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王都
元最高司令官
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◆
「はて、わしそんな事言ったかのぅ?」
と、斜め上を向いてとぼけるオグルィ先生。
こんなお茶目な仕草になってしまったのは、授業前に僕が昨日の話を盛り返したからだ。
昨日の話というのは、医務室に行く前に判明した「オグルィ先生元最高司令官説」。
説というかおそらく真実だ。
気になりすぎて興奮気味に詰め寄ったから、困らせてしまったかな。
僕の視線からするする逃げる先生の目を追いかける。
先生の目は綺麗な灰色だ。
先生に会うともふもふのおひげに注目してしまいがちだけど、少し垂れてて優しそうな目もやっぱり僕のような日本人の目とは違っていて、本当に本物のサンタさんみたい。
空を彷徨う灰色の目を3、4度追いかけたとき、
「アキオ殿が思っておるほど立派な話ではないよ。それでも聞きたいかね?」
と折れてくれた。
「聞きたいです」
ピシ!!
僕は背筋を伸ばしてやる気を見せる。
「これこれそんな真っ直ぐな目で見つめるでない。
コホン。ではまず、役職についての勉強からしようかの」
「お願いします」
先生は観念したようにひとつため息を吐き、咳払いをして話し始める。
僕は紙とペンを用意して、お勉強スタイルに。
「元々『最高司令官』というのは、国の王や宰相の立場にある者が務めておったんじゃよ」
相変わらず眠くなる周波数は、図書館の静けさに吸い取られてゆく。
先生は隣にいるのに、どこか遠くから語りかけられているようだ。
「王様や宰相…。でもジルさんは」
「そのどちらでもない。戦後に制度が変わり、軍の中の最高位の者がその座に就くことになった。
しかしその頃は随分世界もバタついておっての。王の崩御直後は暫定的に当時軍人であったわしが任されることになったんじゃ」
「ということは、当時先生は軍の中でも上の立場にいらっしゃったのですか?」
「それなりにの。
最高司令官の座につき、必死こいた割にはボロボロじゃったわい。結局己の情けなさに失望して、すぐに軍を退いた」
「そうなんですね……」
なんと声をかけて良いか分からず、喉を振り絞ってみても気の利かないあいづちだけが頼りなく耳に返ってくる。
「…なんにも出来んかった。戦争は終わったはずなのに、人々が感じる絶望は戦時中と変わらんかった。目の前で人が死に、売られてゆき、蹂躙され……
憎むべきは人ではなく戦争、とは言うが果たして本当にそうか。
自分がわからんくなった。
こんな状態で人様に指示など出せるはずがない。若い者に後を託し、わしは軍を去ることにしたという訳じゃ」
先生が言葉を紡ぐたびに白いおひげが震える。
ずっと心地よく包み込むように響いていた声も、次第に震えていってるみたいだった。
だけど目はまっすぐ前を見つめている。
その目には今何が見えているんだろう。
「はて、わしそんな事言ったかのぅ?」
と、斜め上を向いてとぼけるオグルィ先生。
こんなお茶目な仕草になってしまったのは、授業前に僕が昨日の話を盛り返したからだ。
昨日の話というのは、医務室に行く前に判明した「オグルィ先生元最高司令官説」。
説というかおそらく真実だ。
気になりすぎて興奮気味に詰め寄ったから、困らせてしまったかな。
僕の視線からするする逃げる先生の目を追いかける。
先生の目は綺麗な灰色だ。
先生に会うともふもふのおひげに注目してしまいがちだけど、少し垂れてて優しそうな目もやっぱり僕のような日本人の目とは違っていて、本当に本物のサンタさんみたい。
空を彷徨う灰色の目を3、4度追いかけたとき、
「アキオ殿が思っておるほど立派な話ではないよ。それでも聞きたいかね?」
と折れてくれた。
「聞きたいです」
ピシ!!
僕は背筋を伸ばしてやる気を見せる。
「これこれそんな真っ直ぐな目で見つめるでない。
コホン。ではまず、役職についての勉強からしようかの」
「お願いします」
先生は観念したようにひとつため息を吐き、咳払いをして話し始める。
僕は紙とペンを用意して、お勉強スタイルに。
「元々『最高司令官』というのは、国の王や宰相の立場にある者が務めておったんじゃよ」
相変わらず眠くなる周波数は、図書館の静けさに吸い取られてゆく。
先生は隣にいるのに、どこか遠くから語りかけられているようだ。
「王様や宰相…。でもジルさんは」
「そのどちらでもない。戦後に制度が変わり、軍の中の最高位の者がその座に就くことになった。
しかしその頃は随分世界もバタついておっての。王の崩御直後は暫定的に当時軍人であったわしが任されることになったんじゃ」
「ということは、当時先生は軍の中でも上の立場にいらっしゃったのですか?」
「それなりにの。
最高司令官の座につき、必死こいた割にはボロボロじゃったわい。結局己の情けなさに失望して、すぐに軍を退いた」
「そうなんですね……」
なんと声をかけて良いか分からず、喉を振り絞ってみても気の利かないあいづちだけが頼りなく耳に返ってくる。
「…なんにも出来んかった。戦争は終わったはずなのに、人々が感じる絶望は戦時中と変わらんかった。目の前で人が死に、売られてゆき、蹂躙され……
憎むべきは人ではなく戦争、とは言うが果たして本当にそうか。
自分がわからんくなった。
こんな状態で人様に指示など出せるはずがない。若い者に後を託し、わしは軍を去ることにしたという訳じゃ」
先生が言葉を紡ぐたびに白いおひげが震える。
ずっと心地よく包み込むように響いていた声も、次第に震えていってるみたいだった。
だけど目はまっすぐ前を見つめている。
その目には今何が見えているんだろう。
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