苦手な人と共に異世界に呼ばれたらしいです。……これ、大丈夫?

猪瀬

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つかの間の平穏

138 レーピオは腹黒い1

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レーピオ視点

三学期が始まり、初日にローレスさんの補習地獄が終わりました。

「いよっしょあー!!終わった!!解放!!」

 とかローレスさんがうるさかったですが、最近まで勉強漬けだったので僕からは何も言わないでいることにしたんです。

 勉強は好きでない人からすればしんどいでしょうからねえ。まあ、カルタくんにはうるさいって怒られてたけどね。

 カルタくんに冷たい表情で淡々と怒られてるのちょっと羨ましかったですう。

 僕もあんな風に……うへへ~。

 最近のカルタくんは僕が喜ぶとわかってるのかあ、僕にたいしては怒るじゃなくてスルーを貫いてるんですよね。

 それはそれで嬉しいので、僕としてはいいんですけどねえ。

 それで、三学期が始まって何があったかというとですね。

 まずはテスト、春休み前にもやってましたけどね。

 あとは三者面談がありましたよ。

 永華さんとカルタくんの時はマッドハッド様が保護者枠として来たんです。

 もう生徒も教師陣も凄かったですよ。

 推しを前にしたオタクみたいな反応をしていた人もいれば、そんな人たちを見て胃を押さえていた人もいましたからね。

 教師陣の反応を見て、改めてマッドハッドのじいさんって凄いんだなと実感した。と二人が言ってましたが、なんで弟子である二人がそれわかってないんでしょうねえ?

 あとはララさんの時は親ではなく、王都に住んでいる貴族の方がやってきてました。

 どうやら二人は昔から優秀らしく、才能を見抜いた貴族様が親戚の子供である二人を養子にして、教育をうけさせているのだそうです。

 ロンテ先輩に関してはローレスくんが出ようとしたがロンテ先輩本人に嫌がられえ、部下のうち一人である初老の男性にお願いしてい他のを目撃しました。

 ローレスが凹んでいたが、長い間離れていたローレスがいってもなってところはあったので仕方がないことだと思います。

 ベイノットくんやミューさん、メメさん、ローレスくんのところは親御さんが来てましたよ。

 僕のところは親が来たんですけれども……。

 その、三者面談が終わったあとに、いつも一緒にいることが多い友人達に絡みに行っちゃったんですよね……。

「お父様あ!?」

 ブレイブ家の事件もあって、カルタくんや永華さん、ミューさんやベイノットくんなんかの平民出身の友人達は貴族にたいして以前以上の警戒心を持つようになっていました。

 僕の家族の特徴は事前に伝えていますし、トラブルが起こるとは思えませんけど、お父様が近くに友人達がいると言ったとたん血相を変えて皆さんの方に向かっていきますから柄にもなく焦ってしまいます。

 時間と日程の都合上、僕の三者面談は他の友人宅よりもあとになっており、もうすでに面談が終わっている友人達は少し離れた空き教室で僕のことを待っているはず……。

 お父様よりも一歩遅れて空き教室に入ろうとしたとき、見えた教室のなかには困惑する友人達と、懇願するお父様がいました。

「これからも息子と仲良くしてやってくれんか!?」

「いきなり飛び込んできたお兄さん誰え!?」

「スライディングで頭下げてくるとか不審者ですわ!?それともこれが陸の作法なんですの!?」

「違えよ!」

「誰かの父兄では?」

「なんかレーピオに似てない?お兄さん?」

「特徴が一致してるし、父親じゃないかしら?とても若く見えるけどレーピオだってホビットとのハーフだし……」

「やばい、知らなかったとはいえ貴族相手に永華ちゃん達が思いきり不敬な態度とっちゃってる……」

 本当になにが起こってるんですか?ていうかお父様がトンチキな登場にしかたしてるみたいなんですけど、ほんとになんで?

 というか、さっきの言葉の意味って……。

「すまん、気持ちが先走ってしまった。私はレアルコ・アスクス、君たちの友人であるレーピオ・アスクスの父親だ」

 あ、考え込んでたら出るタイミング見失ってしまいました。

「え、えぇと……アタシ達に何のようでしょうか?」

 ララさんが先陣を切っていきましたが、これはお父様のことを警戒していますね……。

「あぁ、うちの変態息子と、レーピオとこれからも仲良くやってほしいという話だ」

「実の父親にも変態扱いされてんのか、アイツ」

 ベイノットくんから呆れの声が聞こえてきました。

「君たちのその様子ならばレーピオの変態性のこともしっているんだろう。だが、それをしってもなお友人であってほしいのだ」

「いや、レーピオのやつが変態であれ変態でなかれ仲良くしますけど、そもそもなんでそんな話になったんですか?」

 ローレスくんに言われてなにも説明していないことに気がついたお父様は咳払いをしてたたずまいを直す。

「あぁ、その話からすべきだな。いやなに、レーピオは昔から頭がよく礼儀ただしいのだが唯一の欠点があの変態性でな。小さい頃に殺されかけた結果身に付けた身を守る術なのだろうが……振る舞いが振る舞いなだけに、まともに友人をつくったことがなくてだな」

 “殺されかけた”という言葉に、友人達はざわつく。

 まあ、友人の父親からいきなりこんな話が飛び出てきたら誰だって短い言葉のひとつや二つこぼしたくなるものでしょう。

「つまりピオくんはボッチ?」

「言い方ァ!」

「あうっ!」

 メメさんの言葉で重たくなっていた空気が一瞬で霧散しました。

 メメさんはベイノットくんに軽いチョップを貰って涙目になっています。

「いや、事実だからいい」

「いいんだ……」

「あれでも顔はいいから縁談は来るんだが……。いかんせん相手がなあ。母親レベルの年の差に、たくさんのペットを飼っていると言う話を聞いたことのある人達が多くてな……」

 皆さんは、お父様に一言で“あぁ……”みたいな顔をしました。

 お年を召された加虐趣味の方が多いんですよ。

 僕はペットとしてじゃなくて、普通にレーピオとして愛でてほしいのでお断りしているんですよね。

 誰でもいいんじゃないんです、愛してほしいんです。

「と、これを話そうと思ったんじゃない。立ち振舞いのせいもあって表面上はなかが良さそうに見えても同世代からは敬遠されててな……」

 あらま、上手くやってたつもりなんですけどばれてましたか。

「え、あれ素じゃないってことですか?」

「身を守るための術ってどういうことですか?」

「てかそれ私たちが聞いてもいいのかな……」

「かまわん。十年近く昔のことだったんだが、当時のレーピオには君達のように中のいい友人がいたんだ。あれは、私たち大人が、もっとしっかりしていれば起こらなかったことなのだ……」

 ……。

 正確には九年前、僕は“友人”に殺されかけた。



 それは故意的なものではありませんでした。

 当時の僕は浅はかで、大人浅ましくて、おぞましい考えなんて微塵も知らない口が達者なだけの子供だった。

 今はよく覚えていないけれど、その“友人”と僕は事件が起きるまではとても仲良く遊んでいたと言う。

 記憶がないのはショックか何かのせいじゃないかなんて、家族は言う。

 確か“友人”は祖父とは旧知の仲である商会をやっている人物の孫だったはず。

 年も近くて、性別も一緒で、だから他の子供達に比べて仲が良かった。

 けれども、いつだったか“友人”が祖父に託されたと言って僕宛のお菓子を持ってきた。

 貴族の子供の癖に、友人が持ってきてくれたからと何の警戒心もなく、僕はパクリと渡されたお菓子を食べました。

 “友人”が、これはレーピオの者だから手を出してはいけない、なんて言いつけられているといっていた時点で疑っておけば良かったのに、食べてしまったんです。

 すぐにはなにもありませんでした。

 時計の針が一周したところ、僕は血を吐いてしまったんです。

 家は上から下への大騒ぎ。

 お菓子には毒が含まれていたんです。

 生死の境をさ迷いました。

 体が痛くて、苦しくて、けれども背筋を逆撫でする何かは気持ち良くて……。

 ずっと寝ては起きての繰り返し。

 昔から痛みには強い方でしたけど、今思えばきっとアドレナリンか何かが出ていたんでしょうね。

 僕は助かりましたし、後遺症も残りませんでした。

 強いて言うのならば被虐趣味が出来たことが後遺症になるんですかね?

 でも、これに関しては生来の者だと思うのでカウントしません。

 反抗の理由は妬みでした。

 スタートラインは同じだったはずなのに、自分は他だのそこら辺にいる商会長で、僕の祖父は功績を表されて貴族になった。

 貴族の優雅な暮らしを妬んだ“友人”の兄。

 お菓子に毒を練り込んだあたり計画的な反抗だったんでしょうけど、アスクス家の子供と一番仲の良かったなにも知らない、しかも自分の孫、そして弟を使ったあたりお里が知れるというもの。

 “友人”の祖父は伝から毒を手に入れて、兄はそれをお菓子に仕込んだ。

 そして、“友人”を使った。

 “友人”に殺されかけたとは言っても、故意ではありませんでした。

 でもその事実はありました。

 “友人”の祖父と兄は捕まり、商会は潰され、“友人”は幼いながらに自分が何のために利用されたのかを知って心を病みました。

 僕は故意ではないとはいえ、毒を食べされられたことから“友人”が怖くなってしまいました。

 今、その“友人”がどうしているのはか知りません。

 僕は学びました。

 老若男女とわず警戒すべき者だとか、仮に仲のいい人が出来たとしても、いつかの“友人”のようなことが起きてしまうのだと。

 だから表面上は仲良くしても、人があまり近寄ってこないようにしました。
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