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旅路
大切な感情②
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「どう?アキオ君の気持ちは」
相手にも好きになって欲しい、か・・・。
「じゃあ・・・僕のは違うかもしれません」
「えっ!なんで??」
「僕は・・・今はただ、ジルさんの優しさに値する人間になりたいって思っています。今までずっと、僕のような人がジルさんみたいに優しい人の隣にいたいなんて、そんな厚かましい事望めないって思ってたけど、前を向かなきゃって思ったんです。だから、ずっと隣にいたい。離れたくはないって気持ちは本物です。だけど・・・ジルさんにも同じ気持ちを求めるなんて、やっぱり僕には出来ません」
「アキオ君・・・」
「そうだなあ。俺もよく分からないけど、愛情の形なんて百人いれば百通りあると思うよ?それに、言葉で説明できることばかりじゃない。なんか良く分からないけどドキドキするーっ!みたいな。アキオ君、司令官と居るとドキドキしない?」
「そりゃ、します。でも誰だってそうでしょう?最高司令官ですよ?あんなに凄い方のお膝に乗ったり食べ物を切り分けさせたり、看病してもらったり、イガさんやメテさんが僕の立場でもドキドキすると思いますけど」
「いやまあ、それは確かにそうですね。あまり想像したくありませんが」
イガさんがとても嫌そうに苦笑いする。そっか、上司となるとちょっと違うドキドキだよね。僕だって局長の膝に乗るなんて想像もしたくないもの。
イガさんには申し訳ないことをしてしまった。
「それって最初から?」
「へ?」
「小屋でもずっと司令官と一緒に過ごしてたんだよね?最初の頃からそういう風にドキドキした?」
メテさんの言葉に過去を振り返る。言われてみればそうだ。
ジルさんが最高司令官なんていう厳かな地位に着いていることはイガさんがツリーハウスを訪問したときに知ったけど、それからも、ドキドキというよりは申し訳ないなあとか、居た堪れないなあとか、その程度だった。
恥ずかしくて顔が見れないなんてそんなことは全くなかった。
でも、でも・・・・
「でもジルさんには、大切な人がいるんです」
「大切な人?」
「はい。懐中時計の蓋にとっても綺麗な人の写真を貼っていました。恋人かもしれません」
「「恋人!?」」
2人も知らないということは、内緒の存在なんだろうか。
「確かに、司令官顔怖いしストイックだし一見近寄り難いけど、男前で優しくて、なんと言っても料理は絶品だしね。
そのギャップに密かに想いを寄せる人も結構いるかも・・・」
「ちょっとメテ」
メテさんの言葉に、何故か言いようのない不安を覚えてしまう。
「ジルさん、モテますか?もしかしてもう結婚していますか?」
「安心して、結婚はしてないはず。でもこれだけは言える。司令官はモテる!」
「やっぱり・・・」
「メテ、いい加減に・・・」
ジルさんほど素敵な人なら、そりゃそうか。
この世界には強くて優しい人がたくさんいる。人攫いや奴隷商のように道をはずれた人もたくさんいるんだろうけど、少なくとも僕が出会った多くの人は子供も大人も皆力強く生きていた。何も知らない僕はその人たちにまだまだ敵わないかもしれない。
「もし司令官に恋人がいたら、アキオ君はどう思う?」
「それは・・・嫌、です」
「そっか」
でも、例えジルさんに好きになってもらえなくても、この気持ちは僕の中で大切にしたい。ジルさんからせっかくもらった温かい感情を、『もしかしたら違うかも』なんて自分で否定しようとしてどうするんだ。
そういうところが僕の悪いところだ。胸を張ってジルさんを好きだと言えるようにならないと、いつまで経っても元の僕のままだ。前に進むなんて言いながら、自分から変わろうとしてなかった。
「わかりました。僕、ジルさんを落とし・・・ます」
「ア、アキオ君?」
「ジルさんを落とせるくらい、いい男になって見せます」
今の一瞬で何がどうしてそうなったのー?と小さな声で驚き戸惑っているイガさんをよそに、「その意気だ!頑張れー!」と僕を鼓舞するメテさん。その中心で鼻息荒く「はいっ!」と意気込んでみる。なんだかとても纏まりの無い状況が築き上がってしまったけど、すごくスッキリした。
やっぱり2人の力はすごいな。いつか僕も2人みたいに堂々と胸を張れるような生き方をしたい。
相手にも好きになって欲しい、か・・・。
「じゃあ・・・僕のは違うかもしれません」
「えっ!なんで??」
「僕は・・・今はただ、ジルさんの優しさに値する人間になりたいって思っています。今までずっと、僕のような人がジルさんみたいに優しい人の隣にいたいなんて、そんな厚かましい事望めないって思ってたけど、前を向かなきゃって思ったんです。だから、ずっと隣にいたい。離れたくはないって気持ちは本物です。だけど・・・ジルさんにも同じ気持ちを求めるなんて、やっぱり僕には出来ません」
「アキオ君・・・」
「そうだなあ。俺もよく分からないけど、愛情の形なんて百人いれば百通りあると思うよ?それに、言葉で説明できることばかりじゃない。なんか良く分からないけどドキドキするーっ!みたいな。アキオ君、司令官と居るとドキドキしない?」
「そりゃ、します。でも誰だってそうでしょう?最高司令官ですよ?あんなに凄い方のお膝に乗ったり食べ物を切り分けさせたり、看病してもらったり、イガさんやメテさんが僕の立場でもドキドキすると思いますけど」
「いやまあ、それは確かにそうですね。あまり想像したくありませんが」
イガさんがとても嫌そうに苦笑いする。そっか、上司となるとちょっと違うドキドキだよね。僕だって局長の膝に乗るなんて想像もしたくないもの。
イガさんには申し訳ないことをしてしまった。
「それって最初から?」
「へ?」
「小屋でもずっと司令官と一緒に過ごしてたんだよね?最初の頃からそういう風にドキドキした?」
メテさんの言葉に過去を振り返る。言われてみればそうだ。
ジルさんが最高司令官なんていう厳かな地位に着いていることはイガさんがツリーハウスを訪問したときに知ったけど、それからも、ドキドキというよりは申し訳ないなあとか、居た堪れないなあとか、その程度だった。
恥ずかしくて顔が見れないなんてそんなことは全くなかった。
でも、でも・・・・
「でもジルさんには、大切な人がいるんです」
「大切な人?」
「はい。懐中時計の蓋にとっても綺麗な人の写真を貼っていました。恋人かもしれません」
「「恋人!?」」
2人も知らないということは、内緒の存在なんだろうか。
「確かに、司令官顔怖いしストイックだし一見近寄り難いけど、男前で優しくて、なんと言っても料理は絶品だしね。
そのギャップに密かに想いを寄せる人も結構いるかも・・・」
「ちょっとメテ」
メテさんの言葉に、何故か言いようのない不安を覚えてしまう。
「ジルさん、モテますか?もしかしてもう結婚していますか?」
「安心して、結婚はしてないはず。でもこれだけは言える。司令官はモテる!」
「やっぱり・・・」
「メテ、いい加減に・・・」
ジルさんほど素敵な人なら、そりゃそうか。
この世界には強くて優しい人がたくさんいる。人攫いや奴隷商のように道をはずれた人もたくさんいるんだろうけど、少なくとも僕が出会った多くの人は子供も大人も皆力強く生きていた。何も知らない僕はその人たちにまだまだ敵わないかもしれない。
「もし司令官に恋人がいたら、アキオ君はどう思う?」
「それは・・・嫌、です」
「そっか」
でも、例えジルさんに好きになってもらえなくても、この気持ちは僕の中で大切にしたい。ジルさんからせっかくもらった温かい感情を、『もしかしたら違うかも』なんて自分で否定しようとしてどうするんだ。
そういうところが僕の悪いところだ。胸を張ってジルさんを好きだと言えるようにならないと、いつまで経っても元の僕のままだ。前に進むなんて言いながら、自分から変わろうとしてなかった。
「わかりました。僕、ジルさんを落とし・・・ます」
「ア、アキオ君?」
「ジルさんを落とせるくらい、いい男になって見せます」
今の一瞬で何がどうしてそうなったのー?と小さな声で驚き戸惑っているイガさんをよそに、「その意気だ!頑張れー!」と僕を鼓舞するメテさん。その中心で鼻息荒く「はいっ!」と意気込んでみる。なんだかとても纏まりの無い状況が築き上がってしまったけど、すごくスッキリした。
やっぱり2人の力はすごいな。いつか僕も2人みたいに堂々と胸を張れるような生き方をしたい。
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