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東の祓魔師と側仕えの少年
20.太陽みたいな笑顔
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————————sideIzabella————————
——ズーーーーン、
「なぁ、ハルオミの周りにとんでもなく重たいオーラが漂ってんだけど。気のせい?」
「いえ、私にも見えます」
朝、食後の散歩でもしようと外に出ると、中庭のベンチに座ったハルオミの周りを不穏なオーラが渦巻いていた。
ハルオミというのはつい先日この屋敷に来た新しい側仕えだ。仕える主はなんとあのフレイヤ様だという。フレイヤ様は側仕えを置かない魔祓い師として全国でも有名だった。
ヴィーホット家の次期当主候補である他の二人に比べ、冷酷、笑わない、他人に干渉しない、干渉させない。とにかくミステリアスっていう印象が強い。だから彼直々に側仕えを任命された人間がいると聞いて、屋敷はその話題で持ちきりだった。
しかしフレイヤ様の命令なのか、フレイヤ様を癒したことで体に負担がかかっているのか、理由はわからないが二日間はその姿を見ることができなかった。
俺は気が気じゃ無かった。早く会いたくて仕方がなかった。別に興味があったとか仲良くしたいとかじゃない。先輩としてここのしきたりや奉仕の仕方を教えてやろうと思っていただけだ。
ここ東の地の屋敷にいる魔祓い師は次期当主候補の三名のみ。そのうち一人は側仕えを置かないフレイヤ様。だから、屋敷の側仕えは長らく俺とパネースの二人だけだった。だから新人には色々教えてやらないと可哀想だろ、ただそれだけだ。印章を用意してやったのも俺が先輩だからだ。
どんなヤツかわからないから、カッチョイイのやら綺麗なのやら色々用意した。
そして昨日、俺はようやくその姿を見ることができた。ハルオミは小さくて細い。肌は白くて髪と目が黒い。こんな風貌の人間は初めて見た。こんな美しくて可愛らしい人間は初めて見た。自分が見繕った印章たちを頭の中でひっくり返し、一番似合うものを思い浮かべた。さすが俺だ。早速着けてやろう。
そう思って話しかけると、ヤツは執事を見つけて逃げやがった。せっかく印章をやろうと思ったのに。
逃げられたその日の午後に、早くも再び会うことができた。パネースより先に色々教えてやろうと部屋に呼ぶと、パネースも来やがった。こいつは本当にタイミングが悪い。
俺とパネースでハルオミに印章をつけてやると、なんとまだフレイヤ様とセックスしていないと言う。仕方がないので、主を癒す手解きもしてやった。先輩だから、後輩の練習を手伝ってやるのは当たり前だ。
思ったよりハルオミはいやらしかった。
純粋そうな顔を歪めて快楽に溺れる姿はさすがの俺でも腰にくる。こいつは危険だ。魔祓い師たちが不在の間は俺とパネースで守ろうと決めた。
そしてハルオミは練習の成果を発揮すると言って意気揚々と部屋に戻ったのだ。が、次の日の朝、ずーんと重い空気を纏ったハルオミが中庭のベンチに座って俯いていたのだった。
「ハルオミ、おはよう」
「おはようございますハルオミ君」
俺とパネースが話しかけると、引き攣った笑顔で返事を返した。
「ど、どうした、なんかすっげえどんよりしたオーラが漂ってんぞ」
「………ミスりました」
眉を下げて頬を膨らませて、小動物みたいな顔で言う。
「何をだよ。 昨日は張り切ってたじゃねえか。魔力、貰えたんだろ?」
俺の言葉に、おどろおどろしいオーラをさらに増して肩を落とした。
「魔力、貰えなかった……」
静かに呟いたハルオミの言葉を疑った。
魔力を与えなかっただと!?
「ど、どういうことだ」
有り得ねえ。隣ではパネースも口に手を当て信じられないと言った表情をしている。
「でもそんなことはいいんです。僕はフレイヤさんのそばにいれたらそれだけで充分だから。魔力がもらえなくてもフレイヤさんを癒せればいいなって思ってたんだけど……なんで貰えなかったんだろうって考えてたらすごく眠くなっちゃって、結局何もできないまま寝ちゃった」
「はぁ!? そんなんハルオミのせいじゃねえじゃん! 夜伽もしない魔力も与えない。フレイヤ様の考えてることが分かんねぇよ……」
「なんでだろうね。でもそれは考えないことにするよ。いつかフレイヤさんが話してくれるって信じてる」
健気なハルオミ。だけど少し悲しそうだ。ハルオミにこんな顔させて、自分の側仕えに手出さない魔祓い師って何なんだ。
怒っても良いはずなのに、ハルオミは魔力がもらえなかったことよりも自分がフレイヤ様を癒せなかったことに落ち込んでるみたいだ。
パネースもハルオミを元気づけようと宥めている。
「なぜ魔力を与えなかったかは分かりませんが、フレイヤ様がハルオミ君のことを大事に思っていることには変わりないように感じます。この間見かけた時なんて、どなたですか? っていうくらい柔らかい表情してましたから」
「柔らかい表情? フレイヤ様が? 見間違いだろ」
「え……フレイヤさん、いっつも優しそうに笑ってるよ? 昨日はちょっと様子が違ったけど……でも、そばにいて欲しいって言ってくれたんだ。だから嬉しかった」
ハルオミの言葉に、パネースともども豆鉄砲をくらった。いつ見ても素っ気ないフレイヤ様が、優しそうに笑う?
あり得ねぇだろ。でももし本当なら……超見てみてぇ~~
こんな健気な側仕えが居てフレイヤ様は幸せ者だな。でもハルオミの辛そうな顔を見るのは嫌だ。元気になって欲しい。
「夜伽のことは気にすることないって! また俺たちが練習付き合ってやるから! いつかフレイヤ様をぎゃふんと言わせてやろうぜ!」
「……うん! 絶対にフレイヤ様と夜伽するんだ。 イザベラもパネースさんもありがとう。元気出た!」
ハルオミの笑顔は太陽みたいだ。
こんな純粋で微笑ましい笑顔、フレイヤ様の顔も綻ぶわけだ。
——ズーーーーン、
「なぁ、ハルオミの周りにとんでもなく重たいオーラが漂ってんだけど。気のせい?」
「いえ、私にも見えます」
朝、食後の散歩でもしようと外に出ると、中庭のベンチに座ったハルオミの周りを不穏なオーラが渦巻いていた。
ハルオミというのはつい先日この屋敷に来た新しい側仕えだ。仕える主はなんとあのフレイヤ様だという。フレイヤ様は側仕えを置かない魔祓い師として全国でも有名だった。
ヴィーホット家の次期当主候補である他の二人に比べ、冷酷、笑わない、他人に干渉しない、干渉させない。とにかくミステリアスっていう印象が強い。だから彼直々に側仕えを任命された人間がいると聞いて、屋敷はその話題で持ちきりだった。
しかしフレイヤ様の命令なのか、フレイヤ様を癒したことで体に負担がかかっているのか、理由はわからないが二日間はその姿を見ることができなかった。
俺は気が気じゃ無かった。早く会いたくて仕方がなかった。別に興味があったとか仲良くしたいとかじゃない。先輩としてここのしきたりや奉仕の仕方を教えてやろうと思っていただけだ。
ここ東の地の屋敷にいる魔祓い師は次期当主候補の三名のみ。そのうち一人は側仕えを置かないフレイヤ様。だから、屋敷の側仕えは長らく俺とパネースの二人だけだった。だから新人には色々教えてやらないと可哀想だろ、ただそれだけだ。印章を用意してやったのも俺が先輩だからだ。
どんなヤツかわからないから、カッチョイイのやら綺麗なのやら色々用意した。
そして昨日、俺はようやくその姿を見ることができた。ハルオミは小さくて細い。肌は白くて髪と目が黒い。こんな風貌の人間は初めて見た。こんな美しくて可愛らしい人間は初めて見た。自分が見繕った印章たちを頭の中でひっくり返し、一番似合うものを思い浮かべた。さすが俺だ。早速着けてやろう。
そう思って話しかけると、ヤツは執事を見つけて逃げやがった。せっかく印章をやろうと思ったのに。
逃げられたその日の午後に、早くも再び会うことができた。パネースより先に色々教えてやろうと部屋に呼ぶと、パネースも来やがった。こいつは本当にタイミングが悪い。
俺とパネースでハルオミに印章をつけてやると、なんとまだフレイヤ様とセックスしていないと言う。仕方がないので、主を癒す手解きもしてやった。先輩だから、後輩の練習を手伝ってやるのは当たり前だ。
思ったよりハルオミはいやらしかった。
純粋そうな顔を歪めて快楽に溺れる姿はさすがの俺でも腰にくる。こいつは危険だ。魔祓い師たちが不在の間は俺とパネースで守ろうと決めた。
そしてハルオミは練習の成果を発揮すると言って意気揚々と部屋に戻ったのだ。が、次の日の朝、ずーんと重い空気を纏ったハルオミが中庭のベンチに座って俯いていたのだった。
「ハルオミ、おはよう」
「おはようございますハルオミ君」
俺とパネースが話しかけると、引き攣った笑顔で返事を返した。
「ど、どうした、なんかすっげえどんよりしたオーラが漂ってんぞ」
「………ミスりました」
眉を下げて頬を膨らませて、小動物みたいな顔で言う。
「何をだよ。 昨日は張り切ってたじゃねえか。魔力、貰えたんだろ?」
俺の言葉に、おどろおどろしいオーラをさらに増して肩を落とした。
「魔力、貰えなかった……」
静かに呟いたハルオミの言葉を疑った。
魔力を与えなかっただと!?
「ど、どういうことだ」
有り得ねえ。隣ではパネースも口に手を当て信じられないと言った表情をしている。
「でもそんなことはいいんです。僕はフレイヤさんのそばにいれたらそれだけで充分だから。魔力がもらえなくてもフレイヤさんを癒せればいいなって思ってたんだけど……なんで貰えなかったんだろうって考えてたらすごく眠くなっちゃって、結局何もできないまま寝ちゃった」
「はぁ!? そんなんハルオミのせいじゃねえじゃん! 夜伽もしない魔力も与えない。フレイヤ様の考えてることが分かんねぇよ……」
「なんでだろうね。でもそれは考えないことにするよ。いつかフレイヤさんが話してくれるって信じてる」
健気なハルオミ。だけど少し悲しそうだ。ハルオミにこんな顔させて、自分の側仕えに手出さない魔祓い師って何なんだ。
怒っても良いはずなのに、ハルオミは魔力がもらえなかったことよりも自分がフレイヤ様を癒せなかったことに落ち込んでるみたいだ。
パネースもハルオミを元気づけようと宥めている。
「なぜ魔力を与えなかったかは分かりませんが、フレイヤ様がハルオミ君のことを大事に思っていることには変わりないように感じます。この間見かけた時なんて、どなたですか? っていうくらい柔らかい表情してましたから」
「柔らかい表情? フレイヤ様が? 見間違いだろ」
「え……フレイヤさん、いっつも優しそうに笑ってるよ? 昨日はちょっと様子が違ったけど……でも、そばにいて欲しいって言ってくれたんだ。だから嬉しかった」
ハルオミの言葉に、パネースともども豆鉄砲をくらった。いつ見ても素っ気ないフレイヤ様が、優しそうに笑う?
あり得ねぇだろ。でももし本当なら……超見てみてぇ~~
こんな健気な側仕えが居てフレイヤ様は幸せ者だな。でもハルオミの辛そうな顔を見るのは嫌だ。元気になって欲しい。
「夜伽のことは気にすることないって! また俺たちが練習付き合ってやるから! いつかフレイヤ様をぎゃふんと言わせてやろうぜ!」
「……うん! 絶対にフレイヤ様と夜伽するんだ。 イザベラもパネースさんもありがとう。元気出た!」
ハルオミの笑顔は太陽みたいだ。
こんな純粋で微笑ましい笑顔、フレイヤ様の顔も綻ぶわけだ。
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