赤羽根の白魔導士

Remi‘s World

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✼••┈第0話┈••✼ (1)

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「相変わらず、鮮やかな景色だわ」

 私は平原を行く荷馬車の荷台から、景色を眺めている。
 青い空、一面に広がる緑、その境界を山々が彩り雄大な景色が広がっている。馬のひづめが鳴る度に、荷馬車の車輪が回る音と前方から吹いてくる風が心地よい。
 
 景色を楽しんだ後、私は荷馬車を運転するウルドに声をかけた。

「ウルド、そこの道を左に曲がって」
「了解だ、ナオ。この道を左だな」
「ええ。道なりに走ったらレントノール孤児院が見えてくるわ」

 ウルドに行く先を伝え、振り返り、荷台に寝そべるヴェンとロダの話に入った。

「なあ、ロダ、孤児院に荷物を届けたら依頼完了なんて、今までで一番簡単だと思うぜ」
「だなだな。ヴェン。簡単だな」
「ヴェン、ロダ、そうね、私もそう思うわ」

 私は冒険者ギルド”ストライカー打撃団”の一員で、ウルド、ヴェン、ロダという三人の大男とパーティを組み、ギルドの依頼をこなす日々を送っている。
 今回の依頼は戦争で増えた孤児のため、王都に集められた援助物資をレントノール孤児院に届けるというものだ。
    ギルド運営所の掲示板でこの依頼を見つけた私は、迷わず契約した。

「なぁナオ、どうして突然、荷物運びをやろうと思ったんだ?」
「掲示版から依頼を取ってこなくても、俺たちのお得意様のデイルイズさんが次々に依頼を持って来るぜ」
「だな。荷物運びよりも護衛か猛獣狩りの方が稼げるだな」

 普段、私たちは掲示板を見ない。運営所に行けばすぐに係員が寄ってきて奥の個室に案内される。個室に入ると、デイルイズというお得意様の使いの者が待っていて、使いの者が契約書へのサインをせがんでくる。
 私が掲示板に目を通し、この依頼を選んだのには理由がある。

「うん、実は……今向かっているレントノール孤児院は私の故郷なのよ」

 この一言に、ウルドは振り返えり、私の顔を覗き込だ。
    荷台で寝そべっているヴェンとロダは、急に起き上がり目を丸くして私を見ている。

「本当かっ!どうして先に言ってくれなかったんだ!」
「ナオの故郷は孤児院だったのか!てっきり王都だと思ってたぜ。ウルドの言う通り、出発前に言って欲しかったぜ」
「うん――言おうと思ったのだけれど。恥ずかしくて。機会があれば話そうと思っていたけれど」

 三人にはレントノール孤児院に着いてから話そうと思っていた。やっぱり先に言っておいた方が良かったかも。でも、理由を話したら「私用かぁ……」と皆が不機嫌になるかもしれなかったから、言い出しづらかった。

「ナオの故郷、いいとこだな、すっごくいいとこだな!」
「うん、ありがとうロダ。ずっとこの景色を見て育ったのよ。とてもいい眺めでしょ」

 口下手なロダの精一杯の明るく大きな声が響く、声の大きさから嬉しさが伝わってきた。
 
「そうか。そういうことなら俺たちも堂々と凱旋しなくてはな」
「ナオのおかげでギルドランクが毎月トップクラスだもんな。孤児院の奴らは絶対驚くぜ!」
「んだんだ!ずっと二位だからな。凄いんだな!」
「そうよ、私たちの事を知ってるでしょうからね」

 私の所属する”ストライカー打撃団”は、ウルド、ヴェン、ロダの三人が立ち上げた戦闘ギルドだ。
    私はウルドに誘われてこのギルドに入った。大型武器で猛攻するだけなので回復役が欲しかったのだとか。
 私が加わった途端、ギルドの依頼達成率が急激に上昇した。私のおかげで大男三人が臆さず戦えるようになったためだ。
 
 重量級の戦士三人と白魔導士一人という偏った構成にも関わらず、高い達成率を出し続ける私たちは、ギルド利用者たちの間で噂になった。
 そして、攻撃力の高い害獣退治や、専属の護衛といった指名依頼が頻繁に来るようになった。
 八十八組中八十三位という、ほぼ最下位だったギルドランクが、たった二ヵ月で第二位まで上昇した。
 現在、私たちは八ヵ月連続で第二位を継続している。 
 
 ストライカー打撃団の活躍を話せば、レントノール孤児院の子供たちは喜んでくれるだろう。はやる気持ちに胸が躍った。

「おいっ!みんな、あっちの方に砂煙が見えるぞ」

 ウルドの緊迫した声が聞こえ、私たちは荷馬車から顔を出し、彼が見たという砂煙を探した。

「あれか!えらい砂煙だぜ。いったい何があったんだ?」
「――ん??だな」
「あの砂煙……、間違いない! レントノール孤児院の方角だわ!」

 砂煙はレントノール孤児院の辺りから上がっているようだ。なんだろう、胸騒ぎがする。
 目を凝らして見ていると、道沿いを必死に走って来る人が見えた。小さな子供を抱えているようだ。

「おいっ、あんた!一体何があった!?」

 ウルドが荷馬車の速度を速め、こちらへ走って来る女性に近づいた。そして、女性があと数歩で荷馬車と接触する距離で馬を止めた。

「たっ助けてください、突然、兵士たちが襲ってきて」

 女性は肩で息をしながら怯えた表情で私たちに助けを求めた。

「あなた、レントノール孤児院の人よね」

 女性の服装からレントノール孤児院の職員だとすぐに気づいた。切り傷と火傷を負っている。両手で抱えている子供はまだ小さい。

 私は女性の切り傷と火傷に触れ、傷を癒した。幼子はウルドが抱えてくれている。

「何があったの!?詳しく教えて!」
「んだ!、教えるだな!」

 パニック状態から落ち着いたところで、私は女性に状況を聞く。私に続いてロダも質問した。

「アレイラ軍です! 私たちは彼らに襲撃されました。食料を奪うのが目的だと思います」
「アレイラ軍は――」
「……分かりません。この子と逃げるのが必死だったので」

 私は女性の言葉に愕然とした。ウルド、ヴェン、ロダも表情が一変、皆驚いている。

「大変だ、ナオ!はやく孤児院へ向かおう!」
「ええっ!みんな、すぐに向かいましょう!あなたはこの荷馬車の中に隠れていて」

 私は女性職員と幼子を荷馬車の荷台へ引き入れると、横にいるヴェンとロダに指示した。

「ヴェン、ロダ、奥から装備を!私とウルドの分も取ってきて!」
「了解だ、相棒の鬼金棒を取って来るぜ!」
「おいらのメイスで叩き潰すだな!」

 ヴェンとロダが荷台の奥から武器の入った大きな木箱と、魔力回復薬の入った水筒を抱えてくる。大男三人の武器はどれも大型の打撃武器だ。

「ロダ、ロングメイスだぜ」
「ヴェン、ウォーハンマーをウルドに渡してちょうだい」
「ナオ、復活の杖と水筒。水筒の中身はバッチリだぜ」

 私はヴェンから杖と水筒を受け取り、腰ベルトに水筒を装着すると荷馬車を降りた。
 そして、私たちは砂煙の上がるレントノール孤児院へ急いで走った。
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