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王都
軍城⑤
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何と愛らしくお美しい方なのだろう。
とてもこの世のものとは思えない。
それが初めてお会いした時の感想だった。
実際にこの世界のお方では無いのだが、異界であるこの世界に飛ばされて不安で仕方がない筈なのに、他人を思いやれる強さも兼ね備えている。
私は健気なアキオ様にますます惹かれた。
惹かれたと言っても、私にも恋人が居るので決して間違いを起こすことは無いと誓うけれど、この度を越す愛らしさ…いけない扉が開いてしまいそうです……。
しかし屈強な男ばかりのこの場所でアキオ様のようなお方が24時間を過ごされるなど、王も突飛な事をお考えになる。まあ、町で生活されるよりは安全だろうが。
ジルルドオクタイ司令官が付いていられない時は、絶対に自分が守らねばと思った。
朝食をお運びしたり城をご案内したり、同じ時間を共有させていただいてからまだほんの数刻しか経っていないにも関わらず、その愛らしさはとどまることを知らない。私はこのアキオ様と言うお人の魅力をあなどっていた。
容姿だけではない、その優しく温かく柔らかいお人柄に、いちいちお可愛らしい言動。
おそろしい……。
これがアキオ様の真のお姿…。
しかし何よりもおそろしかったのは、ご自身の魅力に気づいておられない事だ。
今しがた恐れ多くも、アキオ様が愛嬌を振り撒くことがいかに危険かを説かせていただいたところ、ご自身よりも私の心配をして下さった。
驚愕、歓喜、興奮、戦慄……
どの言葉でも言い表せない感情が襲い掛かる。
いけない。
このお方は危険だ…危険すぎる…何がなんでも私が守らねばならない。
悶絶しそうになるのをなんとか堪えて平心に戻すと、アキオ様は豆鉄砲をくらったようなお顔をしておられた。
ぐっ、……これはだめだ愛くるしい……!
長年、男くさい軍人や官僚らに囲まれ過ごして来た私は、完全に可愛さへの耐性を失っていた。
ああ癒やされる…。そのお姿を目に映させていただけるだけでも幸せなのに、私は今現在アキオ様のお声を聞き、そのお声に応え、私の言葉に対してありがたいお言葉を紡いでくださる。そしてあろうことか「大好き」などと言っていただける関係に…ああもう!思い出してしまった!
あの破壊力……っ!
私だから何とか耐えられたものの、もしあのお顔とお言葉が野蛮な隊員に向けられていたら。
考えるだけで鳥肌が立つ。
いいえ。決して私がそんなことはさせません。
無自覚なアキオ様をお守りするのは骨が折れそうだが、彼ののためならどんな苦労でもしたい。
「アキオ様… 安心してお過ごし下さいね。
アキオ様がどんなにどんなにどんなに鈍感でいらっしゃっても、必ずわたくしがお守り致しますので…!!」
自分に言い聞かせるためにもそうお伝えすると、アキオ様はご尊顔を綻ばせた。
……………………
っあやばい。呼吸をするのを忘れていた。
呼吸というものの概念が分からなくなっていた。
アキオ様は私の様子を見て不思議そうに首を傾げる。
うっっ……!!!
お強い……!
私にこれほどのダメージを与えるとは、やりますね……受けて立とうではありませんか。
「ユリ、大丈夫?」
「もちろん。大丈夫じゃない訳ないじゃないじゃないじゃありませんか」
「……どっ…ち?」
んぐぬぅわぁぁ!!!!
わたしの顔を覗き込んで迷子の小鳥の雛のように眉尻を下げてお困りになられた様子のアキオ様が目の前に…
か、か、かかかかわっ………!!!
じゃなくて!
不覚っ!アキオ様にご心配をおかけしてしまうなど!
「いえ!大丈夫です!大丈夫ですよ!全くもって大丈夫です!」
「そっか。良かった」
アキオ様はちらっと視線を逸らし、ほんの一瞬だけ下の方を向いたかと思うと、杖を握る力をグッと強めた。
やってしまった……私としたことが。
ペースを考えず歩き続け、アキオ様に疲労を感じさせてしまった。歩幅は考慮していたものの、アキオ様の体力も把握していない未熟な私に前を歩かれて、どんなにお辛かっただろう…!
「そうだ!アキオ様。図書館の前に少し寄り道をして行きませんか?」
「寄り道…?」
「はい」
気を遣っているのがバレないように装うが、目の前の黒く大きな瞳は、この世の全てを見透かしているような深さをしている。愛らしさとはまた別の魅力に緊張を抑えることができない。
「どこに行くの?」
「第二居住棟です。アキオ様のお部屋がある塔の隣にありまして、渡り廊下で繋がっているのでいつでも行き来することができますよ」
「いいの?隊員さんたちのお住まいにお邪魔して」
「ええ。実は、アキオ様にお会いしたいというお方が。
数日は非番とのことでしたので、落ち着かれたらいつでもいいので連れてきて欲しい、と言付かっておりまして。ちょうど時間がありますので休憩も兼ねて参りましょう」
そう告げると、少し何かを考えるような素振りを見せた後
「ありがとうね、ユリ」
と目を細められた。
やっぱり、この方には全て見透かされているようで敵わない。
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