苦手な人と共に異世界に呼ばれたらしいです。……これ、大丈夫?

猪瀬

文字の大きさ
56 / 234
メルリス魔法学校

55 魔法の授業

しおりを挟む
入学式から翌日。本格てきな授業が始まった。

「それでは魔法史、始めます」

 一番最初の授業は担任であるザベル先生の魔法史の授業。

 魔法史は“この学校の成り立ちが……”とかではなく“魔法の始まり”についてだった。

「この世界で生きるものに魔法を与えたのは神であり、一番最初に魔法を使えるようになったのはエルフだと言われています」

 魔法の歴史は、それこそ数千年も前から始まっているらしい。

「エルフは人間や獣人、人魚、魔族など多種多様な種族に教えました」

 魔法の祖と言われるエルフの中には男もいたらしい、なんか勝手に女だと思ってた。

「その頃、エルフのすんでいた地方で何らかの勢力と争っていた痕跡が残っていますが、その痕跡も曖昧なものが多く最近では“何らかの勢力”は最初から存在していなかったのではないかと言われています」

「先生、なんで最初から存在していたなかった可能性が出てきたのですか?」

「それは元々エルフが争いを好まない性質であったと言うのもあるのですが、あまりにも痕跡が曖昧であることが原因です」

「曖昧?」

「“何らなの勢力”の存在はいくつもの書物で……まぁ、言い方は悪いのですが、匂わせ程度に記載されていました。ですがあまりにも“何らかの勢力”に所属する種族が多岐にわたり、時代背景的におかしいと言う話しになったからです」

 チラッと教科書に目をうつす。

「教科書にある通り、当時は種族間での争いが耐えなかったからです」

「え、それどうやってエルフ達は魔法を教えたんですか?」

「先ほども言ったようにエルフは争いを好みません。ですから当時のエルフの多くは中立の立場でしたが、特定の派閥に味方となるエルフもいました。そのエルフ達が教えたのです」

 なるほど、エルフも一枚岩じゃないと。

 ほどなくして一時限目は終わり、次は二時限目。



 二時限目の授業。ジャーニー・ベンズー先生の魔法生物及び植物学。

「えぇ、魔法生物及び植物学はじめま~す。ふぁ~」

 この先生、しょっぱなからあくびをしてる……。

「えっと、この授業は魔法生物、まぁ魔物についての生体とか魔法植物の生体とかします。はい」

 ジャーニー先生が眠そうにしながらも鉢植えを運んできて教卓に置いた。

「せ、先生?それなんですか?」

「ん、いまからちょっとやらなきゃいけないことするから、その間に教科書の6ページ見といて」

 ジャーニー先生に言われたページを開く。

 そこには魔法植物についてのっていた。

 魔法植物、それは自然に霧散している魔力が影響して変質した植物である。

 触れれば触れた箇所が爛れてしまうような危険なものがあれば、多種多様な病に聞くものも存在する。

 魔法生物といっても多種多様だが有名どころと言えばマンドラゴラだろう。

「まんどら、ごら?」

 根の部分が人間のようになっており、地面から引っこ抜くとこの世のもとは思えないようなうるさい叫び声を上げ、その声を聞いたものは即死する。

 一般的には鉢植えに植えられ、耳栓や魔法を使って収穫される。

「はち、うえ?」

 視線を教科書からあげて、教卓の植えにある鉢植えにうつす。

 鉢植えが、ある。

 冷や汗が頬を伝う。

「よっと、読めた?そのようすは読めたみたいだね」

 にっこりと笑うジャーニー先生にいやな予感が止まらない。

「この鉢植え、マンドラゴラが植わってます」

「やっぱりかよ!」

「先生!せめて耳栓配ってくださいよ!」

 あちこちから非難轟々だ。

「安心して、引っこ抜くきはないから。でね~」

 安心できないんだけど……。

 ジャーニー先生が鞄を漁り、あるものを取り出した。

「処理済みのマンドラゴラで~す」

 ドンッ!と机の植えにおく。

 その大きさは人間の子供、だいたい三歳児くらいのものだ。

「これ昨日取れた大物!これと格闘してたら寝る時間なくってさあ。あ、マンドラゴラってこの鉢植えに収まるサイズが平均で、こんなでっかいの畑で育ててたとしても、ここまで大きくならないんだぞ」

 鉢植えは一般的な大きさのものだ。それに比べ先生が出したのは人間の三歳児程度の大きさ、後者の規格外さは一目でわかった。

「あ、マンドラゴラの叫び声聞きたい?ワンチャン死ぬけど」

「先生!」

 二時限目の授業はドキドキハラハラで終わった。



 三時限目の授業、マーマリア・マリー・メイズの魔法倫理学。

「では、魔法倫理学を始めます」

 魔法倫理学、それは魔導師が魔法を使うにおいて大切なものだ。

「当たり前のことですし、もうすでに貴方達の魔法の先生に教わっていると思いますが、とても大事なことですのでやっていきますね」

 元の世界で言うところの道徳あたりの授業だろう。

「基本的に魔導師が非魔導師、魔法を使えない方に対して魔法を打つことは非常に危険であり許されるべき行為ではありません」

 人相手に魔法、使ったことあるんだよなあ。

「ですが自分の命、友人、知り合いの命が脅かされたときは容赦なく使いなさい。全ては命があるからできることですから」

 あ、この人、教会でシスターしてそうな見た目してるけど、わりと好戦的かもしれない。

「ですが、あくまで自衛のためです。やりすぎはだめです」

 この人やっぱり見た目に似合わず好戦的だ。

「そして、こちらも当たり前のことですが人体実験やホムンクルスなどは作ってはいけません」

 ホムンクルス、人造人間。

 科学、魔法などを使って“生殖”以外で人間に作られてた“人間”のこと。

「倫理、人道に反することももちろんですが人体実験は他人の人生も自分の人生も壊してしまいます。ホムンクルスもそうです。今まで成功した例はありませんし、作られたもの達は苦しみ抜いて死んでいったと言う報告が上がっています」

 パラリとページそめくると、そこには被害者数が書かれていた。

「禁忌は禁忌。犯してはならないから禁忌なのです。人体実験もホムンクルスを作ることも、行えば相応の罰が下ります。その内容については、とても惨いので伏せさせていただきますが、決して手を出さないように」

 すこし罰の内容が気になるものの、折角配慮してくれているのだし特に突っ込むものもいなかったので心にしまっておくことにした。

 三時限目の授業が終わり、四時限目。



 四時限目、ニーナ・ヴィジュルの魔法薬学。

「では、魔法薬学。始めていきまーす」

 普通の教室、というよりも理科の実験で使う理科室のようなところだ。

「君たちが想像しているのはお婆さんがでっかい鍋に材料をいれて混ぜている姿ですかね?魔法薬学、わりとそんな感じで作ります」

 ……ニーナ先生の使ってる机の上にはマンドラゴラや奇妙な見た目の魔法植物、蜥蜴などが置いてある。

「あぁ、これ?これ魔法薬学で使うものを一部抜粋して持ってきたやつですよ」

 蜥蜴使うのか……。

「あ、誰かこれ飲んでくれませんか?」

 ニーナ先生が取り出したのはうす緑色の液体が入った瓶だった。

 一人の生徒が好奇心を刺激されたのか、手を上げてニーナ先生から薬を受け取って一気に飲んだ。

「にっが!!」

 生徒が苦いと叫ぶと同時にボンッと髪の色が変わった。

「髪の色を変える薬ですよ。苦いのが難点ですけどね。はい、これ戻すやつ」

 また薬を取り出して生徒に渡す。

 今度の薬は薄ピンクというなんとも言えない色をしていた。

 あれ、蜥蜴とか入ってるのか……。

 色もそうだが、内容物が食欲を削いでくる。

 四時限目が終わりる。

 そのあとに昼食を食べて、五時限目、六時限目と授業をうけてそのあとは自由時間。

 そんな感じのサイクルを続けている。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~

あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。 彼は気づいたら異世界にいた。 その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。 科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。

『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる

仙道
ファンタジー
 気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。  この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。  俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。  オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。  腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。  俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。  こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。

祝・定年退職!? 10歳からの異世界生活

空の雲
ファンタジー
中田 祐一郎(なかたゆういちろう)60歳。長年勤めた会社を退職。 最後の勤めを終え、通い慣れた電車で帰宅途中、突然の衝撃をうける。 ――気付けば、幼い子供の姿で見覚えのない森の中に…… どうすればいいのか困惑する中、冒険者バルトジャンと出会う。 顔はいかついが気のいいバルトジャンは、行き場のない子供――中田祐一郎(ユーチ)の保護を申し出る。 魔法や魔物の存在する、この世界の知識がないユーチは、迷いながらもその言葉に甘えることにした。 こうして始まったユーチの異世界生活は、愛用の腕時計から、なぜか地球の道具が取り出せたり、彼の使う魔法が他人とちょっと違っていたりと、出会った人たちを驚かせつつ、ゆっくり動き出す―― ※2月25日、書籍部分がレンタルになりました。

人生初めての旅先が異世界でした!? ~ 元の世界へ帰る方法探して異世界めぐり、家に帰るまでが旅行です。~(仮)

葵セナ
ファンタジー
 主人公 39歳フリーターが、初めての旅行に行こうと家を出たら何故か森の中?  管理神(神様)のミスで、異世界転移し見知らぬ森の中に…  不思議と持っていた一枚の紙を読み、元の世界に帰る方法を探して、異世界での冒険の始まり。   曖昧で、都合の良い魔法とスキルでを使い、異世界での冒険旅行? いったいどうなる!  ありがちな異世界物語と思いますが、暖かい目で見てやってください。  初めての作品なので誤字 脱字などおかしな所が出て来るかと思いますが、御容赦ください。(気が付けば修正していきます。)  ステータスも何処かで見たことあるような、似たり寄ったりの表示になっているかと思いますがどうか御容赦ください。よろしくお願いします。

眺めるだけならよいでしょうか?〜美醜逆転世界に飛ばされた私〜

波間柏
恋愛
美醜逆転の世界に飛ばされた。普通ならウハウハである。だけど。 ✻読んで下さり、ありがとうございました。✻

『異世界に転移した限界OL、なぜか周囲が勝手に盛り上がってます』

宵森みなと
ファンタジー
ブラック気味な職場で“お局扱い”に耐えながら働いていた29歳のOL、芹澤まどか。ある日、仕事帰りに道を歩いていると突然霧に包まれ、気がつけば鬱蒼とした森の中——。そこはまさかの異世界!?日本に戻るつもりは一切なし。心機一転、静かに生きていくはずだったのに、なぜか事件とトラブルが次々舞い込む!?

処理中です...