ある時計台の運命

丑三とき

文字の大きさ
115 / 171
王都

ジルさんとランチ②

しおりを挟む

「はいよ、お待ちどう!」

いい香りとともにガシモワ料理長がやって来て、テーブルに料理を並べてくれた。
差し出されたのは茶色いスープが入った器と、ひと口サイズの小籠包みたいなものが2つ乗った小皿と、空のお皿。

「ハーチョとヒリンカか。アキオは初めてだな」

「はい、初めてです。いい匂いがしますね。美味しそう…」

「ハーチョ」というのは、ガー肉のスープで米を煮込んだ料理らしい。スープが多めのリゾットって感じだ。
野菜らしきものも細かく刻まれていて、これだけでお腹いっぱいになりそう。
「ヒリンカ」は説明を聞くに、もうほぼ小籠包そのものっぽい。
作り方は蒸すんじゃなくて茹でるらしいから、感覚的には水餃子かな?


「そうかそうか初めてか!さて、口に合うかな?ひとまず食べてみな!」

「いただきます」

ジルさんの半分サイズのお皿で用意してくれたハーチョをスプーンでひと口。


ん~~
ピリ辛でおいしい。

スパイシーな感じが食欲をそそる。

バターの香りもするから、お米はバターライスかな?種類も日本米と違うけど、このスープにとても合ってる。
細かく刻まれた野菜は玉ねぎやトマトに似ている。程よい酸味と溶け出した玉ねぎのコクがもう絶品。


さてこの小籠包はどうだろう…

箸が無いからフォークで支えてスプーンに乗せて、と。
きっと熱いから気をつけて食べなきゃ。

フーフーして一度唇をつける。まだ熱い。
もう一度フー、フー、


よし。

まず皮の中から溢れる肉汁を味わってから、パクリとひと口で。


ん~。ちょっと熱いけど、これも美味しい。
香草の香りがしてくせになる。


この感動を伝えなきゃ。


「ガシモワ料理長、すごく美味しいです。こんなに美味しい料理が食べられるなんて隊員の皆さんは幸せですね」

「おぅ!当たり前よ!軍人の胃袋支えるのが俺らの仕事だからなぁ。
それにしてもアキオ殿、めちゃくちゃ美味そうに食ってくれるじゃねぇか。思わず見惚れちまったぜ」

「だって、とても美味しいから」

「ああ。さすがガシモワ料理長だ。非常に美味い」

ジルさんもスープをひと口すすり、料理長に感想を伝える。

「はっははは!そうかそうか。そう言ってくれると料理人冥利に尽きるぜ。
おっと、こうしちゃいられねぇ。俺はそろそろ戻るよ。それじゃお二人さん、ゆっくりしてきな!」

「ありがとうございます」


これだけの人数の料理を作るのは大変だろうな。忙しそうにしながらもこうやってお話してくれる心遣いがとても嬉しい。


ん?スープの中から何か出てきた。
これは…骨つきのお肉だ。どうやって食べよう。
軍の食堂ってテーブルマナーとかある?
お行儀悪くしてジルさんに恥ずかしい思いさせてしまったらやだな。


ピタリと動きが止まった僕を見かねたのだろう。ジルさん備え付けの新しいフォークとナイフを取り出して、僕の器から空のお皿にお肉を取り出し、器用に骨から取り外してくれた。
空のお皿はお肉のためだったのか。

「骨が口に入ると危ない。気をつけて食べなさい」

「ありがとうございます。いただきます」


食べやすくほぐしてもらったお肉をパクリ。

うわ、ホロホロでとろけるー。
ガーの肉って煮込んだらこんな風になるのか。


「ジルさん、美味しいですね」


「ああ。君の幸せそうな顔を見ながら食べるとより一層美味く感じるな」

「そんなに、顔ゆるんでましたか…?」

「とても上機嫌に見える」

「恥ずかしいので、あまり見ないでください……はやく食べないと冷めてしまいますよ」

「そうだな。冷めないうちに食べよう」
しおりを挟む
感想 12

あなたにおすすめの小説

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

二十年仕えた王女が私を敵に売った。それでも守ることにした

セッシー
ファンタジー
二十年間、王女殿下の護衛騎士として仕えた。その殿下が、私を敵に売った。 牢の中で事実を知り、一分考えて——逃げることにした。殿下の目的を、まだ果たしていないから。 裏切りの真相を確かめるため、一人王都へ戻る護衛騎士の話。

貧乏Ωが御曹司αの将来のために逃げた話。

ミカン
BL
オメガバース

ヒーロー組織のサポートメンバーになりました!

はちのす
BL
朝起きたら、街はゾンビだらけ!生き残りたい俺は、敵に立ち向かうヒーロー組織<ビジランテ>に出逢った。 ******** 癖の強いヒーロー達の"心と胃の拠り所"になるストーリー! ※ちょっとイチャつきます。

氷の婚約者様に破談を申し出たら号泣された

楽矢
BL
目が覚めると、レースの牢獄のような天蓋付きベッドの上だった。 何も覚えていない出来損ない下級貴族ミラ。無能だクズだと冷酷な罵詈雑言を浴びせてくる氷の騎士セティアス。 記憶喪失から始まる、2人のファンタジー貴族ラブコメディ。 ---------- ※注) かっこいい攻はいません。 タイトル通りそのうち号泣しますのでご注意! 貴族描写は緩い目で雰囲気だけお読みいただけると幸いです。 ハッピーエンドです。 激重感情をこじらせた攻→受な関係がお好きな同志の方、どうぞよろしくお願いします! 全16話 完結済み/現在毎日更新予定 他サイトにも同作品を投稿しています。 様子を見ながらそのうち統合するかもしれません。 初めての一次創作でまだよく分かっておらず、何かおかしなことをしでかしていたら申し訳ないです!

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

R指定

ヤミイ
BL
ハードです。

【完結】20年後の真実

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。 マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。 それから20年。 マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。 そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。 おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。 全4話書き上げ済み。

処理中です...