ある時計台の運命

丑三とき

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旅路

おまじない②

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この子は、私の理性を試しているのだろうか。



頬を膨らませ、私と並ぶと親子に間違われる、と不満を漏らす姿は大変愛らしかったし、この世界に来たことを前向きに捉え、感謝を伝えてくれる様子には思わず胸が熱くなった。


出会った時の機械のような振る舞いを思い出す。
淡々としていながらも心の奥では全てのものに怯え、何から何までを観察し、私の一挙手一投足を見て何とか気を悪くさせまいと慎重になる余り、食べたり着替えたりなどの人間が当たり前にする行為を自ら放棄せざるを得なかった彼が今これほどまで自分を曝け出してくれている。

アキオの素直な思いを聞くことができて気が舞い上がったのも束の間、一緒に寝たいと悩ましげな視線をこちらに送り、睡魔と戦いながら私の頬に”まじない”をかける彼に、危うく抑えが効かなくなるところだった。

もちろんアキオにその気が無いことは分かっている。
言われずとも、不安定なアキオを1人で眠らせるつもりは最初から無かった。

しかし、まじないをつむぐ彼の唇が私の目には何とも艶かしく映ってしまい、この選択は果たして合っていたのだろうかと不安が込み上げるのだ。

喝を入れる為に叩いた頬が、少し冷たい手に包まれた。

すぐにでも抱き込んで心ごと私が奪ってしまいたい。私から離れるなとそう言ってしまいたい。彼の気持ちや都合など一切考えず、そんな事が頭をよぎった。

この手が私の頭を冷やしてくれることを願って、そのまま目を閉じた。


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