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恐るべき執着心
121 ブラコン疑惑?
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「真剣も真剣だ。今はバレてないんだろうが、屋敷はテリトリー。そうそう簡単に逃げきれると思うか?」
「それ関係あるのかよ」
「あるね。アーネチカさんが捕まるのは時間の問題だろ。そして今は兄様もいる。二人揃ってるなら父様の目的は叶うし、母様の目的は叶わない。俺も……二人とも捕まってないのなら、現状維持でどうにかなる」
「現状維持?続けるのか?死ぬぞ!」
ローレスはチラリと、そこら辺に転がる物騒な道具たちに視線を向ける。
ローレスの言葉はロンテ先輩が、この先どうなるのか。それを想像して、
「あれくらいじゃ死なない、あれより酷いこともされたし……。俺が望む状態にするなら、捕まられたら困るし、このままでも困る。俺は足手まといで、兄様が嫌いなブレイブ家の人間、捕まる原因になった奴、連れて逃げればハイリスクでローリターンだ」
さっきまで怒鳴っていたのが嘘のように、静かに、淡々と言葉を並べていく。
「連れ出そうとする価値も、意味も、理由も、願いも、ない。なにより、俺自身が望んでない」
「……っ!」
レイスは色々と言いたいことがあるようだか、うまく言葉にできないのか、それとも言われたことがショックだったのかハクハクと口を開けては閉じてを繰り返す。
本人が望んでいないのならば、連れ出すのは無理がある。
「だからって、だからって!おま、弟が死ぬかもしれないのを見て見ぬふりをしろと!?」
「そうだよ!それに、なにも死ぬって決まった訳じゃないだろ!」
「ロンテの言ってることあわせりゃそう言ってるようにしか聞こえねえんだよ!」
「はっ!考えすぎだろーが!」
「悪かったな考えすぎて!」
「第一、優秀なオニイサマには親にすら褒めてもらえない俺なんかいない方がいいだろ」
「それ本気で言ってんだったら気絶させて担ぐからな」
「目が怖い!」
レイスの目が据わってる。
これは本気だ。
「アイツらがなんだ。俺のローレス・レイスの弟はロンテただ一人だ。本人でも、それ以上言うことは許さないぞ」
「え、えぇ……。でも……」
「でももだってもない。凄くなくても、卑屈でも、俺のこと嫌いでも、俺はロンテが弟で嬉しいし、誇らしいし、大好きだ」
「……はっ!?なに、いってんの?十四年も放置したのに、よく言えるな!」
二人の言い合い、形勢逆転しだした。
ロンテ先輩からすればさっきのローレスの発言は爆弾みたいなものなんだろう。
「うるさい、黙って拐われてろ」
「いや、だから__」
「あ?文句あんのか?今の俺の言葉に嘘はない。魔法で契約してもいいぞ、魔法剥奪でもなんでもペナルティにするといい」
「……は?いや__」
「お前のこと大好きな兄様のために、拐われてくれるよな?ロンテ、お前は俺の大事な兄弟だ。そうじゃなきゃ、こうやって話何てしてないし、連れ出そうともしていない」
「……」
「沈黙は了承、そうとるぞ?」
「……反抗しようとしてもかぶせるだろ」
「あぁ、そうだ。それで、どうする?」
「……もう、好きにしろ」
動揺した隙を好機と見たのか、レイスは次から次にロンテ先輩の言葉を遮り、自分の思いを吐露する。
結局はレイスの強い押しにロンテ先輩が折れて、ローレスが勝った。
あんな愛に飢えた人間に、あんな好意を思いきり滲ませた声で、好意全開の言葉をかければどうなることか……。
レイスの目にはローシュテールよりもましではあるものの、ドロドロとした重たい好意を感じる。
その好意の部類はローシュテールと違う部類のものなんだろう。
けど、あの重く、ドロドロとした感情は弟に向けるようなものなのか?
……僕にはわからない。
それはそうと、ロンテ先輩はレイスを睨み付けている。
表情こそ嫌そうではあるが、その目には嬉しさのようなものがうっすらと透けて見えた。
ああは言っていたが、どこかで助けを望んでいたのかもしれない。
はぁ……まったく、ブラコン共め。
「話し合いは終わったか?」
「あ、すまん。放置しちまってたな」
「……なんでいるんだ?」
……そうか。この人、ここに連れてこられるまでの数日は屋敷に帰ってきていないしブレイブ家とも連絡を取ってないから僕がここにいる理由は知らないのか。
「当主から手紙が来た」
「あっ……。そっか」
一言で察してくれた。
普段のローシュテールが、どんな風なのか、わかった気がする。
知りたくもないことを知ったが、僕たち三人は地下から出て、更に屋敷から出て魔法学校に向かうことになる。
道中は僕の自己魔法だよりになってしまうが、しかたのないことだろう。
二人は透明化の魔法を使うと言っていたが、二人とも元は大ケガをしていた怪我人がし、レイスに至っては弟のために治癒魔法でたくさんの魔力を使った奴だ。
元大怪我、そして体力的にそこまで残っていない、魔力も、それなりに消費している。
僕の自己魔法を全員にかけることになるのもやむ無し。
僕がレイスの腕をつかんで、レイスがロンテ先輩の
腕を掴む。その状態で進んでいく。
牢屋にも、ローシュテールのや部屋にも、倉庫にも、年のため覗いた監禁部屋も、誰もいないことが確認できたし、監視もないことが確認できた。
ローシュテールが、どこにも監視を置いていないのは油断していると言うことなのだろうか?
それか、監視を置く余裕がないか、気が回っていないのか……。
どこか不気味だ。
最大限警戒しつつ、妙に静かな屋敷の中を進んでいく。
使用人の話を聞く限り、数日前に呼びつけた商人が屋敷に頼んだ代物を持ってきたらしい。
ロンテ先輩に視線を送ってみれば、首を横に振られた。
ロンテ先輩が知らないと言うことは、ここ数日の間に呼び、なにかを頼んだと……。
きっと、監禁関係のろくでもない代物だろうな。
その執念に呆れの感情が出てくる。
なんで、そんなに執着するんだか……。
ふと窓の外が見えたとき、商人のものであろう馬車が視界に入った。
あの馬車に刺繍された紋様は、確か人身売買事件で背徳行為をしていた軍人に脅されてカリヤ先輩の兄、ネレーオさんの情報を流した人がやってる紹介だったか。
ベイベルツ家に関わりのある商人が、ブレイブ家にやってきた。
偶然のことなのかもしれないが、もしかしたら……。
そう考えると、どうも早足になってしまう。
ローシュテールと遭遇しそうになったが、商人たちと荷物を連れて客室に連れていった。
ローシュテールがこちらに気がつくことはなく、ニコニコと気持ち悪いくらいの上機嫌さがわかる笑顔で商人を__いや、商人たちの持っている荷物を見ている。
ローシュテールは、こちらに気がついておらず、そして客室に入っていった。
これは好機である。
商人たちの会話がいつ終わるかわからないのが懸念ではあるものの、あの場所に乗ってバレさえしなければ王都アストロに帰れる。
それができなかったとしても、屋敷から出られる。
二人に合図で、それを知らせると頷く。
ササッと使用人たちに見つからないように屋敷の中を駆けていく。
徒歩になれば時間はかかるだろうし、過酷かもしれない。
だが僕は定期的に町や村を行き来している馬車を乗り継いできた。
その手段が取れれば徒歩よりも早く、しかも安全に移動できるかもしれないが、運転手がこの辺りの人間だと言う思うとブレイブ家の手が回っていないか心配だ。
仮にそんなことになってみれば脱出劇は全てパアだ。
金の問題もあるが、徒歩で逃げるしかないんだろうか。
いや、そんなの逃げてる途中で考えればいいことだ。
そうこう考えてるうちに、屋敷から脱出できた。
喜ばしことだ。
歓喜しようにも、今はまだ屋敷の庭の中。騒げない。
だと言うのにレイスが騒ぎそうになっていたから手が出てしまった。
さて、これから、どの選択肢を取ろうか。
そう考えて、馬車の荷台の前を通ると誰かの手が、こちらに延びてきた。
「それ関係あるのかよ」
「あるね。アーネチカさんが捕まるのは時間の問題だろ。そして今は兄様もいる。二人揃ってるなら父様の目的は叶うし、母様の目的は叶わない。俺も……二人とも捕まってないのなら、現状維持でどうにかなる」
「現状維持?続けるのか?死ぬぞ!」
ローレスはチラリと、そこら辺に転がる物騒な道具たちに視線を向ける。
ローレスの言葉はロンテ先輩が、この先どうなるのか。それを想像して、
「あれくらいじゃ死なない、あれより酷いこともされたし……。俺が望む状態にするなら、捕まられたら困るし、このままでも困る。俺は足手まといで、兄様が嫌いなブレイブ家の人間、捕まる原因になった奴、連れて逃げればハイリスクでローリターンだ」
さっきまで怒鳴っていたのが嘘のように、静かに、淡々と言葉を並べていく。
「連れ出そうとする価値も、意味も、理由も、願いも、ない。なにより、俺自身が望んでない」
「……っ!」
レイスは色々と言いたいことがあるようだか、うまく言葉にできないのか、それとも言われたことがショックだったのかハクハクと口を開けては閉じてを繰り返す。
本人が望んでいないのならば、連れ出すのは無理がある。
「だからって、だからって!おま、弟が死ぬかもしれないのを見て見ぬふりをしろと!?」
「そうだよ!それに、なにも死ぬって決まった訳じゃないだろ!」
「ロンテの言ってることあわせりゃそう言ってるようにしか聞こえねえんだよ!」
「はっ!考えすぎだろーが!」
「悪かったな考えすぎて!」
「第一、優秀なオニイサマには親にすら褒めてもらえない俺なんかいない方がいいだろ」
「それ本気で言ってんだったら気絶させて担ぐからな」
「目が怖い!」
レイスの目が据わってる。
これは本気だ。
「アイツらがなんだ。俺のローレス・レイスの弟はロンテただ一人だ。本人でも、それ以上言うことは許さないぞ」
「え、えぇ……。でも……」
「でももだってもない。凄くなくても、卑屈でも、俺のこと嫌いでも、俺はロンテが弟で嬉しいし、誇らしいし、大好きだ」
「……はっ!?なに、いってんの?十四年も放置したのに、よく言えるな!」
二人の言い合い、形勢逆転しだした。
ロンテ先輩からすればさっきのローレスの発言は爆弾みたいなものなんだろう。
「うるさい、黙って拐われてろ」
「いや、だから__」
「あ?文句あんのか?今の俺の言葉に嘘はない。魔法で契約してもいいぞ、魔法剥奪でもなんでもペナルティにするといい」
「……は?いや__」
「お前のこと大好きな兄様のために、拐われてくれるよな?ロンテ、お前は俺の大事な兄弟だ。そうじゃなきゃ、こうやって話何てしてないし、連れ出そうともしていない」
「……」
「沈黙は了承、そうとるぞ?」
「……反抗しようとしてもかぶせるだろ」
「あぁ、そうだ。それで、どうする?」
「……もう、好きにしろ」
動揺した隙を好機と見たのか、レイスは次から次にロンテ先輩の言葉を遮り、自分の思いを吐露する。
結局はレイスの強い押しにロンテ先輩が折れて、ローレスが勝った。
あんな愛に飢えた人間に、あんな好意を思いきり滲ませた声で、好意全開の言葉をかければどうなることか……。
レイスの目にはローシュテールよりもましではあるものの、ドロドロとした重たい好意を感じる。
その好意の部類はローシュテールと違う部類のものなんだろう。
けど、あの重く、ドロドロとした感情は弟に向けるようなものなのか?
……僕にはわからない。
それはそうと、ロンテ先輩はレイスを睨み付けている。
表情こそ嫌そうではあるが、その目には嬉しさのようなものがうっすらと透けて見えた。
ああは言っていたが、どこかで助けを望んでいたのかもしれない。
はぁ……まったく、ブラコン共め。
「話し合いは終わったか?」
「あ、すまん。放置しちまってたな」
「……なんでいるんだ?」
……そうか。この人、ここに連れてこられるまでの数日は屋敷に帰ってきていないしブレイブ家とも連絡を取ってないから僕がここにいる理由は知らないのか。
「当主から手紙が来た」
「あっ……。そっか」
一言で察してくれた。
普段のローシュテールが、どんな風なのか、わかった気がする。
知りたくもないことを知ったが、僕たち三人は地下から出て、更に屋敷から出て魔法学校に向かうことになる。
道中は僕の自己魔法だよりになってしまうが、しかたのないことだろう。
二人は透明化の魔法を使うと言っていたが、二人とも元は大ケガをしていた怪我人がし、レイスに至っては弟のために治癒魔法でたくさんの魔力を使った奴だ。
元大怪我、そして体力的にそこまで残っていない、魔力も、それなりに消費している。
僕の自己魔法を全員にかけることになるのもやむ無し。
僕がレイスの腕をつかんで、レイスがロンテ先輩の
腕を掴む。その状態で進んでいく。
牢屋にも、ローシュテールのや部屋にも、倉庫にも、年のため覗いた監禁部屋も、誰もいないことが確認できたし、監視もないことが確認できた。
ローシュテールが、どこにも監視を置いていないのは油断していると言うことなのだろうか?
それか、監視を置く余裕がないか、気が回っていないのか……。
どこか不気味だ。
最大限警戒しつつ、妙に静かな屋敷の中を進んでいく。
使用人の話を聞く限り、数日前に呼びつけた商人が屋敷に頼んだ代物を持ってきたらしい。
ロンテ先輩に視線を送ってみれば、首を横に振られた。
ロンテ先輩が知らないと言うことは、ここ数日の間に呼び、なにかを頼んだと……。
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その執念に呆れの感情が出てくる。
なんで、そんなに執着するんだか……。
ふと窓の外が見えたとき、商人のものであろう馬車が視界に入った。
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ベイベルツ家に関わりのある商人が、ブレイブ家にやってきた。
偶然のことなのかもしれないが、もしかしたら……。
そう考えると、どうも早足になってしまう。
ローシュテールと遭遇しそうになったが、商人たちと荷物を連れて客室に連れていった。
ローシュテールがこちらに気がつくことはなく、ニコニコと気持ち悪いくらいの上機嫌さがわかる笑顔で商人を__いや、商人たちの持っている荷物を見ている。
ローシュテールは、こちらに気がついておらず、そして客室に入っていった。
これは好機である。
商人たちの会話がいつ終わるかわからないのが懸念ではあるものの、あの場所に乗ってバレさえしなければ王都アストロに帰れる。
それができなかったとしても、屋敷から出られる。
二人に合図で、それを知らせると頷く。
ササッと使用人たちに見つからないように屋敷の中を駆けていく。
徒歩になれば時間はかかるだろうし、過酷かもしれない。
だが僕は定期的に町や村を行き来している馬車を乗り継いできた。
その手段が取れれば徒歩よりも早く、しかも安全に移動できるかもしれないが、運転手がこの辺りの人間だと言う思うとブレイブ家の手が回っていないか心配だ。
仮にそんなことになってみれば脱出劇は全てパアだ。
金の問題もあるが、徒歩で逃げるしかないんだろうか。
いや、そんなの逃げてる途中で考えればいいことだ。
そうこう考えてるうちに、屋敷から脱出できた。
喜ばしことだ。
歓喜しようにも、今はまだ屋敷の庭の中。騒げない。
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