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東の祓魔師と側仕えの少年
62.優雅なモーニング
しおりを挟むあれから数日間は安静にして過ごし、僕の魔力はずいぶんと安定して来た。まだ自分の中の感覚のどれが魔力かも分からないし魔法も全く使えない。けど魔力が安定してくると体調も回復し、歩いたり走ったり(フレイヤさんにめちゃくちゃ止められるけど)できるようになった。
療養中はイザベラとパネースさんもいっぱいお見舞いに来てくれて、庭で採れた果物を差し入れしてくれた。
ギュスター様は、フレイヤさんの代わりに討伐に出たり各地の魔祓い師たちに自分の息子がステージ5の呪いにかかった経緯を報告したりと忙しくしていたようで、まだ会えていない。けどそれもようやく落ち着いたということで、今日の夜家族揃ってお食事会が開かれる。そこに僕も招待された。
フレイヤさんの職場復帰が近いから、僕たちは残りの休日を楽しもうと一緒にお部屋でゆったりモーニングをしているところだ。
「各地に報告って、フレイヤさん一緒に行かなくていいの?」
「こういうのは現当主が行うのが決まりなんだ。しかしこればかりは私も同行したいと願い出たのだけれど、『お前はハルオミに付いていろ』と言われたよ。色々と落ち着いたら私自ら各地へ報告に回るつもりだ。力を貸してもらった人も沢山いるからお礼もしたい」
フレイヤさんが作った朝ごはんを食べながら雑談する時間はとても幸せで、毎日こうだったらいいななんて思ってしまう。
「そっか、色んな人に助けてもらったんだね。僕もフレイヤさんも」
「ああ。これまでは魔祓い師という立場に対して特に使命など感じていなかった。ただ目の前の魔物を討伐することだけを考えていたが……これからは気を引き締めなければいけないね」
いつも通りのキリッとした目だけど、どこか今までより頼もしく力強い。いつのまにかフレイヤさんの目の下のクマもすっかり消えていて、男前が際立ってしまっている。
それにしてもお礼かあ。
僕もみんなにお礼がしたいな。
生死を彷徨っている時、みんなが助けてくれたって聞いた。
僕に魔力が及ばないよう、ニエルドさんたちは物理的に熱を下げるために氷を確保してくれたし、ムーサ様たちは薬草酒を作るために薬草を採りに行ってくれたし、実は薬師だったウラーさんは薬草酒を調合してくれた。
何か僕にもできること……
「そうだ!」
「どうしたハルオミ」
いきなり声を上げた僕を不思議そうに見つめて言うフレイヤさんに、ひとつ提案を持ちかけた。
「ねえ、今日のお食事会のデザート、僕が作っちゃダメかなあ?」
「君がかい? それはみんなとても喜ぶと思うけど、まだ無理をしない方が」
「料理するくらいなんてことないよ。体力もそんなに使わないし、疲れたら休みながらするから。僕も皆さんにお礼がしたいの」
「そうか……では、君にお願いしてもいいかい? 料理人にもそう伝える」
「ほんと? ありがとうフレイヤさん! よし、久しぶりの料理張り切っちゃおう~っと」
「こらこら。休みながら、だからね」
「はい、くれぐれも気をつけますフレイヤさん」
耳ざとく注意をされ、反省しながらも心の中で意気込む。
さて何を作ろうかしら……
◆
————————Side Freyja————————
数日間の療養を経て、ハルオミの体調は無事回復した。回復をしたと言ってもまだ無理はさせられない。「見て見て! 走っても疲れない!」とはしゃぐ彼を何度捕まえたことか。
そんな彼はこの度の食事会でデザート担当を買って出た。
療養中「今日の朝ごはんはフレンチトースト作る!」と言ってパンを捏ねようとする彼を何度止めたことか。
確かに番う前、ハルオミの作ったふかふかのパンを使って「ふれんちとーすと」なるものを作ってくれると約束はしていた。
私もとても楽しみにしていたが、魔力を使わず人力のみでパンを捏ねるのはある程度の体力が必要だと聞く。
食事は全て私が用意しておりこれからもしばらくは料理はさせないつもりだったが、「皆にお礼がしたい」と言う彼のやる気に満ち溢れた顔を見てしまっては、止めることなど出来なかった。
私が補助をしながら疲れたらすぐに休むと言う約束で調理場を使う許可を出すと、フンフンと鼻歌を歌いながら朝食の続きを食べ始めた。
非常に心配ではあるが、ハルオミの望むことなら無理がない程度に何でもさせたいと思ってしまう。
朝食を口に運びながらもどこか上の空に見える彼は、おそらくデザートのレシピでも頭の中で考案しているのだろう。
楽しそうに上がる口角につられて、私の頬もつい緩む。窓から差す朝日が彼の魅力をさらに引き立てる。
これから先も、このように穏やかな時間を過ごしたいと強く思った。
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