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東の祓魔師と側仕えの少年
76.サプライズ
しおりを挟む朝、フレイヤさんをお見送りした後、僕は農園に向かった。建物の影に隠れて、パネースさんが水の妖精のように水やりをしているところを遠くからこっそり見る。
なんて声かけようかな。
おめでとう? でも、なんで知ってるのってなるよね。んー、いつも通りに話しかける? なんか緊張するなあ……
「何やってんだハルオミ」
「ヒェッ」
耳元で突然名前を呼ばれたものだからびっくりして変な声が出てしまった。
「イザベラ…驚かせないでよ」
「そんなところでコソコソしてるからだろ。何見てん……パネースじゃん。そうだちょうどいい、ハルオミは知らないだろうから俺が教えてやろう。パネースさ、ニエルド様と祝言挙げるんだってよ!」
「え、イザベラも知ってたの!?」
「なんだハルオミも知ってたのかよ。フレイヤ様、こういうことはちゃんと報告するんだな」
「聞いて良かったのかどうかは分からないけどね…イザベラはビェラ様に教えてもらったの?」
「ああ、本当は黙ってるつもりらしかったんだけど、帰ってきてからウズウズしてめちゃくちゃ様子が変だったから、問いただしたら吐いた」
ああ…、ビェラ様って隠し事下手そうだもんな…
「ハルオミも知ってるなら話が早い。ちょっとこれ持て」
「ん?」
これ、と渡されたのはよくパーティとかで使われるようなクラッカー。この世界にも同じようなのがあるんだ。
「パネースをびっくりさせてやるんだ。こういうの、サプライズって言うんだろ?」
にやりと笑って楽しそうに言うイザベラ。
ふだんつっけんどんな性格だけど、彼はとても友達思いだ。僕はクラッカーを受け取った。
「そうだね、盛大にお祝いしなくちゃ!」
「よし、それじゃ、1、2の3で行くからな!」
「応!」
そろり、と身を隠して息を潜める。
「んじゃ、いくぞ。1、2の…」
「何やってるんですか2人とも」
「「うわぁ!」」
——パァァァンン!!
「ひぇ!? わぁっ!」
パネースさんのところへ飛び出そうとしたらこちらに気付いた彼が話しかけてきて、僕とイザベラはびっくりして手元のクラッカーを鳴らしてしまい、どすん、と3人一斉に尻餅をついた。
クラッカーの中身がひらひらと舞って僕たち3人に降り注ぐ。
少しの間、皆驚いて声が出なかった。
「………ぷっ、」
「ふ、ふはははっ」
「なん、なんですかこれっ、はははっ、もうびっくりするじゃないですか」
3人して転けてしまったのが面白くて、僕たちは子供のようにきっきゃっきゃと笑いが止まらない。
「あー面白っ、パネース、『ひぇっ!』って…あっははは」
「ふふっ、はははっ、だってしょうがないじゃないですかっ、いきなりびっくりしますって」
「もうっ、ふふふっ、クラッカーの威力すごいから、びっくりするじゃんイザベラ!」
「ハルオミも鳴らしてただろ!」
尻餅をついてクラッカーの中身を被ったまま、しばらく笑いが止まらなかった。
ひとしきり笑ったところで、パネースさんが、「それで、何をしようとしてたんですか?」と聞いてきた。
そうだった、今日のメインはそれだった!
イザベラと目を見合わせ、どちらからともなく小さな声で「せーの」と息を合わせる。
「「パネース(さん)、おめでとう!!」」
ぱちぱちぱち、と盛大な拍手を贈る僕たちを見て一瞬きょとん、としたがすぐに笑顔になって、
「なんですか、もうお2人の耳にも届いていたのですね?」
と可笑しそうに言った。
「フレイヤさんが教えてくれたの」
「ビェラさんも、隠そうとは思ったみたいだけどウズウズそわそわしてて怪しすぎたから問いただしたら『ニエルド兄さんが祝言をあげるんだって』って」
「そうだったのですね。お2人に何と切り出そうかと緊張していましたが、その必要は無かったみたいですね」
「パネースさん、緊張してたの?」
「もちろんですよ! いつかこの日が来ることは分かってはいましたが、いざニエルドさんに『正式に伴侶になってくれ』と言われると感慨深いものがありまして。昨日からずっと気持ちが浮ついたり緊張したり落ち着かなかったのですが……イザベラとハルオミ君のおかげで一気に緊張が解けました。こんなに盛大にお祝いしてくださるとは」
ふふふっ、と、頭に乗ったクラッカーの紙片をとり微笑む。
「本当におめでとうパネースさん。僕も自分のことのように幸せで幸せで、なんか、なんて言ったらいいか分からないけどとにかくおめでとう!」
「俺もなんかこう…気持ちがぐゎっ!ってなって、どうやっておめでとうって伝えればいいか分かんなかったからさ、とりあえず盛大にしといた!」
「イザベラの魔力はよく弾けますから、お2人の気持ちとても伝わりましたよ。ありがとうございます。さて………片付けましょうか」
「だな」
「そうだね」
立ち上がって、クラッカーから出た紙片やキラキラした飾りをイザベラが魔力で浮き上がらせ、一箇所にまとめる。取りきれなかった細かい飾りは僕も手作業で拾って手伝った。
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