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異世界転移
12 お使い任務
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お使いを頼まれ、市場に訪れた二人。来たはいいもののあまりの人の多さと人々の熱気に気圧されていた。
「す、すご」
「僕らの声が書き消されそうだな」
篠野部の言うとおり、少しばかり声が聞こえにくい。
「これさ、商店街より人いない?市場っていうよりはスクランブル交差点じゃない?」
「こんなに人がいたことに驚きだ」
「いやあ、でも老人が多いね。若い人はだいぶん少ないわ」
確かにイルゼは若い者は王都に流れていくと行った。自らの目で見て改めて感じたがこの町は過疎化している、いや人の数事態は多いがその大半が老人なのだ。
そりゃ若い人がフリーなら欲しいとお思うだろう。
「これは、僕らが雇われるのもおかしくないな」
「何でも屋すれば結構儲かるのでは?」
「……一考の余地あり、だな」
気を取り直して買ってくるものが書かれているメモを取り出す。量はさほど無いがなにぶん人が多いし一度も来たことの無い場所なので苦戦するのが目に見えていた。
「ええっと、牛かた、ニンニク、玉ねぎ、粒コショウ、ジャガイモ。んー、ローストビーフかな?」
「店の指定は?」
「ある、えっと、ここからわかるところ……ハーブ売ってるあそこだね。行こう」
「ああ」
人が行き交うなかなんとか合間を縫って進む。時々ぶつかりそうになりながら、なんとかたどりつけた。
「森の方がましだったのでは?」
「あそこはまた別だろ」
「それもそっか。さてと、粒コショウ……黒、白、グリーン、ピンク。ピンク?」
「ピンクのコショウ?」
緑のコショウがあるのも驚いたが、よくよく考えればコショウだって植物。緑色のコショウがあってもおかしくない。いやでもピンクのコショウってなに。
料理をしたことが一度もない篠野部と、もっぱら一般的な家庭料理しか作ってこなかった永華にはピンクペッパーなど未知の存在だった。
「ええ……あ、これか。赤じゃん」
「ピンクペッパー、赤じゃないか」
ピンクペッパー、実は赤い。
「緑の信号を青っていうのと同じかな?」
「ああ、確かにわりとあるな。こう言う手の名前は」
「なんかあったっけ?」
「鶏肉をかしわとか、これは違うか?」
「あったな、そんなの」
各コショウの定義についてだが
黒は実が熟する前のものを収穫して乾燥させたもの
白は実が熟したものを収穫して皮を除き、乾燥させたもの
緑は実が熟する前に収穫した後に塩漬けやフリーズドライ加工をしたもの
ピンクはウルシ科などの植物の実を乾燥させらもの
である。
ちなみにピンクペッパーはスパイシーではあるがそこまで辛くはない。
以上、ハーブ屋のポップから引用。
「はへ~」
「ピンクはウルシ科?コショウじゃないのか」
「ウルシってかぶれるやつだよね?」
「ああ、漆塗りとかが有名だな」
「茶碗のやつか。食べれたんだ」
さて、ちょっとした豆知識と目当ての四種類のコショウをゲットし、次なる目的地に向かう。
次に目指すのは肉屋だ。また人と人の間を縫ってなんとかたどりつく、さっそく店員に声をかける。
「えー。牛かた、これに書いてある通りにお願いします」
「はいよ」
どうも、ここは計り売りらしい。今まで見たこともないような肉の固まりに自然と目が行った。
「あれ丸々だといくらするんだろ」
「確実に僕らの給料は全部溶けるだろうな」
「やっぱり?」
切り落とされた肉を篠野部が受け取り、永華が代金を払い店をあとにする。
「あ、今度は角はえてる人がいる。山羊か羊辺りかな?」
「角の感じ的に山羊じゃないのか?」
「あれ?尻尾無くない?」
「山羊の尻尾は短い。単に服に隠れて見えないだけだろ」
「ああ、そういう」
お次は野菜を買いに行く、いわば八百屋だ。ここで玉ねぎ、ニンニク、ジャガイモを買えばお使いは終わりだ。
またまた人と人の間を進んでいく。
「……八百屋どこだ?」
「……」
八百屋を目指していた、そのはずなのに全く見つからない。篠野部は地図を見つめたまま動かない、恐らく篠野部もここがどこなのかわかっていないのだ。
八百屋を目指し歩いていたのだがいきなり人の流れが代わり、一方に流れる人並みに押されここまで来たしまったのだ。今はなんとか流れから抜け出し路地で休んでいるところだった。
ここはどこなのか、そうこぼれた言葉は回りの声にかき消されてしまう。
予想はしていた事態だが、実際に起こると頭を抱えてしまう。この年とで迷子とは、いや始めての地なのだから仕方ないと叱責してくる自分に言い訳する。
「どうしよう、とりあえずまっすぐ進んでみる?」
「悪化しそう、却下」
「はい」
提案した案は高速で却下された。致し方なし。
隣から地図を覗き込む。さっきまでいた市場の辺りを見て、回りを見渡す。何か現在地がわかるものはないか……。
「はぁ、まさか人混みに流されて迷うとは……」
「はぐれなかっただけましって考えようよ。それよりあの勢いはなんだったんだか」
「聞こえていた言葉から察するに団体の旅行だろ」
「ええ、なんか観光地あるのかな」
「さあ?地図を見てる限りそうなりえそうなのは協会ぐらいか」
協会が観光地になるのか?というかあの人数は社員旅行の数だろう。そんな大所帯で何しに来たんだか。
「細かいものが書いてないのが痛手だな」
「そこら辺は見て覚えろ、でしょ。いちいち書いてちゃ地図が真っ黒になる。やっぱわかんない?」
「ああ、どうしたものか」
「……あ、あの看板は?」
目には行ったとても目立つクリスマスカラーの看板を指差した。
「なんだあれ」
「……いや、目立ってたからさ」
何を思ってあの看板にしたんだろうか。人のことをいえる程のセンスはない、けれどあれは流石にセンスを疑う。あのカラーが許されるのはクリスマス関係くらいだろうし、仮に例外があったとしてもあれはない。絶妙にダサいしハチャメチャに目立ってる。
「集客目的か?」
「すんごい目立ってるから効果はありそう」
「目印にはなりそうだが……書いてないな」
やっぱり無いか。そう落胆していると篠野部が手を顎に当てて考え出した、その姿が様になっているのだから顔のいい人って凄い。
なんか探偵味あるな。
「仕方ない」
「……待って、嫌な予感がする」
「戌井はここで留守番、僕は人にどの辺りか聞いてくる」
「いや、マジ?置いてかれるの、私?」
「ああ、今度こそはぐれたら面倒だ。持ってろ」
まさかの未開の地で一人ぼっちになれといわれた。いや篠野部の言い分はわかる、わかるけど流石に一人は怖いぞ。
「未開の地で一人置いてく気か」
「仕方ないだろ。今度こそ一人迷子になりたのか?」
「うぐっ、なりたかないけどさあ……」
「まあ、君の反応も妥当だろう。なるべく早く戻ってくるからまっててくれ」
どうしよう、一人は嫌だけどはぐれたら本末転倒だよねえ。
頭のなかで葛藤する。はぐれるかもしれないが安心をとるか、少しの不安を飲み込んで確実な方をとるか。
葛藤の末、大きなため息を吐き出す。
「はあ、なるべく早くね」
「わかっている。何かあれば荷物は放り出して逃げるんだ」
「そうするよ。なにもないのが一番なんだけどな」
「ジグザグに逃げるんだ。物を投げるのも有効だからな、大声もありだ。どこかしらの店に入るもよし」
「あー。わかった、わかった」
ほぼほぼ無いと思っていたのに迷子になってる時点でなにか起きる気しかし無いけれども。
「動くなよ」
「はいはい、いってら~」
適当な挨拶で見送る。さて、夕食までにかえれるといいんだけれど。
ふと、ある一つの考えが頭をよぎった。
「もしかして幼児と思われてる?信用はされてない気がするけど……」
対応が完全に……いや、待てよ?
「なんであんなに逃げ方のアドバイスを?」
まるで慣れてるみたいじゃないか。ん?慣れてる?あ、そういえば中学のときストーカー騒ぎと不審者騒ぎがあったような……。
……うん。
「これ以上ダメだ。深淵だ、やめやめ。はあ……夕飯なにかな」
「す、すご」
「僕らの声が書き消されそうだな」
篠野部の言うとおり、少しばかり声が聞こえにくい。
「これさ、商店街より人いない?市場っていうよりはスクランブル交差点じゃない?」
「こんなに人がいたことに驚きだ」
「いやあ、でも老人が多いね。若い人はだいぶん少ないわ」
確かにイルゼは若い者は王都に流れていくと行った。自らの目で見て改めて感じたがこの町は過疎化している、いや人の数事態は多いがその大半が老人なのだ。
そりゃ若い人がフリーなら欲しいとお思うだろう。
「これは、僕らが雇われるのもおかしくないな」
「何でも屋すれば結構儲かるのでは?」
「……一考の余地あり、だな」
気を取り直して買ってくるものが書かれているメモを取り出す。量はさほど無いがなにぶん人が多いし一度も来たことの無い場所なので苦戦するのが目に見えていた。
「ええっと、牛かた、ニンニク、玉ねぎ、粒コショウ、ジャガイモ。んー、ローストビーフかな?」
「店の指定は?」
「ある、えっと、ここからわかるところ……ハーブ売ってるあそこだね。行こう」
「ああ」
人が行き交うなかなんとか合間を縫って進む。時々ぶつかりそうになりながら、なんとかたどりつけた。
「森の方がましだったのでは?」
「あそこはまた別だろ」
「それもそっか。さてと、粒コショウ……黒、白、グリーン、ピンク。ピンク?」
「ピンクのコショウ?」
緑のコショウがあるのも驚いたが、よくよく考えればコショウだって植物。緑色のコショウがあってもおかしくない。いやでもピンクのコショウってなに。
料理をしたことが一度もない篠野部と、もっぱら一般的な家庭料理しか作ってこなかった永華にはピンクペッパーなど未知の存在だった。
「ええ……あ、これか。赤じゃん」
「ピンクペッパー、赤じゃないか」
ピンクペッパー、実は赤い。
「緑の信号を青っていうのと同じかな?」
「ああ、確かにわりとあるな。こう言う手の名前は」
「なんかあったっけ?」
「鶏肉をかしわとか、これは違うか?」
「あったな、そんなの」
各コショウの定義についてだが
黒は実が熟する前のものを収穫して乾燥させたもの
白は実が熟したものを収穫して皮を除き、乾燥させたもの
緑は実が熟する前に収穫した後に塩漬けやフリーズドライ加工をしたもの
ピンクはウルシ科などの植物の実を乾燥させらもの
である。
ちなみにピンクペッパーはスパイシーではあるがそこまで辛くはない。
以上、ハーブ屋のポップから引用。
「はへ~」
「ピンクはウルシ科?コショウじゃないのか」
「ウルシってかぶれるやつだよね?」
「ああ、漆塗りとかが有名だな」
「茶碗のやつか。食べれたんだ」
さて、ちょっとした豆知識と目当ての四種類のコショウをゲットし、次なる目的地に向かう。
次に目指すのは肉屋だ。また人と人の間を縫ってなんとかたどりつく、さっそく店員に声をかける。
「えー。牛かた、これに書いてある通りにお願いします」
「はいよ」
どうも、ここは計り売りらしい。今まで見たこともないような肉の固まりに自然と目が行った。
「あれ丸々だといくらするんだろ」
「確実に僕らの給料は全部溶けるだろうな」
「やっぱり?」
切り落とされた肉を篠野部が受け取り、永華が代金を払い店をあとにする。
「あ、今度は角はえてる人がいる。山羊か羊辺りかな?」
「角の感じ的に山羊じゃないのか?」
「あれ?尻尾無くない?」
「山羊の尻尾は短い。単に服に隠れて見えないだけだろ」
「ああ、そういう」
お次は野菜を買いに行く、いわば八百屋だ。ここで玉ねぎ、ニンニク、ジャガイモを買えばお使いは終わりだ。
またまた人と人の間を進んでいく。
「……八百屋どこだ?」
「……」
八百屋を目指していた、そのはずなのに全く見つからない。篠野部は地図を見つめたまま動かない、恐らく篠野部もここがどこなのかわかっていないのだ。
八百屋を目指し歩いていたのだがいきなり人の流れが代わり、一方に流れる人並みに押されここまで来たしまったのだ。今はなんとか流れから抜け出し路地で休んでいるところだった。
ここはどこなのか、そうこぼれた言葉は回りの声にかき消されてしまう。
予想はしていた事態だが、実際に起こると頭を抱えてしまう。この年とで迷子とは、いや始めての地なのだから仕方ないと叱責してくる自分に言い訳する。
「どうしよう、とりあえずまっすぐ進んでみる?」
「悪化しそう、却下」
「はい」
提案した案は高速で却下された。致し方なし。
隣から地図を覗き込む。さっきまでいた市場の辺りを見て、回りを見渡す。何か現在地がわかるものはないか……。
「はぁ、まさか人混みに流されて迷うとは……」
「はぐれなかっただけましって考えようよ。それよりあの勢いはなんだったんだか」
「聞こえていた言葉から察するに団体の旅行だろ」
「ええ、なんか観光地あるのかな」
「さあ?地図を見てる限りそうなりえそうなのは協会ぐらいか」
協会が観光地になるのか?というかあの人数は社員旅行の数だろう。そんな大所帯で何しに来たんだか。
「細かいものが書いてないのが痛手だな」
「そこら辺は見て覚えろ、でしょ。いちいち書いてちゃ地図が真っ黒になる。やっぱわかんない?」
「ああ、どうしたものか」
「……あ、あの看板は?」
目には行ったとても目立つクリスマスカラーの看板を指差した。
「なんだあれ」
「……いや、目立ってたからさ」
何を思ってあの看板にしたんだろうか。人のことをいえる程のセンスはない、けれどあれは流石にセンスを疑う。あのカラーが許されるのはクリスマス関係くらいだろうし、仮に例外があったとしてもあれはない。絶妙にダサいしハチャメチャに目立ってる。
「集客目的か?」
「すんごい目立ってるから効果はありそう」
「目印にはなりそうだが……書いてないな」
やっぱり無いか。そう落胆していると篠野部が手を顎に当てて考え出した、その姿が様になっているのだから顔のいい人って凄い。
なんか探偵味あるな。
「仕方ない」
「……待って、嫌な予感がする」
「戌井はここで留守番、僕は人にどの辺りか聞いてくる」
「いや、マジ?置いてかれるの、私?」
「ああ、今度こそはぐれたら面倒だ。持ってろ」
まさかの未開の地で一人ぼっちになれといわれた。いや篠野部の言い分はわかる、わかるけど流石に一人は怖いぞ。
「未開の地で一人置いてく気か」
「仕方ないだろ。今度こそ一人迷子になりたのか?」
「うぐっ、なりたかないけどさあ……」
「まあ、君の反応も妥当だろう。なるべく早く戻ってくるからまっててくれ」
どうしよう、一人は嫌だけどはぐれたら本末転倒だよねえ。
頭のなかで葛藤する。はぐれるかもしれないが安心をとるか、少しの不安を飲み込んで確実な方をとるか。
葛藤の末、大きなため息を吐き出す。
「はあ、なるべく早くね」
「わかっている。何かあれば荷物は放り出して逃げるんだ」
「そうするよ。なにもないのが一番なんだけどな」
「ジグザグに逃げるんだ。物を投げるのも有効だからな、大声もありだ。どこかしらの店に入るもよし」
「あー。わかった、わかった」
ほぼほぼ無いと思っていたのに迷子になってる時点でなにか起きる気しかし無いけれども。
「動くなよ」
「はいはい、いってら~」
適当な挨拶で見送る。さて、夕食までにかえれるといいんだけれど。
ふと、ある一つの考えが頭をよぎった。
「もしかして幼児と思われてる?信用はされてない気がするけど……」
対応が完全に……いや、待てよ?
「なんであんなに逃げ方のアドバイスを?」
まるで慣れてるみたいじゃないか。ん?慣れてる?あ、そういえば中学のときストーカー騒ぎと不審者騒ぎがあったような……。
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