ある時計台の運命

丑三とき

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王都

新生活

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目が覚めると、当然ジルさんはいなかった。
仕事だって言っていたし、朝早くに出たのだろう。
僕はこんな事で寂しいと思ってしまう我儘な人間に育ってしまったようだ。


窓からは朝日が差し込んでいる。
ベッドから降りてレースカーテンを開けると見通しの良い景色が広がっていた。高さからして、城のわりと上階だと思われる。

そういえばしばらくここが木の上だということを忘れていた。
王都はどの町よりも大きいと聞くし、下からも見てみたかったな。

ここは木のどの部分なんだろう。
城って言うくらいだから、やっぱてっぺんかな?

まあ、諸々はこれから勉強させてもらえるのだろう。楽しみだ。



ーーーコンコンコンッ


「アキオ様!おはようございます!お目覚めですか?」

「あ、ユリ…起きてるよ。どうぞ」

「失礼いたします」

「おはよう」

「な、な、な、なんということ…!!
朝日が差す窓辺にアキオ様が佇んで……わたくしの脳味噌では処理し切れない…!!この美しさを!この愛らしさを!誰が想像できたでしょう!」

ユリは今日も朝から元気だ。
こちらを観てミュージカルのようなセリフを並べ立てながら顔を濡らしている。

「泣いて、るの?何かあった?大丈夫?」

「わたくしをご心配…ああ、なんとお優しい!申し訳ございません!アキオ様の清いお心をわたくしなどに割かせてしまうとはっ…!一生の不覚!
一度腹を切ってまいります」

「ちょ、ちょっとそんなことしなくていいから。っわあ」

「アキオ様っ!!!」

危ない。
また躓いてしまった。
今度こそ床とお見合いするのを覚悟していたけど、ユリがしっかりと抱きとめてくれたおかげでどこも打たずに済んだ。

というかさっきまで扉のところに居たのに、ユリって足速いんだなあ。

「大丈夫ですかっ!?申し訳ございません。わたくしのせいで…!」

「助けてくれたのに、どうして謝るの?
僕こそごめんなさい。急に転けてしまって」

「アキオ様っ…!!あなたをお守りするとお約束したのに、そんな事を言わせてしまうなど…」

「守ってくれたじゃない。ありがとう、ユリ」

「なんと…なんとありがたき御言葉!
この命をかけて一生お支えいたします!!!」

わあ、すごい泣いてる。
びちゃびちゃだ…。枯渇しちゃうんじゃないかってくらい流れてるけど本当に大丈夫かな?
流涙に致死量ってあったっけ。

それはそれとして、そろそろひとりで歩く練習はしなくちゃ駄目だよな。
ずっとこのままでは皆に面倒をかけてしまう。
それは嫌だ。

「ああ、いつまでも泣いていられません!
アキオ様。朝食をお持ちしました!よろしければ召上がりませんか?」

あんなに流れてた涙を一瞬で引っ込めて、また溌剌としたいつものユリに戻った。

「そうなの?わざわざありがとう。いただこうかな」

返事をすると、ユリは僕をゆっくりとベッドまで支えて歩いてくれた。

そっか、今日からはジルさんが作ったご飯でも屋台のご飯でも無いんだ。
なんだか、新生活って感じがするなあ。

僕もできることを増やしていかなくちゃ。
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