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✼••┈第0話┈••✼ (2)
しおりを挟むレントノール孤児院に近づくと、半開きの門の前で倒れている子供が目に飛び来んできた。今にも死にそうだ。園庭からとどめを刺そうと迫る三人のアレイラ帝国兵も見える。
「っ!まずいわ!えいっ!!」
私は走りながら詠唱し、倒れた子供へ白魔法を飛ばした。青白い光が子供を包み込む。
子供の異変と、私たちに気付いたアレイラ帝国兵たちはその場で止まり身構えた。
「ウルド、ヴェン、ロダ、お願い!」
「任せろ!」
「潰すぜ!」
「だなだな!!」
私の後ろを走ってきた三人は、私を追い抜くと孤児院の塀を勢いよく飛び越え、アレイラ帝国兵たちに突撃していった。
「ぜりゃああ!!」
「だりゃああ!!」
ヴェンとロダがアレイラ帝国兵たちに襲い掛かる。二人は手にした鬼金棒とロングメイスで激しく薙ぎ払い、アレイラ帝国兵たちを勢いよく地面に打ち伏せた。
「どっせぇぇぇい!!」
すかさずウルドが追撃する。ウォーハンマーに渾身の力を込め、次々に振り下ろす。
ハンマーが振り下ろされる度に強い振動が地面を駆け抜けていく。三人のアレイラ帝国兵は体が大きく変形し、動かなくなった。
私は倒れた子供へ駆け寄り、杖を置くと、子供を抱きかかえ安否を確認した。回復魔法をかけたから、傷も完全に治っているのに子供は目を覚まさない。
「ねぇ、大丈夫?!しっかりして、しっかりして!」
アレイラ帝国兵たちを倒したウルド、ヴェン、ロダも、子供の様子を見にこちらへ駆けつける。
「大丈夫だ。気絶しているだけだ」
「よかった。気絶しているだけなのね」
「ナオの回復魔法で治らない傷はないぜ」
「だな。そうだな!」
三人に指摘され、子供がただ気絶しているのだと分かり、私がほっと安心していると、孤児院の玄関扉が開き、中にいたアレイラ帝国兵が園庭に出てくるのが見えた。全部で八人いる。さっきの戦闘の物音で気付いたのだろう。
彼らは倒れている仲間と私たちを見つけると、武器と盾を構え突撃してきた。
私は立ち上がりアレイラ帝国兵たちを睨みつけた。そして、抱えた子供を塀の陰に隠すと、復活の杖を拾い、魔力を送り込みながら叫んだ。
「許さないわ!ウルド、ヴェン、ロダ、やるわよ!」
私の声に大男三人も立ち上がり、手に持っている武器を構える。
「任せろ!」
「ナオ!ぶちかますぜっ!」
「だなだな!全員、潰すだな!」
大男三人は陣形を組むと、突撃してくるアレイラ帝国兵たちに向けて特攻した。三人は怯むことなく真正面からアレイラ帝国兵たちにぶつかっていく。
「でやっ!!」
衝突と共にウルドがウォーハンマーを大振りし、三人のアレイラ帝国兵をまとめて吹き飛ばした。鉄鎧を着たアレイラ帝国兵たちが宙を舞い後へ飛んでいく。凄まじい威力だ。
「突き殺すだぁ!!」
「おらぁっ!ぶっ叩くぜぇ!!」
ロダはロングメイスを鋭く突き出しアレイラ帝国兵たちを次々に突き飛ばす。ヴェンは勢いよく駆け廻り、鬼金棒で敵兵を打ち伏せていく。二人共、大柄の体格からは想像できない程、素早く軽やかに動く。
しかし、アレイラ帝国兵たちも弱くはなかった。ウルドは衝突の際、左肩と左足に槍が刺さり、その痛みに耐えている。ロダは突き出された槍先を腕で受け止めたため、激しく出血している。ヴェンは背中から太ももまでを深く斬られ血が流れている。
「うっ動けねえ……」
「うぐっ!痛いだな!」
「ぐううぅっっ!!」
「ヴェン、ロダ!今行くわ!」
私はロダへ白魔法を飛ばした。青白い光がロダを包むと瞬く間に傷が癒えていく。それを見届けつつ、杖に魔力を充填し、次はヴェンへ飛ばす。白魔法が当たるとヴェンの傷も瞬く間に癒えた。
「ぶち殺すだあ!!」
「うっしゃぁ!回復待ってましたぜぇ!!」
二人は武器を構え直し不敵な笑みを浮かべると、傷を負わせたアレイラ帝国兵たちに向けて猛突進していった。
突進するヴェンとロダを見つつ、私は倒れているウルドの元へ走った。
「ウルド、大丈夫!?」
「ナオ、今槍を引き抜く。抜いたところを回復してくれ!」
「ええ、分かったわ!」
ウルドは刺さった槍を掴むと一気に引き抜き投げ捨てた。辺りにウルドの血が飛び散る。相当痛そうだ。すかさず私は青白く光る杖の宝玉をえぐられた傷口に押し当てる。
「助かったぜ!」
「ウルド、もう動けるわよね。直ぐにヴェンとロダに加勢するわよ!」
「あぁ、もちろん!大丈夫だ!任せろ!」
私とウルドは立ち上がり、ヴェンとロダのいる方へ駆け出した。
ヴェンとロダは既に三人のアレイラ帝国兵を倒し、逃げようとする残り二人を追撃している。
「ヴェン、ロダ!こっちだ!こっちに飛ばせ!!」
私のすぐ前を走るウルドがヴェンとロダへ合図を送る。
「だな!行くだなああ!!」
合図を聞いたロダがロングメイスでアレイラ帝国兵を思い切り突き飛ばすと、真っ直ぐウルドの足元まで飛んだ。ウルドは飛んできた敵兵をウォーハンマーで強打。再びロダの元へ打ち返され、ロダがもう一度突き飛ばした。
激しい三連撃を喰らったアレイラ帝国兵はその場に倒れて動かなくなった。
「お前でっ!最後だぜぇ!!」
ヴェンが罵声を浴びせ、逃げるアレイラ帝国兵を追い詰める。
しかし錯乱したのか、敵兵は急に振り返ると、ヴェンに向かって乱暴に剣を振り回す。ヴェンは突然の反撃に対応できず腕と足を斬られた。
「まずいわ!ヴェン、重ね掛け行くわよ。飛ばすわ!」
「直ぐに頼むぜ!」
私は白魔法を飛ばすと、直ぐに再発動し、もう一度飛ばす。二つの青白い光りがヴェンに当たると、ヴェンの体を一気に包み込み、斬られた傷を一瞬で癒やした。
「おおおっ!全回復だぜぃ!」
「うあぁぁぁ!」
アレイラ帝国兵は悲鳴を上げた。攻撃しても傷が瞬時に癒えてしまう恐怖からか、先ほどよりも必死にヴェンに斬りかかる。しかし、いくら斬っても青白い光に包まれたままのヴェンは一瞬で傷が癒えていく。
もう駄目だと諦めたのか、アレイラ帝国兵は剣を振る手を止めてしまった。
「あはははだぜぃ!」
不気味な笑い声を上げ、ヴェンは鬼金棒を振り上げると、アレイラ帝国兵を勢いよく薙ぎ払った。激しい衝突音が響き、アレイラ帝国兵はウルドのところまで真っ直ぐ飛んでいく。
「とうっ!!」
ウルドが渾身の力を込めてウォーハンマーを振り下ろし敵兵を地面へ打ち付けた。凄まじい衝撃が地面を伝わっていく。敵兵の鉄鎧は大きく歪み、体に深く喰い込んでいる。
「でやっ!だぜぃ!」
「とどめ、だな!!」
ウルドの元にヴェンとロダも駆けつけ、振り下ろされたウォーハンマーの上へ鬼金棒とロングメイスを激しく叩きつけた。甲高い破裂音が響き、アレイラ帝国兵はそのまま動かなくなった。
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