109 / 171
王都
お勉強の時間②
しおりを挟む「そんな時にジルが入隊した。
始祖人でも安心して働ける体制を軍がいち早く整えて、差別など必要ない事を国民に示すべきだと説く彼の熱意はあまりにも強うてな。上の人間も頭を抱えておったとはいえ、彼に何か希望のようなものを見出しとったに違いない」
先生は当時の様子を思い出しているのか、窓の外を眺めながら面白そうに声を弾ませた。
「徐々に始祖人の軍人が増え、ジルが最高司令官に就いた2年前、ドラゴンを中心とする飛行部隊を発足させたという訳じゃ」
すごすぎる。
思ったよりすごすぎた。
上司部下関係無く周りの人達を説得し、組織の体制を自分から変えていくなんて。
伝説の称号は伊達じゃない。
「ジルさんって、やっぱり優秀な方なんですね…」
「ああ、ジルはやりおるよ。近頃では伝説などと呼ばれておるらしいが、彼ほどその言葉が似合う者もおるまい。わしでも為し得んかった軍の立て直しを次々と実現させたんじゃからの」
自分の生徒を自慢するような誇らしげな口ぶりに、なぜだか僕も誇らしくなってしまう。
ん?
………わしでも?
「それは、オグルィ先生をはじめとする戦後の歴代最高司令官の方々が積み重ねて来られたご尽力があったから。たまたま私の時に運良く改革の機会が巡って来ただけのことです」
「ジルさん!?」
先生の一言を気に留めていると、聞き慣れた声が近くで響いて思わず肩が跳ねる。振り向いた先にはジルさんが立っていた。いつの間に…
「先生、勉強中に申し訳ございません。
コーデロイ医師の手が空いたのでアキオをお借りしたいのですが、よろしいでしょうか」
「ああ、わしは構わんよ」
「ありがとうございます。
アキオ、楽しみにしていたのに中断してすまない」
椅子に座る僕の隣に跪き、視線を合わせる。
その近さに危うく昨日の事を思い出しそうになる。
落ち着いて、平常心、平常心………。
「いえ……
ジルさん、お仕事は」
「代わりの者に任せてきた。
今から医務室に行く。専門の医師にきちんと診てもらった方がいいと思ってな」
その言葉に、今までかけてきた迷惑の数々が思い出される。僕が弱いせいでたくさん困らせてしまった。
泣き喚いちゃったこともあるし、それに旅の最中にジルさんから聞いた話が本当なら、自分で意識していないところでも魂が抜けたように震えていたことも何度かあったみたいだし。
ジルさんのおかげでようやく自分の不安定な心を自覚することができた。
……治るのかな。いや、治さなきゃ。
脚も。早くひとりで歩けるようにならないと。いつまでも周りの人たちの力を借りるようではだめだ。
「大丈夫だ。私もついている」
「…はい」
「ではアキオ殿。しっかり診て貰いなさいね」
「ありがとうございます、オグルィ先生」
短い授業時間だったけど、思わぬ情報も得られたし非常に充実した時間だった。
また一緒にお勉強してもらう事を先生と約束し、僕はジルさんに抱えられて医務室に転移した。
11
あなたにおすすめの小説
二十年仕えた王女が私を敵に売った。それでも守ることにした
セッシー
ファンタジー
二十年間、王女殿下の護衛騎士として仕えた。その殿下が、私を敵に売った。
牢の中で事実を知り、一分考えて——逃げることにした。殿下の目的を、まだ果たしていないから。
裏切りの真相を確かめるため、一人王都へ戻る護衛騎士の話。
ヒーロー組織のサポートメンバーになりました!
はちのす
BL
朝起きたら、街はゾンビだらけ!生き残りたい俺は、敵に立ち向かうヒーロー組織<ビジランテ>に出逢った。
********
癖の強いヒーロー達の"心と胃の拠り所"になるストーリー!
※ちょっとイチャつきます。
氷の婚約者様に破談を申し出たら号泣された
楽矢
BL
目が覚めると、レースの牢獄のような天蓋付きベッドの上だった。
何も覚えていない出来損ない下級貴族ミラ。無能だクズだと冷酷な罵詈雑言を浴びせてくる氷の騎士セティアス。
記憶喪失から始まる、2人のファンタジー貴族ラブコメディ。
----------
※注)
かっこいい攻はいません。
タイトル通りそのうち号泣しますのでご注意!
貴族描写は緩い目で雰囲気だけお読みいただけると幸いです。
ハッピーエンドです。
激重感情をこじらせた攻→受な関係がお好きな同志の方、どうぞよろしくお願いします!
全16話 完結済み/現在毎日更新予定
他サイトにも同作品を投稿しています。
様子を見ながらそのうち統合するかもしれません。
初めての一次創作でまだよく分かっておらず、何かおかしなことをしでかしていたら申し訳ないです!
婚約破棄の代償
nanahi
恋愛
「あの子を放って置けないんだ。ごめん。婚約はなかったことにしてほしい」
ある日突然、侯爵令嬢エバンジェリンは婚約者アダムスに一方的に婚約破棄される。破局に追い込んだのは婚約者の幼馴染メアリという平民の儚げな娘だった。
エバンジェリンを差し置いてアダムスとメアリはひと時の幸せに酔うが、婚約破棄の代償は想像以上に大きかった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる