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東の祓魔師と側仕えの少年
77.弾ける魔法
しおりを挟むそして僕はこのクラッカーの威力の原因であろうイザベラに、気になっていた点を質問した。
「それにしてもイザベラの魔力、"弾ける"の?」
「ああ、俺の魔力は発破の性質があるんだ。爆弾作るのも得意だぞ。ハルオミも吹き飛ばしたいヤツがいたら俺がすげーの作ってやるからな」
にへへ、と無邪気な悪戯っ子の顔でとんでもなく物騒なことを言うイザベラ。
「爆弾…は、欲しくなったらお願いするね…」
「おうよ」
こんな可愛くてキュートな金髪の少年の特技がまさか爆弾製造だとは誰も思わないだろう。
「んでパネース、祝言はいつ挙げるんだよ?」
「そうそう、それ気になってたの! この世界の祝言がどんなものかも興味あるし」
「祝言は3週間後、このお屋敷で挙げるそうです」
「ここで? 宮殿じゃないんだ」
「宮殿!?」
宮殿って、王様とか偉い人が住んでるところ……?
なぜそんなところが候補に上がるのだろうかと混乱していると、イザベラがとんでもないことを言い出した。
「魔祓い師の当主の祝言は、だいたい宮殿で挙げられるのがこの国じゃ一般的だからな」
「……へぇ」
確かに、この世界で魔祓い師って言ったら、それはもうとんでもなくすごい英雄なんだもんね。しかも由緒正しくて歴史のある…。今まで彼らと一緒にいるのが当たり前すぎて、世間の常識を忘れていた。
「ニエルドさん、私がそういう場所が苦手だって気を遣ってくれたみたいです。でも来賓はたくさんいらっしゃるから、やっぱり身構えてしまいますね」
「まあ宮殿でやるよりは気楽だろ。いや~楽しみだなパネースの晴れ姿」
「うんうん、パネースさん、どんな服着るの? ていうか3週間後ってなかなか直近だね。準備は大丈夫なの?」
「実はもうニエルドさんがほとんど手配していたようで、明日にでも挙げられるそうなんです。ほんとに、フレイヤ様に『報告はしっかり』なんて言いながら、ご自分も相当なものですよ」
「ふふっ、きっとパネースさんを驚かせたかったんじゃない?」
「だとしたら大成功ですね、まったく」
腕を組んで頬を膨らませながらも、なんだかんだ幸せそうなパネースさん。
「祝言って具体的にはどんなことするの? フレイヤさんに聞いても『挙げたことないから分からない』って言われちゃった」
「フレイヤ様らしいですね。何をすると言っても、ニエルドさんと私でお世話になった皆様や各地の当主様方にご挨拶をして、後は交流会のようなものですね。集まった方達で雑多にお話ししてもらうんです。普段はお忙しくて集まれない方達がいらっしゃいますから、貴重な交流の場となるみたいですよ」
「へぇー」
「ハルオミの世界ではどんな祝言挙げんだ?」
「ん~僕自身は参加したことないけど、新郎新婦入場!とか、誓いますか?ってやつとか、あとは豪華な食事を食べたり、あ、あとウェディングケーキ入刀!」
「「ウェディングケーキ?」」
なけなしの知識で結婚式の説明をすると、彼らは興味津々に聞いてきた。
「なんですかそのとても美味しそうな響きは……!」
「けーきって言ったら、ハルオミが寝てる時にパネースと食ったやつか? なんかふわふわしゅわしゅわした感じの」
「それはスポンジケーキって言って、またちょっと違う感じかな。ウェディングケーキも明確なレシピや決まりがあるわけでは無いんだけど、とにかくおっきい! おっきいケーキを切り分けて、参加した人みんなで同じものを食べるんだ」
「それはとっても楽しそうですね…! なんだか特別な感じがします」
どのような「ウェディングケーキ」を想像しているのか分からないけど、うっとりと空想にふけるその笑顔に僕は心が掴まれるような感じがした。
「ねえ、祝言の時の料理は誰が作るの?」
「お屋敷の料理人さんが担当してくださいます。昨日もお会いした方達ですよ」
「みんなハルオミの世界の料理に興味津々だったし、もしかして祝言で『ぽてとさらだ』が出るんじゃねーか?」
はははっ、と楽しげに笑うイザベラに、パネースさんも同意した。
「昨日のあのクリーミーでホクホクした野菜やお肉の入ったサラダですか? あれは皆さんに食べてもらいたいですね~、きっとビックリしますよ!」
「なあ、料理人たちに頼んでみようぜ?」
なんだか話が進んでる。
でもあの料理人さん達なら何でも上手に調理してくれるだろうし、それに各地から人が集まる場に僕の世界の料理が並ぶなんて、なんだか夢のようだ。
「でも良いのでしょうか……ニエルドさんが色々と準備をしてくださってると伺ったので」
「ニエルド様の中に、パネースの要望を叶えないっつー選択肢があると思うか? 絶対無ぇだろ!」
「そうは言っても……」
「じゃあさ! 僕が料理人さん達に聞いてみるよ。今日も魔力の訓練の後、アップルパイの作り方を教えてあげるって約束してるんだ。その時にそれとな~く上手いこと聞いてみる」
「本当ですかハルオミ君」
「うん、任せて」
「おぉ、頼もしいなハルオミ!」
「へへへ。パネースさんの晴れ姿、楽しみだなぁ~」
ウェディングドレスとか着るのだろうか。
でも聞いた感じは僕の知ってる結婚式よりもラフな感じ(来賓の方達はえげつない方達だけど)だから、格好もラフな感じなのかな。新郎新婦入場とか誓いのキスとか余興のカラオケみたいなのは無さそうだし。
なんだかワクワクしてきちゃった。
幸せのお裾分けをしてもらったからには、魔力抑制の訓練頑張らないと!
僕は一層気合が入り、人知れず拳を握りしめた。
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