シャー芯

馬酔木

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シャー芯

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同学年の男の子が死んだ。元気だった。小学校低学年のときに数回遊んだ程度の仲だったが、そんな印象だった。どうやら何とかの病気による突然死だっだらしく、突然のことだったからなのか、学年集会で泣いていたのは数人だった。微妙な仲で、泣くべきなのかよくわからなかった僕は、泣かなかった。学年集会の最後に、その子のお葬式についての紙が配られたが、僕は行かなかった。

死んだ日から一週間くらい経った。死んだ子の親御さんが、学年全員にシャー芯をくれた。いろんな種類があり、先生が一つ一つクラスみんなの机に置いていった。箱の色や濃さが気に入らなくて交換するクラスメイトもいたが、それがなんとなくくだらないと思った僕は、自分の机の上にある2Bのピンクのシャー芯を、手にとったりせず、ただじっと見つめていた。

それから2年くらい経ち、シャー芯を使い切ったのか、使い切らず捨ててしまったのかを忘れてしまった ことに気づき、夜、そのことが気になって考え続けるあまり、全く寝付けなかった。なにせたまにケチっぽくて、たまに無頓着な僕だから、頭をぐるぐる回転させても、結局思い出せなかった。

その次の日、2Bのピンクのシャー芯を探しに行こうと思ったが、やめた。だから僕は、この文章を書いたのだと思う。

追伸:そういやその子は軽くいじめられていた。突然その子の死を知らされたいじめっ子は、ぞっとしたかもしれない。僕はその子が死んだときにぞっとしなかったし、泣きもしなかったが、その代わりにシャー芯をもらったのだと、根拠は無しにそう思った。
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