136 / 176
続編その②〜魔力練習編〜
7.アイドル
しおりを挟む食後にのんびりしていると軍医の先生が来て、フレイヤさんを診察してくださった。
光で体をスキャンして体調を見るあの魔法、僕もやってみたいなー、なんて、妄想を膨らます。
「先生、どうですか……?」
「何事でしょう……こんな短時間でここまで回復するとは思いませんでした。フレイヤ様、今現在お辛いところは?」
「少し倦怠感はありますが、頭痛や咳はおさまりました」
「なんと。初めに診察した時は療養も長くなると想定しておったのですが、いやはや驚きました。さすが全国屈指の魔祓い師様」
「いいえ、ハルオミのおかげです」
「ハルオミ殿の……?」
不思議そうに僕を見る先生に、フレイヤさんがこう説明した。
「ハルオミの魔力には、自然治癒力を高める性質があるんです」
「おぉぉ! 聞いたことがございます。以前ハルオミ殿の料理を口にした隊員のぎっくり腰が瞬時に治癒し庭を駆け回っておったと!」
懐かしい……そんな微笑ましいこともあったな。
「しかし、あの時はハルオミ殿にかかる負担が大きく、今後この能力は使わないと風の噂で伺ったのですが」
「皆さんが魔力のコントロールや魔法の使い方を教えてくれて、少しなら使っても大丈夫になったんです。そうだ! 先生、僕の体もその光で診れますか……? フレイヤさんにいくら大丈夫って言っても、ずっと心配するんです」
「当たり前だろう。君を信頼しているとはいえ、心配になるのは当然のことだ」
「フレイヤ様の御心労もよく分かります。愛するお方が頑張っておられるお姿には心打たれるものもあり、けれどやはり心配のお気持ちは拭えないのでしょう。そうしましたらハルオミ殿。体をこちらに向けてくだされ」
「はい! よろしくお願いいたします」
先生に向き合い、言われた通りに目を閉じる。
すると、ぽゎっと目の前に光らしきものがちらつき、体が暖かくなった。
おぉ……スキャンされてる。
コピー機に挟まった印刷物は毎回こんな気持ちなのかな。
一、二分大人しくしていれば、「よろしいでしょう」という先生の声が聞こえて目を開ける。
「先生、ハルオミはどうでしょうか」
先ほどと逆の立場になってフレイヤさんが聞いた。先生は、ほっほっほ、と目を細めながら
「まるで健康体です。フレイヤ様、ご心配には及びませんよ」
「本当か? それはよかった…」
「ほら! 言ったでしょ? 」
「しかしハルオミ殿、無理は厳禁ですぞ?」
ピシッと人差し指を立てて僕に注意を促す先生を見て、フレイヤさんが言った。
「ほら、言っただろう?」
そらみたことか、みたいな顔で見てくるのが悔しいけど可愛い……。
先生はこう続けた。
「 私はこれまで二百年間生きてきて、料理に治癒力が宿るなんぞ聞いたことがございません。あなた様に無理がたたってお倒れにでもなったら屋敷中が、いえ……国中がパニックでございます」
「く、国中? なんと大袈裟な。というか……先生二百歳だったんですか。とっても若々しいですね」
「光栄です。しかし大袈裟ではございませんよ。今やハルオミ殿は国中の、えー、あれはなんと言いましたかの………あ…あい……そう! "アイドル" なのでございます。皆あなた様をお慕いしているのですから、お身体はお大事になさってくだされ」
「あいどる? へ?」
先生が二百歳だということにじわじわ驚いている最中だったのに、突然のアイドルを投下されて頭の中がこんがらがる。
「なんで? アイドル?」
「それでは夜のお薬も忘れずに。また明日の朝に伺いますので、くれぐれもご無理はなさらず」
首をころころ傾げていれば、先生は何事もなかったかのように注意事項だけを残して去ろうとする。フレイヤさんも涼しい顔でお礼を言う。
「ありがとうございます」
結局僕の"アイドル"を消化しきらないうちに先生は去ってしまった。
35
あなたにおすすめの小説
【完結】ここで会ったが、十年目。
N2O
BL
帝国の第二皇子×不思議な力を持つ一族の長の息子(治癒術特化)
我が道を突き進む攻めに、ぶん回される受けのはなし。
(追記5/14 : お互いぶん回してますね。)
Special thanks
illustration by おのつく 様
X(旧Twitter) @__oc_t
※ご都合主義です。あしからず。
※素人作品です。ゆっくりと、温かな目でご覧ください。
※◎は視点が変わります。
2度目の異世界移転。あの時の少年がいい歳になっていて殺気立って睨んでくるんだけど。
ありま氷炎
BL
高校一年の時、道路陥没の事故に巻き込まれ、三日間記憶がない。
異世界転移した記憶はあるんだけど、夢だと思っていた。
二年後、どうやら異世界転移してしまったらしい。
しかもこれは二度目で、あれは夢ではなかったようだった。
再会した少年はすっかりいい歳になっていて、殺気立って睨んでくるんだけど。
劣等アルファは最強王子から逃げられない
東
BL
リュシアン・ティレルはアルファだが、オメガのフェロモンに気持ち悪くなる欠陥品のアルファ。そのことを周囲に隠しながら生活しているため、異母弟のオメガであるライモントに手ひどい態度をとってしまい、世間からの評判は悪い。
ある日、気分の悪さに逃げ込んだ先で、ひとりの王子につかまる・・・という話です。
拾った異世界の子どもがどタイプ男子に育つなんて聞いてない。
おまめ
BL
召喚に巻き込まれ異世界から来た少年、ハルを成り行きで引き取ることになった男、ソラ。立派に親代わりを務めようとしていたのに、一緒に暮らしていくうちに少年がどタイプ男子になっちゃって困ってます。
✻✻✻
2026/01/10 『1.出会い』を分割し、後半部分を『2.引き取ります。』として公開しました。
イケメンダブルセンターとアンチ>ファンな平凡な俺
ユッキー
BL
アイドルグループ【オーバーウェルミング】は圧倒的な歌唱力の深山影月、圧倒的なパフォーマンス力の漣陽太、そして圧倒的な平凡力な俺間桐真緒の3人で結成されている。
大人気の二人と違いアンチしかいない俺だが、メンバーからもファンからも愛される日が果たしてくるのか!?
【完結】気が付いたらマッチョなblゲーの主人公になっていた件
白井のわ
BL
雄っぱいが大好きな俺は、気が付いたら大好きなblゲーの主人公になっていた。
最初から好感度MAXのマッチョな攻略対象達に迫られて正直心臓がもちそうもない。
いつも俺を第一に考えてくれる幼なじみ、優しいイケオジの先生、憧れの先輩、皆とのイチャイチャハーレムエンドを目指す俺の学園生活が今始まる。
中年冒険者、年下美青年騎士に番認定されたことで全てを告白するはめになったこと
mayo
BL
王宮騎士(24)×Cランク冒険者(36)
低ランク冒険者であるカイは18年前この世界にやって来た異邦人だ。
諸々あって、現在は雑用専門冒険者として貧乏ながら穏やかな生活を送っている。
冒険者ランクがDからCにあがり、隣国の公女様が街にやってきた日、突然現れた美青年騎士に声をかけられて、攫われた。
その後、カイを〝番〟だと主張する美青年騎士のせいで今まで何をしていたのかを文官の前で語ることを強要される。
語らなければ罪に問われると言われ、カイは渋々語ることにしたのだった、生まれてから36年間の出来事を。
過保護な父の歪んだ愛着。旅立ちを控えた俺の身体は、夜ごとに父の形で塗り潰される
中山(ほ)
BL
「パックの中、僕の形になっちゃったね」
夢か現か。耳元で囁かれる甘い声と、内側を執拗に掻き回す熱。翌朝、自室で目覚めたパックに、昨夜の記憶はない。ただ、疼くような下腹部の熱だけが残っていた。
相談しようと向かった相手こそが、自分を侵食している張本人だとも知らずに、パックは父の部屋の扉を開く。
このお話はムーンライトでも投稿してます〜
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる