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魔法学校入学試験
40 サラダボウル
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また時間がすぎて魔法学校へ通うための試験を受けるためにバイスの町を離れることになった。
向かう先は王都アストロ、魔法学校と軍学校がある都会。若いもの達が夢を見て、邁進し、挫折する町。
人も、獣人も、魔族も、妖精も、どんな種族も集まり暮らす種族のサラダボウル。
馬車に揺られ、乗り継ぐこと数日。私と篠野部は、ついに王都へと足を踏み入れた。
馬車から降りて辺りを見回す。気分は海外の観光名所に来た旅行者のそれで、私のテンションは鰻登りだ。
「わぁ!!篠野部!すごいよ!いっぱい人いる!てか人口密度ヤバ、はぐれてたら合流できる気がしない!てか体痛い!」
体痛い理由、寝てるとき狭いところで丸まってたからだろうな……。
「戌井やめろ、田舎から出てきましたって自己紹介してる状態だからな。スリやカツアゲの被害に合いかねないぞ。ここ治安悪いんだから」
「うぇ!?やだ!」
すぐに篠野部の側によって回りを警戒する。幸いにも入り口だったからか、私たちと同じような外から来た者だ大半で特に気にされることはなかった。
左右、前後、果てには空を飛ぶ者まで、あちこちでいろんな種族が行き交っている。
イルゼさんの言っていた通り、種族のサラダボウルだ。
「あ、空飛んでる」
「魔導師も多いな」
空を飛んでいる者達がちらほらといる。見かけるのは箒ばかりで、逆に箒以外は見当たらない。
絨毯とか飛んでると思ったんだけどなあ。
「いいなあ。私、飛べないから羨ましいや。色変えなら得意なのにさあ」
「あぁ、マッドハッド氏曰く“今度は縫い付けられている”だったか。時折いるらしいな。戌井のように特定の魔法と相性が悪くて発動できない者」
「逆に篠野部みたいに特定の魔法と相性が悪くて効果が現れにくい人もいる、だっけ?たしか……」
「回復魔法」
「……がダメなんだったね。だいぶ危ないよね」
「怪我しなければいいだけだ」
魔法を習っていくうちに発覚した事実だが、私と篠野部は体質の問題で一部の魔法が扱えない、魔法の効果がでない体質だとわかった。
時の流れや本人の成長、死の間際など、何かしらのタイミングで体質が改善されることがあるらしい。
「無駄話してないで早く宿に行くぞ」
「はーい」
アストロの入り口から進んで旅人や観光客達が寝泊まりする宿屋へ向かう。
道中の人の多さは変わらず、何度かはぐれそうになったものの、どうにか宿泊予定の宿屋につけた。
宿屋の外見は蔦が延びており、古いように見えたが中はいたって普通だった。部屋にはベッドと机、椅子など簡素なものだった。
窓からは人々の往来が見え、もっと向こうには魔法学校が見えた。
「あれが私達の行くところか……」
城にも見間違えるほどの大きな石作りの建物、二人からすれば異国情緒溢れる建造物だが二人のような異世界出身者以外からすれば当たり前のものだ。
「……」
永華はなんとも言えない気分になりつつ、窓辺に椅子を移動させて外を行き交う人々を見続ける。日が傾いていくごとに往来は減っていくものの、完全に人がいなくなることはないらしい。
そのうち少し汚れた服装で武装した者達が増えてきた。服装から見るに恐らくは仕事帰りの冒険者だろう。
冒険者って、なんでかお酒好きな印象を受けるよね。これから酒場にでも行くんのかな?
そう考えた辺りで辺りが暗くなっていることに気がつく。
「あ、そろそろ夕飯食べなきゃ」
立ち上がって最低限の荷物と貴重品を持って部屋からでる。そしてカルタの部屋に向かい、ドアをノックする。
「篠野部~」
ドア越しに名を呼ぶと小さく物音がする。しばらくしてドアが開いた。
「……?」
出てきたカルタは寝起きらしく、いつも変わらない表情が少しだけ変わっていた。
眠気がまだ残っているからか目尻が少しだけ下がりトロンとなっているし、ゆるっとパーマがかかった髪は寝癖のせいでラフな雰囲気になっている。服は寝るときに脱いだのかタンクトップにズボンの姿だ。
端的に言えば、とてもセクシーだ。色気がすごい。
「ひぇ……」
好みの顔をした異性が無防備な姿で、いつもと違う露出が多い姿で、目の前に立っていた。
死んだような瞳から目をそらしつつ、というかなんとか脳内で補正をいれつつ、その姿を視界に納めるとドコンと心臓が変な音を立てて、喉から悲鳴じみた音が出た。
「……なに?」
「あ、え……あ、あ~、れ?寝てた?」
慌てて返事をしようとしたら声が裏返ってしまった。
「……?……うん」
一瞬、不振に思われたものの眠気から頭が回っていないのか突っ込まれることはなかった。
「そ、そろそろご飯食べに行こうと思ってさ?さすがに一人は嫌だなと思って篠野部を誘ったんだけど……まだ眠い?寝とく?」
「……食べる。待ってろ」
「わかった」
少しだけ考えて部屋に戻っていった。
篠野部が部屋には行っていくのを見送って、ドアの前から退いて壁沿いにズルズルと座り込む。
「……ビックリした」
確かに疲れているように見えたから寝てるのも変じゃないんだけど……。
「あんな無防備な姿始めてみた。なんか、ぽやぽやしてたし寝起き悪いのかな……」
そういや私、篠野部より先に起きたことない。起こしに行くこともなかったから、今まであんな姿見ることなかったんだろうな。
なんというか、相変わらず顔が良いんだよねえ。黄色い声が聞こえてくるのも、ほんと納得。
しかも私の好みのドンピシャで色気だだ漏れだから照れちゃうと言うか……。
「顔あっちー……」
しかも未だに心臓の音がうるさい。
……まじでなに考えてんだろ、私。
「はぁ……だんだん落ち着いてきた」
そのまましゃがみこんだまま待っていると、篠野部が部屋から出てきた。さっきまでの無防備さはどこかに行き、いつもの仏頂面に戻ってシャツと上着を羽織っていた。
「あ、出てきた」
「……なんでしゃがんでるんだ?」
「気にしないで、それじゃあご飯行こうよ」
「あぁ」
ここの宿屋、二階は宿泊施設になっており一階は受け付けと飲食店が併設してある。永華達が向かうのは一階に併設されている飲食店だ。
階段を降りていると下から騒がしい声が聞こえてくる。恐らくは仕事終わりの冒険者達が来ているんだろう。
「おぉ、やっぱり冒険者ばっかだ」
「……うるさい」
「篠野部、もしかしてまだ眠い?」
「少し……」
「あ~、とっとと食べて寝よっか」
「そうだな」
適当に空いている席に座り、ポンと置かれていたメニューを吟味する。
どうも、この宿屋は酒や酒の肴になりそうなものが多い。今の状態や需要を考えると妥当だろう。
悩んだ末に私はオムライス、篠野部はチャーハンを頼んだ。
やってきた料理には空腹からすぐに食べ終わってしまい、酒をのみに来た冒険者も増えたことから早々に退散することにした。
「明日は魔法学校に試験だから寝坊するなよ」
「しないし~。それじゃあ、おやすみ」
「……おやすみ」
昔は挨拶したところで無視されていたのに、一年ともに生活した今は普通に返事を返してくれるようになった。でも、よくわからないけど終始居心地悪そうだ。
部屋に戻ると窓辺に置いたまんまの椅子に座る。外には飲んだくれとなった冒険者達が散見された。
魔法学校の試験は元々私達で書類をつくって送ろうとしたのだが調べれど、そのあたりの勝手がわからない私はマッドハッドのじいさんを頼った。
そうしたら元魔法学校の教師であるマッドハッドのじいさんが推薦状を書いてくれた。
篠野部には自力でやれと呆れられたが私はこういう書類系のものは苦手なので勘弁してほしい。
「明日は試験か……」
正直、不安がないと言えば嘘ではあるものの、じさんにお墨付きをもらっている。
鞄の中から糸を取り出して魔法でミサンガを編んでいく。
「大丈夫、うん」
いつも通り順調にミサンガが編み上がっていく。予定の半分ほど編み上がったところで机の上に起き、椅子を元の位置に戻した。
「ふぅ、おっやすみ~」
ベッドに潜り込む。
「うまく寝れると良いな……」
目をつむって、程なくして意識がなくなった。
向かう先は王都アストロ、魔法学校と軍学校がある都会。若いもの達が夢を見て、邁進し、挫折する町。
人も、獣人も、魔族も、妖精も、どんな種族も集まり暮らす種族のサラダボウル。
馬車に揺られ、乗り継ぐこと数日。私と篠野部は、ついに王都へと足を踏み入れた。
馬車から降りて辺りを見回す。気分は海外の観光名所に来た旅行者のそれで、私のテンションは鰻登りだ。
「わぁ!!篠野部!すごいよ!いっぱい人いる!てか人口密度ヤバ、はぐれてたら合流できる気がしない!てか体痛い!」
体痛い理由、寝てるとき狭いところで丸まってたからだろうな……。
「戌井やめろ、田舎から出てきましたって自己紹介してる状態だからな。スリやカツアゲの被害に合いかねないぞ。ここ治安悪いんだから」
「うぇ!?やだ!」
すぐに篠野部の側によって回りを警戒する。幸いにも入り口だったからか、私たちと同じような外から来た者だ大半で特に気にされることはなかった。
左右、前後、果てには空を飛ぶ者まで、あちこちでいろんな種族が行き交っている。
イルゼさんの言っていた通り、種族のサラダボウルだ。
「あ、空飛んでる」
「魔導師も多いな」
空を飛んでいる者達がちらほらといる。見かけるのは箒ばかりで、逆に箒以外は見当たらない。
絨毯とか飛んでると思ったんだけどなあ。
「いいなあ。私、飛べないから羨ましいや。色変えなら得意なのにさあ」
「あぁ、マッドハッド氏曰く“今度は縫い付けられている”だったか。時折いるらしいな。戌井のように特定の魔法と相性が悪くて発動できない者」
「逆に篠野部みたいに特定の魔法と相性が悪くて効果が現れにくい人もいる、だっけ?たしか……」
「回復魔法」
「……がダメなんだったね。だいぶ危ないよね」
「怪我しなければいいだけだ」
魔法を習っていくうちに発覚した事実だが、私と篠野部は体質の問題で一部の魔法が扱えない、魔法の効果がでない体質だとわかった。
時の流れや本人の成長、死の間際など、何かしらのタイミングで体質が改善されることがあるらしい。
「無駄話してないで早く宿に行くぞ」
「はーい」
アストロの入り口から進んで旅人や観光客達が寝泊まりする宿屋へ向かう。
道中の人の多さは変わらず、何度かはぐれそうになったものの、どうにか宿泊予定の宿屋につけた。
宿屋の外見は蔦が延びており、古いように見えたが中はいたって普通だった。部屋にはベッドと机、椅子など簡素なものだった。
窓からは人々の往来が見え、もっと向こうには魔法学校が見えた。
「あれが私達の行くところか……」
城にも見間違えるほどの大きな石作りの建物、二人からすれば異国情緒溢れる建造物だが二人のような異世界出身者以外からすれば当たり前のものだ。
「……」
永華はなんとも言えない気分になりつつ、窓辺に椅子を移動させて外を行き交う人々を見続ける。日が傾いていくごとに往来は減っていくものの、完全に人がいなくなることはないらしい。
そのうち少し汚れた服装で武装した者達が増えてきた。服装から見るに恐らくは仕事帰りの冒険者だろう。
冒険者って、なんでかお酒好きな印象を受けるよね。これから酒場にでも行くんのかな?
そう考えた辺りで辺りが暗くなっていることに気がつく。
「あ、そろそろ夕飯食べなきゃ」
立ち上がって最低限の荷物と貴重品を持って部屋からでる。そしてカルタの部屋に向かい、ドアをノックする。
「篠野部~」
ドア越しに名を呼ぶと小さく物音がする。しばらくしてドアが開いた。
「……?」
出てきたカルタは寝起きらしく、いつも変わらない表情が少しだけ変わっていた。
眠気がまだ残っているからか目尻が少しだけ下がりトロンとなっているし、ゆるっとパーマがかかった髪は寝癖のせいでラフな雰囲気になっている。服は寝るときに脱いだのかタンクトップにズボンの姿だ。
端的に言えば、とてもセクシーだ。色気がすごい。
「ひぇ……」
好みの顔をした異性が無防備な姿で、いつもと違う露出が多い姿で、目の前に立っていた。
死んだような瞳から目をそらしつつ、というかなんとか脳内で補正をいれつつ、その姿を視界に納めるとドコンと心臓が変な音を立てて、喉から悲鳴じみた音が出た。
「……なに?」
「あ、え……あ、あ~、れ?寝てた?」
慌てて返事をしようとしたら声が裏返ってしまった。
「……?……うん」
一瞬、不振に思われたものの眠気から頭が回っていないのか突っ込まれることはなかった。
「そ、そろそろご飯食べに行こうと思ってさ?さすがに一人は嫌だなと思って篠野部を誘ったんだけど……まだ眠い?寝とく?」
「……食べる。待ってろ」
「わかった」
少しだけ考えて部屋に戻っていった。
篠野部が部屋には行っていくのを見送って、ドアの前から退いて壁沿いにズルズルと座り込む。
「……ビックリした」
確かに疲れているように見えたから寝てるのも変じゃないんだけど……。
「あんな無防備な姿始めてみた。なんか、ぽやぽやしてたし寝起き悪いのかな……」
そういや私、篠野部より先に起きたことない。起こしに行くこともなかったから、今まであんな姿見ることなかったんだろうな。
なんというか、相変わらず顔が良いんだよねえ。黄色い声が聞こえてくるのも、ほんと納得。
しかも私の好みのドンピシャで色気だだ漏れだから照れちゃうと言うか……。
「顔あっちー……」
しかも未だに心臓の音がうるさい。
……まじでなに考えてんだろ、私。
「はぁ……だんだん落ち着いてきた」
そのまましゃがみこんだまま待っていると、篠野部が部屋から出てきた。さっきまでの無防備さはどこかに行き、いつもの仏頂面に戻ってシャツと上着を羽織っていた。
「あ、出てきた」
「……なんでしゃがんでるんだ?」
「気にしないで、それじゃあご飯行こうよ」
「あぁ」
ここの宿屋、二階は宿泊施設になっており一階は受け付けと飲食店が併設してある。永華達が向かうのは一階に併設されている飲食店だ。
階段を降りていると下から騒がしい声が聞こえてくる。恐らくは仕事終わりの冒険者達が来ているんだろう。
「おぉ、やっぱり冒険者ばっかだ」
「……うるさい」
「篠野部、もしかしてまだ眠い?」
「少し……」
「あ~、とっとと食べて寝よっか」
「そうだな」
適当に空いている席に座り、ポンと置かれていたメニューを吟味する。
どうも、この宿屋は酒や酒の肴になりそうなものが多い。今の状態や需要を考えると妥当だろう。
悩んだ末に私はオムライス、篠野部はチャーハンを頼んだ。
やってきた料理には空腹からすぐに食べ終わってしまい、酒をのみに来た冒険者も増えたことから早々に退散することにした。
「明日は魔法学校に試験だから寝坊するなよ」
「しないし~。それじゃあ、おやすみ」
「……おやすみ」
昔は挨拶したところで無視されていたのに、一年ともに生活した今は普通に返事を返してくれるようになった。でも、よくわからないけど終始居心地悪そうだ。
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魔法学校の試験は元々私達で書類をつくって送ろうとしたのだが調べれど、そのあたりの勝手がわからない私はマッドハッドのじいさんを頼った。
そうしたら元魔法学校の教師であるマッドハッドのじいさんが推薦状を書いてくれた。
篠野部には自力でやれと呆れられたが私はこういう書類系のものは苦手なので勘弁してほしい。
「明日は試験か……」
正直、不安がないと言えば嘘ではあるものの、じさんにお墨付きをもらっている。
鞄の中から糸を取り出して魔法でミサンガを編んでいく。
「大丈夫、うん」
いつも通り順調にミサンガが編み上がっていく。予定の半分ほど編み上がったところで机の上に起き、椅子を元の位置に戻した。
「ふぅ、おっやすみ~」
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