【完結】眠れぬ異界の少年、祓魔師の愛に微睡む

丑三とき

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続編その③〜誕生日編〜

1.サプライズ計画

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「どうしよう……完全に迷子だ」

発情期のサイクルがある程度予測できるようになり、ようやく一人での外出許可が下りた。“ようやく”というのは、フレイヤさんが最後まで首を縦に振らなかったからだ。

予想はしてた。心配性の彼は、僕に少しでも危険が及びそうなことには決して賛成しない。僕を思ってのことだとわかっているから、反対されても嫌な気持ちにはならない。それでも今回ばかりは、どうしても一人で出かけたかったのだ。

ことの始まりは、二週間前に遡る。


◆◆
【二週間前】


「えっ!? フレイヤさん、来週誕生日なの!?」
僕の驚愕を耳にしたイザベラとパネースさんは、驚きとも「やっぱりね」ともとれる微妙な表情を浮かべた。

「ハルオミなら知ってると思って今まで特に話題にしなかったんだけどさ。でもほら、フレイヤ様のことだろ? 自分の誕生日にも興味なくてハルオミに教えてなかったりして……なんて思って念のため言ってみたけど、まさか本当に知らなかったとは」

「もっと早く教えてあげれば良かったですね。すみません」

しゅんとする二人に「これまで聞かなかった僕も僕だ」と反省する。

ここに来たばかりの頃はフレイヤさんの呪いを解くことで精一杯だったし、その後は魔力のことや発情期のこと。思えば色々あったな。

「フレイヤさんの誕生日、特別な日にしたいな。そういえば、この世界では誕生日のお祝いってどんなことするの? もしかして、ギュスター様やムーサ様もいらっしゃってお食事会とか?」

もしそうなら、僕が下手に口を出すより家族で過ごした方がいい日になるのでは——そう思ったが、どうやら違うらしい。

パネースさんが教えてくれた。

「国によって違いますが、このブロムスト国では一年の初めに一斉に歳をとるので、個人の誕生日に盛大なお祝いはほとんどしないんですよ。大切な人にはちょっとしたプレゼントを渡したり、美味しい食事を食べたりはしますが」

「なるほど……僕の世界にもそういう国あるよ。似た感じかな」

「ハルオミの国では派手に祝うのか?」

「んー、人によるとは思うけど……僕が通ってた学校では、誕生日パーティーとかしてる人もいたな。学校にケーキを持ってきてクラッカーを鳴らしたりして」

「学校に爆弾持ち込むのか!?」

「クラッカーを爆弾に分類してるのはイザベラくらいだよ……」

「ハルオミ君にそんな盛大にお祝いされたら、フレイヤ様きっととっても喜びますよ」

「えへへ、そうかな?」

フレイヤさんは褒め上手だから、僕の料理にもいつも嬉しそうな反応をしてくれる。彼が喜んでいる姿を想像すると、ついニヤけが止まらなくなった。

「あー、ハルオミニヤニヤしてる~」

イザベラのからかいもなんのその、僕の脳内はすでに「フレイヤさん誕生日サプライズ」の計画でいっぱいだった。

「ねえねえねえ、フレイヤさんの好きなものとか、好きな場所とか、なにか知らない?」

まずは情報収集だ。屋敷に長くいる二人に聞いてみるも、二人は頭を悩ませた。

「好きなものですか? そんなの、ハルオミ君の料理とか……」

「好きな場所も、ハルオミと一緒ならどこだっていいんじゃねえか?」

「んー……でも料理はいつも作ってるし、もっと特別なことしたいんだよな~。プレゼントとか、サプライズとか」

僕の悩みに、イザベラがポンと手を打った。

「じゃあ街に行ってみたらどうだ? プレゼントにちょうどいいモン色々売ってるから、アイデアが浮かぶかも」

「街か……確かに! お屋敷の中じゃできることも手に入るものも限られてるし」

「それに、ハルオミが一人で買いに行けば完全にサプライズになるだろ?」

イザベラの言葉に、僕は目を輝かせた。それだ。

「でも、フレイヤ様が許可してくださるでしょうか……」

パネースさんの懸念はもっともだった。



案の定、フレイヤさんは難色を示した。
しかし僕もここは譲れまいと数日かけて彼を説得し、初めての一人での外出許可を手に入れたのだった。


◆◆

そして当日。街の活気に心を躍らせながら店を巡っていたはずが、気がつけば見知らぬ路地に迷い込んでいた。

周囲を見回すが、どの道も同じように見える。人通りも少ないところに来てしまった。胸の奥で不安が膨らんでいく。

「落ち着いて……来た道を戻れば……」

そう自分に言い聞かせて踵を返したとき、背後から声がかけられた。

「おや、迷子かい?」

振り返ると、商人風の男が立っていた。人当たりの良さそうな笑みを浮かべているが、なぜか背筋がざわりとした。

「あ、いえ、大丈夫です」

咄嗟にそう答えて歩き出そうとしたが、男が一歩前に出た。

「そう言わずに。この辺りは複雑だからね。案内してあげようか?」

逃げ道を探すように視線を巡らせる。誰か、誰かいないだろうか——。

フレイヤさんの心配そうな顔が脳裏に浮かんだ。ああ、やっぱり一人で来るべきじゃなかったのかもしれない。

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