【完結】眠れぬ異界の少年、祓魔師の愛に微睡む

丑三とき

文字の大きさ
39 / 176
東の祓魔師と側仕えの少年

38.それぞれの覚悟②

しおりを挟む
————————Side Haruomi ———————





何時間眠っていたのだろう。
空の向こうには夕焼けが顔を覗かせている。

起きあがろうとすると何かに引っ張られる。


「あ……フレイヤさん」

床に座ってベッドに顔を伏し、僕の手を握ったまま眠るフレイヤさん。

「ほんとに、どこにも行かないでくれた」

そんな中途半端な体勢で寝てたら足痺れちゃう。
起こさなきゃ、と思いつつも、もう少しだけ寝顔を拝ませてもらうことにした。

初めて会った時は、僕と同じくらい目の下のクマが濃かった。思えば、あれって魔物の呪いのせいで悪い夢ばっかり見てたからなんだよね。

以前よりクマの薄くなった目元を指でなぞる。僕のおかげだったら嬉しいな。






◆◆翌朝◆◆

——ギィィ

「ハルオミィ、大丈夫かあ?」

翌朝、イザベラが心配そうな顔で部屋のドアを遠慮がちに開けてきた。フレイヤさんが出て行った後なので遠慮無く入ってもらうことにした。


「心配しました、ハルオミ君。昨日は顔色が悪かったので」

「ありがとうパネースさん。立て続けに二回も転移したら気分悪くなっちゃって。でももう大丈夫。座って? お茶淹れるね」

「無理すんなってハルオミ、お前が座ってろ!」

「でも」

「そうですよハルオミ君。気分が良くなったと言っても、すぐに動くとまた体調を崩してしまいます。あなたも座ってください」

「うん……ありがと」

イザベラとパネースさんに促されて席につき、三人でテーブルを囲んだ。

「で? フレイヤ様いないじゃん」

「もう討伐に行ったよ?」

「は!? 大丈夫なのかよ。聞いたぜ、その、もう……」

イザベラは言葉を選びきれないのか、俯いたまま口篭ってしまった。

「うん、時間がないんだ。だからね、今日の夜、番つがうことにした」

「……そっか。二人で決めたんだろ?」

「うん。異世界の半身と番になれた例は少ないから、どんな影響があるか正直分からないってクールベさんに言われたんだけど、このまま何もせずにフレイヤさんが死ぬのを待つだけなのは嫌だから。フレイヤさんとも話し合って、自分たちを信じようって」

「そうですか。ハルオミ君、よく決意しましたね」

「そっか。それで、魔力も貰えることになったのか?  半身なら魔力が呪われてても授受できるらしいじゃんか」

「それは番になれた後。フレイヤさんの魔力を貰って正式にこの世界の人間になったら、体質も変わるんだって。熱が出たり、しんどくなっちゃうかもしれない。そしたら番う時に負担がかかって失敗しやすいから……無事番になった後に、ちゃんと魔力を貰うよ」

「そっか」

「うん……もし失敗したら、とか、そういうのは考えないようにした。幸せだから。今でも充分幸せだから」

「ハルオミ……」

イザベラはしゅん、として肩を丸めて縮こまっている。

こんな重たい空気、だめだ!
僕を含めた みんなの気分を晴らすために、僕は声を上げた。

「だから、応援してて! 今日の夜、フレイヤさんと僕、やっと、ね?」

ん? と不思議そうな顔をしていた二人が、意味を理解した途端ニヤニヤ笑い出した。

「あ~、そっか、番になるって、そういうことだもんな」

「良かったですねハルオミ君、ついに! ですね」

「感慨深いよね、なんか、……あ、だめだ急に緊張してきた。今までフレイヤさんとそういうことするために頑張ってきたけど、いざそうなると……しかも側仕えとしてじゃなくて、あぁ、心臓が」

「大丈夫ですハルオミ君、深呼吸、深呼吸」

「そうだぞハルオミ、ハルオミはこれまで数々の死戦を潜り抜けてきた!自身持て!」

「フレイヤ様もハルオミ君にかかればもうイチコロですから!」

「うん、頑張る!」

二人は冗談を言って和ませてくれる。
兎にも角にも夜まで体調を崩さないようにしなきゃ。心も体も、準備は万全に。

僕も覚悟を決めた。
しおりを挟む
感想 17

あなたにおすすめの小説

拾った異世界の子どもがどタイプ男子に育つなんて聞いてない。

おまめ
BL
召喚に巻き込まれ異世界から来た少年、ハルを成り行きで引き取ることになった男、ソラ。立派に親代わりを務めようとしていたのに、一緒に暮らしていくうちに少年がどタイプ男子になっちゃって困ってます。 ✻✻✻ 2026/01/10 『1.出会い』を分割し、後半部分を『2.引き取ります。』として公開しました。

【完結】ここで会ったが、十年目。

N2O
BL
帝国の第二皇子×不思議な力を持つ一族の長の息子(治癒術特化) 我が道を突き進む攻めに、ぶん回される受けのはなし。 (追記5/14 : お互いぶん回してますね。) Special thanks illustration by おのつく 様 X(旧Twitter) @__oc_t ※ご都合主義です。あしからず。 ※素人作品です。ゆっくりと、温かな目でご覧ください。 ※◎は視点が変わります。

2度目の異世界移転。あの時の少年がいい歳になっていて殺気立って睨んでくるんだけど。

ありま氷炎
BL
高校一年の時、道路陥没の事故に巻き込まれ、三日間記憶がない。 異世界転移した記憶はあるんだけど、夢だと思っていた。 二年後、どうやら異世界転移してしまったらしい。 しかもこれは二度目で、あれは夢ではなかったようだった。 再会した少年はすっかりいい歳になっていて、殺気立って睨んでくるんだけど。

イケメンダブルセンターとアンチ>ファンな平凡な俺

ユッキー
BL
アイドルグループ【オーバーウェルミング】は圧倒的な歌唱力の深山影月、圧倒的なパフォーマンス力の漣陽太、そして圧倒的な平凡力な俺間桐真緒の3人で結成されている。  大人気の二人と違いアンチしかいない俺だが、メンバーからもファンからも愛される日が果たしてくるのか!?

劣等アルファは最強王子から逃げられない

BL
リュシアン・ティレルはアルファだが、オメガのフェロモンに気持ち悪くなる欠陥品のアルファ。そのことを周囲に隠しながら生活しているため、異母弟のオメガであるライモントに手ひどい態度をとってしまい、世間からの評判は悪い。 ある日、気分の悪さに逃げ込んだ先で、ひとりの王子につかまる・・・という話です。

【完結】気が付いたらマッチョなblゲーの主人公になっていた件

白井のわ
BL
雄っぱいが大好きな俺は、気が付いたら大好きなblゲーの主人公になっていた。 最初から好感度MAXのマッチョな攻略対象達に迫られて正直心臓がもちそうもない。 いつも俺を第一に考えてくれる幼なじみ、優しいイケオジの先生、憧れの先輩、皆とのイチャイチャハーレムエンドを目指す俺の学園生活が今始まる。

中年冒険者、年下美青年騎士に番認定されたことで全てを告白するはめになったこと

mayo
BL
王宮騎士(24)×Cランク冒険者(36) 低ランク冒険者であるカイは18年前この世界にやって来た異邦人だ。 諸々あって、現在は雑用専門冒険者として貧乏ながら穏やかな生活を送っている。 冒険者ランクがDからCにあがり、隣国の公女様が街にやってきた日、突然現れた美青年騎士に声をかけられて、攫われた。 その後、カイを〝番〟だと主張する美青年騎士のせいで今まで何をしていたのかを文官の前で語ることを強要される。 語らなければ罪に問われると言われ、カイは渋々語ることにしたのだった、生まれてから36年間の出来事を。

過保護な父の歪んだ愛着。旅立ちを控えた俺の身体は、夜ごとに父の形で塗り潰される

中山(ほ)
BL
「パックの中、僕の形になっちゃったね」 夢か現か。耳元で囁かれる甘い声と、内側を執拗に掻き回す熱。翌朝、自室で目覚めたパックに、昨夜の記憶はない。ただ、疼くような下腹部の熱だけが残っていた。 相談しようと向かった相手こそが、自分を侵食している張本人だとも知らずに、パックは父の部屋の扉を開く。 このお話はムーンライトでも投稿してます〜

処理中です...