【完結】眠れぬ異界の少年、祓魔師の愛に微睡む

丑三とき

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続編その②〜魔力練習編〜

8.密着

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先生が帰った後、フレイヤさんに布団をかけ一件落着するが、僕はまだ腑に落ちなかった。

「……アイドルって、なんだ」

しかしフレイヤさんに聞いても何も情報が得られないことは分かりきっているので、後日ミーハーなパネースさんとイザベラに聞くことにしよう。

台所で洗い物を終えてから横になるフレイヤさんの元へ戻り、僕も彼の隣に体を滑り込ませた。

「へへへっ、ずっとフレイヤさんが入ってるから、お布団あったかいね」

「ハルオミ、そんなにくっ付いては風邪が移ってしまう」

「大丈夫だよ。それに、今日ずっとくっついてたんだから今更離れたってなにも変わらないよ。んー、フレイヤさん、まだちょっと体温高いね」

きめの細かいおでこは、いつもよりまだ少しあたたかい。

「ハルオミの皮膚は冷たくて気持ちがいい」

猫のように目を細めて僕の手に顔を擦り付けるフレイヤさんはもちろん可愛くて、再び母性爆発。

「ほんと?じゃあもっといろんなとこ触ってあげる。おでこと、あと、首も冷やすといいんだって。どう?  気持ちいい?」

「ああ。ひんやりとしてとても心地いいよ」

「手も握ってあげましょう」

ぎゅっとフレイヤさんの手を握り、反対の手で頭を撫でる。

「まだ倦怠感が少しあるって言ってたね。今日一日中ゆっくりしてたらきっと良くなるから、お昼寝もしっかりしようね」

「君が寝かしつけてくれるのかい?」

「もちろん!  ふふっ、今日のフレイヤさんは甘えん坊だね」

「せっかくハルオミが世話を焼いてくれているんだ。甘えておかないと勿体無いだろう?」

お茶目なトーンで囁く彼に、ぴと、と体をくっつけてみた。

「別に風邪ひいてなくても、いつも甘えていいんだよ? ほら、寂しくないようにしっかり抱きしめててあげる」

図体の大きなフレイヤさんに一生懸命腕を回して力の限り抱きつく。

「そうだ、腕枕もしてあげようか?」

「大変嬉しい申し出だが、君の腕が折れてしまいそうなので遠慮しておくよ」

「べつに折れないのにー」

いつもしてもらっていることをしたいのだけど、やっぱり彼のようになんでも完璧にかっこよくこなすのは無理だった。

他に何ができるかな、と考えながらほんのり熱い体を抱きしめる。……んー、いい匂いがする。

こんなに長い時間フレイヤさんとベッドの中でゴロゴロするの、番った後に僕が弱ってしまったあの時以来かもしれない。

この匂い、やっぱり眠くなっちゃうな。
眠くなっちゃうし、ドキドキもしちゃう。

「………フレイヤさん」

「ん?  どうした?  ハルオミ」

「あのさ、キスしちゃダメ?」

どうしてもフレイヤさんと密に触れ合いたくなって甘えてみた。が、結果は想像通りで

「風邪がうってしまうから今日は我慢だ」

「………む」

「そんなにむくれたって、ダメなものはダメだ」

「だって。可愛いフレイヤさんみてたらキスしたくなっちゃったんだもん」

「そういう目で見つめられると私も我慢ができなくなるから、勘弁しておくれ」

「我慢できなくなっちゃえばいいのに」

「君に風邪を移すわけにはいかない」

「もうこんなにくっ付いてるんだから何したって同じだよ」

フレイヤさんに縋り付くように乞う。頼りになるところを見せたかったのに、これじゃ一転、駄々っ子だ。

いけないいけない、と思い直し、心を落ち着かせるために銀色の髪の毛をひと撫でして別の提案をした。

「じゃあ、フレイヤさんの首に、印つけてもいい?」

僕はいつぞやの"全身キスマーク事件"以来、フレイヤさんの肌に赤い点を落とすのが得意になっている。僕のもであることを刻む行為にとてつもない充実感を感じるのだ。

「そうだね……うん、ひとつならいいよ」

「やった」

「たくさんつけられたらが外れてしまいそうだから……」

「ん?  何か言った?」

「いいや、なんでもないよ」

渋々と言った感じに許してくれたフレイヤさんのシャツのボタンを二つほど外し、鎖骨を曝け出す。

「あ、一昨日つけたのが薄くなってる」

消えかけた場所を指でちょんちょんとなぞる。上書きしなきゃ。
銀色の髪を払い、口付けをしてちゅ、と吸い込む。

綺麗な肌に赤い花が咲けば、たまらない気持ちになるのだ。

「えへへへ、ついた」

「…………」

フレイヤさんはギリギリ見えない鎖骨の下あたりをすりすりさすってから、僕をじっと見つめてきた。

「ん?  どしたの?」

——ガッ!

「うわわわ」

「まったく、なんということだ。もう限界だ。なるべく密着しないよう気を付けていた私の身にもなってくれ。こんなに煽って……罰として今日は抱き枕になってもらおう」

「え?  フレイヤさんの抱き枕?  わーい、なるなる!」

——ぎゅ

お互いの体をきつく抱きしめ合う。
僕が彼をなけなしの力で抱き寄せるのと比べ物にならないくらい、より体が密着している。

フレイヤさんと居る時の気持ちは難しい。
ただ隣に居てくれているだけで満足だけど、それとは逆にどれだけくっ付いていても物足りないという矛盾の気持ちが連続する。

でも結局は存在を感じられるだけで幸せなんだ。

この日は一日中ひっつきもっつきで過ごして、翌日フレイヤさんは見事に全快した。

代わりに僕が風邪を引いたのは言うまでもない。


◆◆◆


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