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王都〜第二章〜
誘惑②
しおりを挟む咄嗟に否定できず素直に白状すると、ジルさんはベッドに腰掛けてこちらに手を差し出した。言われた通りに彼の隣に腰掛け、出された手を握る。
「心配するな。彼は手合わせの後すぐに自室に戻った。風呂は私1人で入った」
せっかく好きと言ってもらったのにこんなんじゃジルさんに呆れられちゃう。けど、聞きたいことを素直に聞けたのは一歩前進と考えてよいのだろうか。
こう言う時はすみませんと言うべきか、ありがとうと言うべきか。いやありがとうって何だ。じゃあすみませんも何か違うか。
考えごとをする僕を、いつのまにかジルさんが抱きしめていたらしい。心拍数が一気に跳ね上がる。
き、きた……
ジルさん、僕に触れて来たと言うことは、そう言うことだと捉えてよいのですね!?
ぐっと腹を括った僕に、彼は
「アキオが嫉妬してくれるとはな」
と感慨深そうに言う。
よし、がんばる。
ここからめいいっぱい甘えて、お誘いするんだ……! ま、まずは目を見て……だめだ見れない!
顔を上げられない。やきもちを焼いてると白状した時すでにメンタルはピークに達していたのだ。でも、せめて手を添えるくらいなら。
僕はジルさんの膝などに手を添え、そのまま撫でてみたり指でちょいちょいと突いてみたりして、誘っていますアピールをした。
……今の僕にはこれが限界だった。
「ん? 眠いのか。そろそろ寝よう。アキオも1日ぶりに大勢の人に会って疲れただろう」
どうしてそうなるの!
ちがう。ジルさんそうじゃない!
僕の必死のアピールはついぞ届かなかった。
あれよあれよと言うまに布団に突っ込まれ、ジルさんの腕枕を頭の下に敷かれ、抱き込まれたまま頭をぽんぽんと撫でられている。なんだこの幸せなのは。宙に浮いてるみたいにふわふわしていて、居心地が良くて。
でも! 僕が今したいのはこういうことじゃないんだ。
やっとのことで振り絞った声は、少し頼りなかった。
「ジル、さん」
「なんだ、アキオ」
彼はいつも優しい声で返事してくれる。僕がこんなこと言ったら、困らせてしまうだろうか。
「ジルさんは、僕と、えっちなことしたくないの……?」
あ、固まった。
すぐそばにいるジルさんの呼吸さえ聞こえなくなった。
「アキオ、」
喉につっかえながらようやく出たのは、やはり困惑に苛まれた声色だった。その時僕はずっと纏っていた緊張がとけ、なぜだかならなくていいところまで素直になっていた。
「だって僕、ジルさんのこと好きなんです。だからこうやってくっついてるだけでも幸せだけど、でもそれ以上にジルさんのことが欲しくなるんです。焦っているわけではないんですけど、僕、こう思ってますって言うことだけは伝えたいと思って…」
言葉はしっちゃかめっちゃかだ。うまく伝えたいけど伝わってるかわからない。不安だけど、でも言えたことに達成感も感じる。あと、あとは何だっけ、そうだ!
——ぎゅ
「ジルさんに、たくさん触れたい」
"甘える" だ。
僕はジルさんの大きな胴体をしっかり両手で捉えて、立派な胸板に顔を埋めた。まあ、8割型照れ隠しなんだけど、でもちゃんと甘えれた。
今日の目標は、達成だ——
——グルンッ
「アキオ。まったく、君には敵わない」
目の前にはジルさん。その背後には、天井……?
僕はいつのまにかジルさんに組み敷かれる形になっていて、彼の余裕なさげな笑みに心の全てを持って行かれていた。
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