68 / 176
東の祓魔師と側仕えの少年
68.魔力の行方②
しおりを挟む「それはいけない。君のこれは訓練して抑える必要がある。おそらく集中してしまうと無意識に無意識に放出してしまう癖があるようだから、調整できるまで、料理などの集中力を使う行為はなるべくしない方がいいね」
「え、どうして?」
早速出鼻をくじかれた感があり肩を落とす。
「いいかい? 魔力量には限度があるんだ。今日は私が付きっきりで手伝っていたしその後も魔力を与えて回復させられたから良かったけれど、何かあってからでは遅い」
「まあ……確かにそうだけど」
残念な思いからモゴモゴと言い淀んでいると、パネースさんも意見した。
「ハルオミ君の作ったお菓子がしばらく食べられないのは残念ですが、こればかりはフレイヤ様のご意見に大賛成です。君の体が一番大切ですもの。魔力制御の練習は私も付き合います」
「俺もそう思う。食べた途端元気みなぎって、なんだコレすげぇ…!って思ったけど、それでハルオミの具合が悪くなるんじゃ意味ないじゃん。それに、そんなん抜きにしてもハルオミの料理サイコーだからさ、今は魔力を抑えられるようになることだけを考えろよ。俺も練習手伝うから!」
「イザベラ……」
確かにそうだ。
自分の魔力も満足に管理できないのにその不安定な魔力で人の役に立てるかもと考えるのは、ちょっと気が早すぎたのではなかろうか。
フレイヤさんたちが言うように、今僕がすべきはいち早く魔力を制御できるようになることかもしれない。
「ありがとうパネースさん、イザベラ。僕、はやく魔力をコントロールできるように頑張る。農園のお芋を美味しく調理するっていう約束も忘れてないからね。なるべく早く叶えられるように、練習よろしくお願いします」
二人に向かって頭を下げると、「任せて!」と頼もしい声が降ってきた。本当に心強い友達だ。
料理は息抜きになるからしばらくできないのはとても残念だけど、目標ができれば達成も早いというではないか。
僕の意気込みに、一同「それがいい、それがいい」と頷いた。
一件落着の空気が流れたところで、話は「アップルパイのアイスクリーム添え」に戻った。
「いやしかしハルオミ殿の世界の甘味がこれほど美味いとは。こんなのをたらふく食ったフレイヤが恨めしいな」
「そうでしょう?ニエルドさん。特にあの何層にもなった外側のやつが香ばしくてたまらなかったでしょう?」
「パネース、なんだかお前が誇らしげだな」
ニエルド様からのつっこみに頬を赤らめて恥ずかしがるパネースさんを皆が微笑ましげに笑う。
「ギュスター、お前も一瞬で平らげたよな。甘いものは苦手なのに珍しい」
「ギュスター様、甘いもの苦手でしたか…すみません!」
「いや、非常に美味しく戴いた。皆を唸らせる味もさることながら、君の心遣いに深く感謝する」
「うん、本当にありがとうハルオミ君!めちゃくちゃ美味しかったよ!」
「ムーサ様……本当に、皆さんのお口に合って良かったです!」
「あのぅ、その事なんですが……」
扉の方を見ると、実はまだ居たウラーさんが控えめに手を上げながら話し始めた。
「屋敷の料理人がですね、どーーしても!もうど~~~ぅっっしても!!このお菓子の作り方が知りたいと、わたくしに"お前が頼んで来い"と押し付けやがっ…ことづかったためこちらへ参った次第なのですが……。ハルオミ殿、暇で暇で仕方ない時で構いませんので、料理人たちの我儘を聞いてやってはくださいませんでしょうか? 料理の基礎はできている奴ら…者たちですから、口頭で指南いただければある程度のコツは掴めるはずなのです」
ガバっと直角にお辞儀するウラーさん。
彼の、執事にしてはいつも言葉の端々に正直さが滲み出ているところが大好きだ。
「それはもちろん良いですが……まだ僕ここにいる皆さん以外にはお屋敷の方とお話しした事ないので……上手に喋れるかな…」
この世界に来てから決まった人としかコミュニケーションとってないから、何だか他の人と話すのは緊張しちゃう。
「おや、ハルオミは人当たりがいいから、てっきり屋敷の皆と仲が良いのかと思っていたよ」
のほほんと言うフレイヤさんを、ギンッッッ!!とウラーさんが鋭い目で射抜く。
「お言葉ですがフレイヤ様……」
なんかちょっと怖い……。
彼は、矢継ぎ早にこう繰り出した。
「あのですね!?
もっちろん執事も給仕も軍人も、皆ハルオミ殿とお近づきになりたいなりたいなりたいと申しておりましたよ!? あれだけ側仕えを置かなかったフレイヤ様が出会ってすぐの少年を側仕えにしたという噂はすぐさま屋敷中に広がっておりました故、どのようなお方なのかと皆興味津々でした! しかしですね! ハルオミ殿が屋敷へ来て間もなくは貴方様直々に『何かあっては危ないから屋敷を出歩かせるな』と申しつけられておりましたし、出歩いても良いという許可をいただいてからも……誰がハルオミ殿に話しかけることなどできましょうか」
「なぜだい? 仲良くなりたいならまず会話を…」
「貴方が! 貴方が屋敷ですれ違う者全てに 、『ハルオミに何かあったら、分かってるね……?』という目で威圧していたからではないですか、皆気づいておりますよ!」
「私はそのような事……思ってはいたが口に出してはいない」
「ほぅら思ってたんじゃないですか! 貴方の圧倒的にコワイ視線を受けてハルオミ殿に気安く話しかけられる図太い人間がどこに居ましょうか!」
図太い……ね。
きっとウラーさんはフレイヤさんのどんな視線にも負けなそうだなあ。あ、決してウラーさんのことを図太いと思っているわけじゃないけれどね。
「成程。皆私に気を遣ってくれていたのか。すまないね」
フレイヤさんの素っ頓狂な返しに、ウラーさんは呆れて言葉も出ないと言った様子だ。そして僕はとても納得していた。
「屋敷の執事さんや軍人さん、僕を見てヒソヒソしていたのは話しかけようとしてくれてたからなんだね。でもフレイヤさんの顔がよぎって恐怖に負けた、と」
「そういうことでございます。さすがハルオミ殿は頭の回転がお早い」
「なら良かった、安心した。僕皆さんにあまり歓迎されていないのかと思っていたから」
「なっ!? ハルオミ、そんなことを考えていたのかい!? 本当にすまなかった、私の配慮が足りないばかりに……」
「もう解決したから、大大大だって!」
いつまでもグイグイと肩を掴んで、すまない、本当に考えが足りなかった、と謝り続けるフレイヤさんを頑張って諭す。
「とにかく料理はできないけど教えるのは自分でも勉強になるし、僕にできることならなんでもさせてくださいウラーさん」
「ありがとうございますハルオミ殿! 皆とても喜びます」
少しの間は自分では何も作れないけど、ひとまず今日のデザートだけでも完成させることができて良かった。だって今日は特別な日だもの……
「……って!そうじゃん!」
「どうしたハルオミ」
今思い出した。
この食事会の目的。
51
あなたにおすすめの小説
劣等アルファは最強王子から逃げられない
東
BL
リュシアン・ティレルはアルファだが、オメガのフェロモンに気持ち悪くなる欠陥品のアルファ。そのことを周囲に隠しながら生活しているため、異母弟のオメガであるライモントに手ひどい態度をとってしまい、世間からの評判は悪い。
ある日、気分の悪さに逃げ込んだ先で、ひとりの王子につかまる・・・という話です。
【完結】ここで会ったが、十年目。
N2O
BL
帝国の第二皇子×不思議な力を持つ一族の長の息子(治癒術特化)
我が道を突き進む攻めに、ぶん回される受けのはなし。
(追記5/14 : お互いぶん回してますね。)
Special thanks
illustration by おのつく 様
X(旧Twitter) @__oc_t
※ご都合主義です。あしからず。
※素人作品です。ゆっくりと、温かな目でご覧ください。
※◎は視点が変わります。
2度目の異世界移転。あの時の少年がいい歳になっていて殺気立って睨んでくるんだけど。
ありま氷炎
BL
高校一年の時、道路陥没の事故に巻き込まれ、三日間記憶がない。
異世界転移した記憶はあるんだけど、夢だと思っていた。
二年後、どうやら異世界転移してしまったらしい。
しかもこれは二度目で、あれは夢ではなかったようだった。
再会した少年はすっかりいい歳になっていて、殺気立って睨んでくるんだけど。
イケメンダブルセンターとアンチ>ファンな平凡な俺
ユッキー
BL
アイドルグループ【オーバーウェルミング】は圧倒的な歌唱力の深山影月、圧倒的なパフォーマンス力の漣陽太、そして圧倒的な平凡力な俺間桐真緒の3人で結成されている。
大人気の二人と違いアンチしかいない俺だが、メンバーからもファンからも愛される日が果たしてくるのか!?
拾った異世界の子どもがどタイプ男子に育つなんて聞いてない。
おまめ
BL
召喚に巻き込まれ異世界から来た少年、ハルを成り行きで引き取ることになった男、ソラ。立派に親代わりを務めようとしていたのに、一緒に暮らしていくうちに少年がどタイプ男子になっちゃって困ってます。
✻✻✻
2026/01/10 『1.出会い』を分割し、後半部分を『2.引き取ります。』として公開しました。
中年冒険者、年下美青年騎士に番認定されたことで全てを告白するはめになったこと
mayo
BL
王宮騎士(24)×Cランク冒険者(36)
低ランク冒険者であるカイは18年前この世界にやって来た異邦人だ。
諸々あって、現在は雑用専門冒険者として貧乏ながら穏やかな生活を送っている。
冒険者ランクがDからCにあがり、隣国の公女様が街にやってきた日、突然現れた美青年騎士に声をかけられて、攫われた。
その後、カイを〝番〟だと主張する美青年騎士のせいで今まで何をしていたのかを文官の前で語ることを強要される。
語らなければ罪に問われると言われ、カイは渋々語ることにしたのだった、生まれてから36年間の出来事を。
【完結】気が付いたらマッチョなblゲーの主人公になっていた件
白井のわ
BL
雄っぱいが大好きな俺は、気が付いたら大好きなblゲーの主人公になっていた。
最初から好感度MAXのマッチョな攻略対象達に迫られて正直心臓がもちそうもない。
いつも俺を第一に考えてくれる幼なじみ、優しいイケオジの先生、憧れの先輩、皆とのイチャイチャハーレムエンドを目指す俺の学園生活が今始まる。
過保護な父の歪んだ愛着。旅立ちを控えた俺の身体は、夜ごとに父の形で塗り潰される
中山(ほ)
BL
「パックの中、僕の形になっちゃったね」
夢か現か。耳元で囁かれる甘い声と、内側を執拗に掻き回す熱。翌朝、自室で目覚めたパックに、昨夜の記憶はない。ただ、疼くような下腹部の熱だけが残っていた。
相談しようと向かった相手こそが、自分を侵食している張本人だとも知らずに、パックは父の部屋の扉を開く。
このお話はムーンライトでも投稿してます〜
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる