシューです。今までご迷惑おかけしました…にゃ。」
「うん。よろしくね?」
「はい~んにゃ。」


 後から部屋に来たトーマは、黒い仔猫姿の少女アシューを前にしゃがみ、手を差し伸べた状態。アシューはその差し出された手にすり寄り頭をこすり、友好的に挨拶を表現したのでした。

 
 
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