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王都
軍城③
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この国では、教育を受けられることは当たり前では無いのだ。
義務教育という概念が無いこの国にとって、勉強ができる環境ほど贅沢なものは無い。
めちゃくちゃ図々しいじゃないか、僕。
分をわきまえない客人だと思われたかもしれない。
どうしよう…。
「えっと…」
「君は…天使………?」
「心が洗われるようだ……」
「え?」
謝ろうとしたら手を合わせて崇め奉られた。
後光に照らされたように目を細めている二人は今にも涙を流しそうな勢いだ。
ユリといい、城には表現力豊かな人が多いな…。
「えっと」
「ぜひ!またいつでもおいで、アキオ殿!たくさんお話をしよう!」
ニーソンさんが勢いよく身を乗り出し、僕の手を両手で握る。
「本当に…無礼をすまなかった!
許してくれとは言わない。代わりに俺の持つ知識なら全て教えよう!アキオ殿、いつでも何でも聞いてくれ!」
クリスさんもニーソンさんの手の上に両手を添える。
「ありがとう、ございます」
「んん゛っ!」
「「あ…」」
少しだけ困っているとユリのドスの効いた咳払いが聞こえ、二人はぱっと手を離した。
「お優しく、美しく、それでいて愛らしいアキオ様に免じて今日のところは大目にみてあげましょう。
次、アキオ様を困らせることが有れば、容赦…しませんよ?」
とても小さくだけど、親指で首を切るジェスチャーしてる…
給仕さんってこういうのして大丈夫なのかな。
はたから見ると力関係は完全に分かりきってる。軍人が給仕に怯える図はなんだか珍しいものを見た気がして少し面白い。
「わ、分かった、分かったよ…」
「全く…軍人に凄む給仕なんてこいつくらいだぜ」
「何か言いました?」
「い、いや!何でもねぇよ!」
ユリはクリスさんの呟きも逃さない。
そういえばユリって腕っ節良いんだっけ。
軍人たちより強かったりして…。
それは無いか。
「アキオ様。やはり食堂はジャングルです。
これからもずっと!アキオ様のお食事はわたくしがお部屋までお持ちしますので…」
三人の楽しいやりとりを見ている内に、僕は良いことを思いついた。
ユリが何か一生懸命僕に訴えているような気がするけど自身のひらめきに胸が躍っているのであまり耳に入って来ない。
「ユリ、僕も食堂で食事をしてみたいな。
明日の朝はここで食べちゃだめ?」
ユリの負担も減るし、とてもいい考えだと思う。
毎朝食事を持って来てもらうなんて貴族じゃあるまいし、これからずっとしてもらうのは申し訳ないなと思っていたところだ。
「ア、ア、アキオ様!!今のわたくしの話を聞いていらっしゃいましたか!?」
聞いてなかった…ごめん。
「ここはこのように野生の獣のような軍人がうじゃうじゃのさばっているところですよ!?
アキオ様をこの様な場所になど!ダメです!絶対にダメです!宮廷にもっと静かで人が少ない食堂があるので、せめてそちらを」
「俺ら、酷い言われ様だよね」
「うじゃうじゃだとよ」
「そっか…皆さんの大切な場所だもんね。図々しいこと言ってごめん…」
「え?いや、いやいやいや!ちちちち違うのですアキオ様!そんな悲しいお顔をされてはわたくし…
いいえ!決してダメなどとは言っておりませんよ!ただですね」
「言ったよな?」
「うん、言ってたね」
「少しお黙りくださいませ」
「「す!すまない…」」
合いの手を入れる二人を一瞬で黙らせて、ウンウンと頭を捻る。
やばい、ユリを困らせてしまった…。
「では、こうしましょうアキオ様。
決してお一人ではいらっしゃらない事。
わたくしか司令官、もしくは道中をともにされたイガ隊員かメテ隊員が一緒であれば、使用をしても良い、という事に…」
「本当に?良いの?」
非常に渋々と言った感じではあるが、ユリは許可を出してくれた。
やっぱり食事は一人より大勢でとったほうが美味しい。
それを旅路で学んだから、一人の食事はやはり少し寂しいと感じてしまうのだ。
「も、もちろん!
アキオ様のご要望とあれば、お断りするはずがございません!!」
「一回ダメって言ってたよな?」
「はっきりとね」
ーーーギンッッッ!!!!
「「う゛っ!」」
ユリの睨みに負けた二人は口を噤む。
「ありがとう。ユリ大好き」
義務教育という概念が無いこの国にとって、勉強ができる環境ほど贅沢なものは無い。
めちゃくちゃ図々しいじゃないか、僕。
分をわきまえない客人だと思われたかもしれない。
どうしよう…。
「えっと…」
「君は…天使………?」
「心が洗われるようだ……」
「え?」
謝ろうとしたら手を合わせて崇め奉られた。
後光に照らされたように目を細めている二人は今にも涙を流しそうな勢いだ。
ユリといい、城には表現力豊かな人が多いな…。
「えっと」
「ぜひ!またいつでもおいで、アキオ殿!たくさんお話をしよう!」
ニーソンさんが勢いよく身を乗り出し、僕の手を両手で握る。
「本当に…無礼をすまなかった!
許してくれとは言わない。代わりに俺の持つ知識なら全て教えよう!アキオ殿、いつでも何でも聞いてくれ!」
クリスさんもニーソンさんの手の上に両手を添える。
「ありがとう、ございます」
「んん゛っ!」
「「あ…」」
少しだけ困っているとユリのドスの効いた咳払いが聞こえ、二人はぱっと手を離した。
「お優しく、美しく、それでいて愛らしいアキオ様に免じて今日のところは大目にみてあげましょう。
次、アキオ様を困らせることが有れば、容赦…しませんよ?」
とても小さくだけど、親指で首を切るジェスチャーしてる…
給仕さんってこういうのして大丈夫なのかな。
はたから見ると力関係は完全に分かりきってる。軍人が給仕に怯える図はなんだか珍しいものを見た気がして少し面白い。
「わ、分かった、分かったよ…」
「全く…軍人に凄む給仕なんてこいつくらいだぜ」
「何か言いました?」
「い、いや!何でもねぇよ!」
ユリはクリスさんの呟きも逃さない。
そういえばユリって腕っ節良いんだっけ。
軍人たちより強かったりして…。
それは無いか。
「アキオ様。やはり食堂はジャングルです。
これからもずっと!アキオ様のお食事はわたくしがお部屋までお持ちしますので…」
三人の楽しいやりとりを見ている内に、僕は良いことを思いついた。
ユリが何か一生懸命僕に訴えているような気がするけど自身のひらめきに胸が躍っているのであまり耳に入って来ない。
「ユリ、僕も食堂で食事をしてみたいな。
明日の朝はここで食べちゃだめ?」
ユリの負担も減るし、とてもいい考えだと思う。
毎朝食事を持って来てもらうなんて貴族じゃあるまいし、これからずっとしてもらうのは申し訳ないなと思っていたところだ。
「ア、ア、アキオ様!!今のわたくしの話を聞いていらっしゃいましたか!?」
聞いてなかった…ごめん。
「ここはこのように野生の獣のような軍人がうじゃうじゃのさばっているところですよ!?
アキオ様をこの様な場所になど!ダメです!絶対にダメです!宮廷にもっと静かで人が少ない食堂があるので、せめてそちらを」
「俺ら、酷い言われ様だよね」
「うじゃうじゃだとよ」
「そっか…皆さんの大切な場所だもんね。図々しいこと言ってごめん…」
「え?いや、いやいやいや!ちちちち違うのですアキオ様!そんな悲しいお顔をされてはわたくし…
いいえ!決してダメなどとは言っておりませんよ!ただですね」
「言ったよな?」
「うん、言ってたね」
「少しお黙りくださいませ」
「「す!すまない…」」
合いの手を入れる二人を一瞬で黙らせて、ウンウンと頭を捻る。
やばい、ユリを困らせてしまった…。
「では、こうしましょうアキオ様。
決してお一人ではいらっしゃらない事。
わたくしか司令官、もしくは道中をともにされたイガ隊員かメテ隊員が一緒であれば、使用をしても良い、という事に…」
「本当に?良いの?」
非常に渋々と言った感じではあるが、ユリは許可を出してくれた。
やっぱり食事は一人より大勢でとったほうが美味しい。
それを旅路で学んだから、一人の食事はやはり少し寂しいと感じてしまうのだ。
「も、もちろん!
アキオ様のご要望とあれば、お断りするはずがございません!!」
「一回ダメって言ってたよな?」
「はっきりとね」
ーーーギンッッッ!!!!
「「う゛っ!」」
ユリの睨みに負けた二人は口を噤む。
「ありがとう。ユリ大好き」
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