赤羽根の白魔導士

Remi‘s World

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✼••┈第0話┈••✼ (4)

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「今日は酷い一日だったわ……いつもより早いけど、この辺りで休まない?」

 荷馬車の中で横たえた体を起こすと、子供たちと一緒に寝そべっているロダとヴェンに声をかけた。

「んだ、いいと思うだ」
「まぁ、まだ王都まで暫くかかるからな。早めに休んでおいてもいいと思うぜ」

 ロダとヴェンは随分疲れた顔をしている。あれだけの戦闘の後だ、無理もない。二人の返事を聞いた私は、荷馬車の前へ行きウルドに声をかけた。

「ウルド、荷馬車を止めて。今日はもう休みましょう」
「ナオ、何かあったのか。まだ陽があるから先へ行けるぞ」
「みんなかなり疲てるわ。今日は早めに休む方がいいと思うの」
「確かに、そうだな」

 私はウルドに指示し、荷馬車を小高い丘の上に止めさせた。
 荷馬車が止まると、荷台にある木箱から食材と大鍋を取り出し食事の準備にかかった。
 ヴェンとロダは子供たちと薪を集めにいくようだ。二人共、あの大きな肩の左右に子供を乗せている。子供たちは二人に懐いてるようだ。
 ウルドは職員の女性と院長と三人で何か話し込んでいる。深刻な顔をしているようにも見えるけど、今はそっとしておこう。

「ナオ、火の準備ができたぜ」
「分かった。今そっちに持っていくわね」
「ロダ、あそこの野菜を持ってきて、鍋に入れてほしいわ」
「んだ、すぐ入れるだ」

 私たちたちは焚き火を囲みながら煮あがったスープを食べた。スープの暖かさがじんわりと体に広がる。食べ終わるとどっと疲れが込み上げてきた。
 気付かなかったけど、どこか気持ちが張り詰めていたみたい。多分、大男三人もそうだったのかも、三人とも、今は安心した顔をしている。

「美味しかったわね」
「ああ、やっぱこのスープいい、安定の美味しさだぜ」
「んだ、いつも美味しいだ」

 私は食事を終え、そのまま草の上で横になりこれからの事を考えていた。
 お金と蓄えはまだある。あの広いアジトなら子供たちの面倒もみれるから当面は心配ない。心配なのはこれから来る戦争の事だ。
 私の横で食事をしていたウルドがスープを食べ終えると、寝転んでいる私に声をかけてきた。

「孤児院の出来事を気にしているのか?」
「えっ――どうしてそう思うの?」
「あの惨劇で動揺しないヤツなんていないだろ、ましてやナオの故郷なんだからな」
「ウルド、その事ではないの」

 ウルドにこれからについて考えていると伝えると、次第に彼の表情が曇っていった。多分、ウルドも荷馬車を操りながら考えていたのだろう。

「この戦争、これからさらに酷くなると思うぞ」
「そうね……これからたくさんの人たちが巻き込まれて、多くの犠牲が出るでしょうね」
「ナオが考えている事はわかる。――ヴェンもロダも分かっているだろうな。俺も家族を襲われたらやることなんて一つだけだ」
「そうね……。でも、今日はもう休むわ。また明日にしましょう」

✼••┈┈••✼••┈┈••✼

「王都が見えてきたぞ」

 荷馬車を運転するウルドの声が聞こえ、私は荷台から顔を出した。
 王都ベルザール。ほんの少し離れていただけなのに、とても懐かしい気がする。
 景色を眺めていると、遠くに王都へ帰還しようとする軍隊が目に留まった。
 馬に乗り大剣を背負った兵士を先頭に、魔導士の集団に囲われた馬車とその後ろを歩くカーザフ軍人たちの姿が見える。

(カーザフ軍だわ、……戦争を止めに行っていたのかしら)

 夕暮れ時、私たちはストライカー打撃団のアジトに到着した。
 アジトという言葉が似合わない程の立派な館だ。見栄を張って皆でお金を出し合って手に入れた。
 アジトに入ると子供たちが走り回り始めた。子供たちは広い部屋や珍しい家具に興味津々だ。ロダも一緒になって走り回っている。
 その様子を横目に見ながら、私はウルド、ヴェンと共に院長と女性職員に館内を案内した。二人とも館の広さに圧倒されている。

「ナオ。きみは本当に立派になったんだね」
「素晴らしいお住まいですね!こんな素敵なところを使わせてもらえるなんて」
「ナオ。今回は本当に助けられたよ。来てくれて――本当にありがとう」

 案内を終えると、私はヴェンとウルド、そして走り回っているロダを呼び止め、大広間のテーブルに来るよう伝えた。
 そして、三人が大広間のテーブルに集まったところで、これからの事を話し始めた。

「ヴェン、ロダ、ウルド、今回はありがとう。とても助かったわ。でも、こんなに身近に戦争が迫っているなんて。」
「俺も同じように思ったぜ。ずっと近かったぜ」
「だから……私は、カーザフ軍に入ろうと思っている」
「分かっていた。軍に志願する気だろうと思っていたぞ」
「行くだな、志願するだな」

 三人はすぐに賛成してくれた。私の考えはお見通しだったみたい。嬉しいけれど、こんなにあっさり受け入れられてしまうとどこか寂しい。

「そうなると、次はギルドの今後の事だな」
「ええ……そうね」

 ウルドは腕を組み、眉間にしわを寄せ、険しい顔をしている。彼の様子から、ギルドから私が抜ける重さが伝わって来きた。ヴェンとロダもウルドの言葉が出るのを待っているようだ。

「ギルドはナオが抜けたら続かない、それは事実だ。解散か、別の職種に鞍替えになるだろう。でもそれは後々決めればいい。院長もいる、彼なら何か思いつくはずだ」
「大丈夫だ。心配無いだよ。子供たちも一緒だ。みんながいればなんとかなるだ」
「そう。でも――本当に大丈夫なの?」

 私はもう一度問いかけた。やはり三人とも戸惑っている。明日からは割のいい依頼も、ギルドランク第二位の維持も、出来ないことが分かっているからだろう。

「ギルドランク二位が突然の解散か鞍替え。反響はすごいかもだぜ」
「ヴェン、分かっている。だが、戦争を止める方が大事だぞ」
「大丈夫だ、なんとかなるだよ。心配かけないだ」
「――分かったわ。私は戦争を終わらせにいくわ」

 翌朝。
 私はウルド、ヴェン、ロダ、そして、孤児院の皆に見送られながらストライカー打撃団のアジトを出た。振り返ると、大男三人は、まだ手を振っている。
 彼らの為にも、そしてレントノール孤児院の人たちの為にも、私は私の出来ることをすると心に誓い、前を向いた。

(――この戦争を止める)

 強い決意を胸に、私はカーザフ王国軍の軍事訓練施設へ向かって行った。


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