ある時計台の運命

丑三とき

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王都

プレゼント大作戦決行編③

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爪の周りにも念入りに塗ってみる。
ここはささくれが出来てしまいやすいからしっかり保湿しないと。

ジルさんの爪は綺麗に切り揃えられていて、指は長くてゴツゴツしている。
手のひらは皮が厚い。たくさん鍛錬したり戦ったりしてきたんだろうな。

それにしても手、大きい。

この手で、僕の……








ボッ!!



・・・・・・・・・





顔から爆発音が鳴った気がする。
今僕何想像した?


変態!!


もう…自分のはしたなさに呆れる。

だめ、集中集中。
心頭滅却。



練り油のベタつきがなくなるまでしっかりと塗り込む。
無我夢中に塗り込む。


「それじゃ、反対の手を…」

「ああ」

反対の手も同様に、まずもみもみ両手で揉みほぐして、長い指と指の間、爪の周り、と順番にマッサージしていく。

「アキオの手は柔らかいな」

「そうですか?」

「ああ。とても心地がいい」

「僕は料理もできないし、何かスポーツをしていたわけでもないし、苦労してない証拠です。ジルさんの手は、働き者の手って感じで、綺麗でかっこいいです」

「そうか。あまり自分の手を綺麗だと思ったことは無いが、アキオにそう言われると名誉な事に思える」

「ふふっ。大袈裟です。
今までこの手に何度も助けられてきました。これからは僕もジルさんのために何かしたいです。力不足ですが、僕にできることがあれば教えてください」

「では、たまにこうして癒やしてくれるか?」

「もちろんです!マッサージでも、肩たたきでも、なんでもします」

「それは頼もしい。今まで以上に業務が捗りそうだ。だがやはり、私にとってはアキオの笑顔が一番の名薬だ」

先ほどマッサージを施した手で頭をふわりと包まれ、自分が笑っている事に気がつく。
ジルさんが微笑んでいたから、つられてしまったのだろうか。

「僕、上手に笑えていますか」

「ああ」


良かった…。
どんなに自分の中だけで幸せでも、幸せそうに出来ているかは正直自信がなかった。
今までの人生、表情が無いと言われたことは数知れず。自分でも自覚があったから別に嫌な気はしなかったけど、やっぱり相手に『楽しい』『幸せ』と伝えるのは、どんな言葉よりも笑顔で伝えた方が、返された方も嬉しいものだろう。

ジルさんも仏頂面だけど、いつも微笑んでくれるから僕も同じように出来たらって思っていた。

ジルさんが言ったように少しずつ進んでいこう。
少しずつ笑えるようになって、今まで積み重ねてきた幸せな気持ちをいつかめいいっぱい、もう迷惑だってくらい表現してやる。

そう思いながら大きな手に触れていると、いつのまにか不安な気持ちは消え去っていた。
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