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✼••┈第1話┈••✼ (才能)
しおりを挟む私は志願兵だ。
私が生まれ育ったカザーフ王国は現在アレイラ帝国と戦争をしている。志願兵の募集が常にある状態だ。
私はこの戦争を終わらせたくて兵士に志願した。
志願兵として訓練を受けて分かったことがある。
攻撃魔法の資質は全くないが、私の持久力、筋力は周りの志願兵とだいたい同じ。
剣、弓、槍、斧も人並みには扱える。
だが、それ以上に戦場で活躍できる能力が私には――。
「次、ナオ」
「はいっ」
指導官に呼ばれた私は、短い返事をして前へ進んだ。
私の前には、致命傷を負ったウサギが横たわっている。四肢を折られ、腹がざっくり裂かれ血が流れ出ている。何もしなければすぐに死に絶えスープの具になるだろう。
私が行うことは調理ではない。
このウサギを”癒す”のだ。
「――」
私は杖の先端を傷ついたウサギに向け、回復魔法を飛ばした。
ウサギは青白く暖かい光に包まれる。
軍に志願する前、私は冒険者を長くやっていた。そこで、確実、迅速に癒す術を学んできた。 もちろん独学だ。
今回の場合は致命傷の腹部ではなく、四肢の骨折を先に癒す。今までの私の経験が、そう判断している。
光が弱まり、回復効果が切れた。
瀕死の状態で横たわっていたウサギがまん丸な瞳で私たちをきょろきょろと見渡した後、後ろ足で耳の裏をかいている。
ウサギは私の方へぴょんぴょんと飛び跳ねて来た。私の目の前で静止し、じっと私の顔を見上げている。ありがとうと感謝しているようだ。
「完治させた……、だと!?」
ウサギの状態を見て、教官は驚嘆していた。
他の隊員・志願兵たちも私が癒したウサギを見て、ざわついている。
「あの、私の結果は――」
「ご、合格だ。次っ」
皆が驚くばかりで、訓練の合否がなかなか出なかったため、私は教官に結果を聞いた。
教官は私に結果を告げる事を忘れていたことに気付いたようで、とって付けたように私の合否結果を伝えた後、次の試験を始めた。
「合格した。これで新兵として戦場に立てる」
合格、と言われ私はその場で喜びを噛みしめた。
私の強みは”白魔法”。
白魔導士として、私はこれから戦場の兵士たちの傷を癒してゆくのだ。
✼••┈┈••✼••┈┈••✼
カザーフ王国王都ベルサール。
王城の一角にある、宮廷警護団の執務室にて一人の男が、志願兵の合否結果表を読んでいた。
合格した者達はそれぞれ適正を見極めた後、戦士、黒魔導士、白魔導士、補給兵と分類される。
「ふむ」
男は合格者のリストを眺め、今回の合格者は戦士が多く黒魔導士、白魔導士が少ないと感じていた。
魔術の才能がある者は貴族や王族が多く、平民は少ないためこの結果は妥当ではあるが、魔導士が一人いるだけで戦士の負担が減る。出来れば攻撃魔法が得意な黒魔導士が増えてほしいと彼は思っていた。
紅茶を飲み、男は一息ついた。
「目に付く者は……、いないな」
教官からの報告書を見るに、平凡な戦士が多い。まあ、戦争は戦う者が多くいなければならない。戦う人数が多ければ多い程、個々の実力はそれほど関係ないのだ。
男は戦士として合格した者たちの履歴書を読み終えた。
続けて黒魔導士、白魔導士として合格した者の履歴書に目を通す。
「こ、この結果は!?」
男は一人の合格者に注目した。
名をナオという。
ナオという少女は瀕死の状態のウサギを完治させたと書かれていた。
白魔導士の適性があると判断された兵士は、家畜の治癒試験を課される。普通の白魔導士ならば、数本の足か、裂傷を正しく治療出来れば合格とされる。試験で、家畜を完治させる者が現れるとは。
男はナオの出した結果に驚愕していた。
魔力量が高いのなら、他の魔法も使えるのではないか。もし、攻撃魔法が使えるのであれば、黒魔導士として戦場に立ってほしい。そう思った男は、ナオの魔力適正表を見た。
「なんだこれは」
ナオの魔力適正表の結果に、男は再び驚かされた。
魔法に適性がある志願兵は、得意な属性を見定めるため、”属性計測器”(エレメンタルパラメータ)を使って各属性との親和性を計測する。
ナオの計測結果は火・水・風・土・闇は一パーセント以下、聖魔法だけが百パーセントという極端に偏ったものだった。
「……これは面白い」
男はナオに関心を示した。
聖魔法適正値、百パーセントの白魔導士。
是非、自分が所属する宮廷警護団に引き抜きたい。
そう思った男は部下を呼び、行動へ移した。
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