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子は鎹
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私が記憶を取り戻してから三日たった。
魔導警察が“モカノフ”について調べた結果、スラムがなくなる一年ほど前のこと、あちこちで“モカノフ”と名乗りスラムの住人を勧誘している姿が目撃されているという情報を得た。
勧誘の内容は様々で、勧誘されてついていった者達がどうなったかに関してはスラムの住人であることもあってわからなかったらしい。
他の勧誘されてない、又は断った人たちで現在の居場所がわかる人たちに関しては特に何も起こっていないそうだ。
そしてブレイブ家の動向についてだが、私の予想は裏腹にブレイブ家は巻き込まれた訳ではなく、この剣に深く関係しているようだった。
スラムを失くすさい、金をだし動いていた者の中にブレイブ家当主、ローシュテールの名が並んでいたのだ。
しかも、スラムを失くすために活動し出したのがモカノフが現れた自棄と合致している。
ここだけ見れば、モカノフとローシュテールが手を組んでいたと思うだろう。
だが、手を組んでいたわけではないと思う。
ローシュテールとモカノフが手を組んでいるとするのならば、私たちとローシュテールが争っているときに何もしないのは不自然に思える。
それに、あれだけやらかしているローシュテールと手を組むのはリスクが高すぎると思うのだ。
私なら薬の効果が現れて荒れ出す前ならばまだしも、荒れ出したら確実に手を切る。
あるとするなら体の良い駒として利用している程度だろう。
話は変わって、ローシュテールがスラムで何をしていたかと言う話になる。
どうも、前々からブレイブ家の近くに住んでいる研究者に頼まれていたらしい、魔法や魔法と脳の関係について調べるための施設を建てようとしたらしい。
それで、どうしたら良いかと考えていたら、丁度タイミングよく王国が西のスラムをどうにか解消しようとしていると言う話を聞いて手を貸す変わりに一部の土地を使って施設を建てたようだ。
今もスラムの建物が一部残っていて、複雑になっている箇所があるし、きちんとことが進んでいるかと言えば別だけどね。
で、ローシュテールが建てた研究施設がどうなっているかっていうとローシュテールが昏睡状態になってから土地や建物の権利者がいなくなったものだから一時的に動きを止めているのだそうだ。
それに、おかしくなったローシュテールがなにもしてないとは言えないわけだしね。
研究者達は別の研究施設に移って研究を続けており、そこに関しては特に何か異変が起こっていると言うわけもなく平和に研究を続けているようだ。
「すくなくとも、モカノフとローシュテール、その後ろで動いてるSDSは関係あるってことなんだな」
「下手したら全部繋がってるかもしんねえってことかよ……」
「そうだよ」
もしかしたら憤怒の薬と強欲の薬を売っていたもの達も関係しているかもしれないけどね。
アイツらのアジトはローシュテールの屋敷に近く、研究施設からは遠いといった立地だけど、モカノフがご禁制の魔法薬である“神秘の魔法薬”を私に使ったことを思うと同じご禁制になりうる効果をもつ薬同士、関係していないとは思えなかった。
「でも、お父様がモカノフと繋がっている確証はねえんだろ?」
「それをこれから確認しに行くのに、ここに来てるんですよ」
情報を得てから、さらに二日。
私たちがいるのはローシュテールと衝突したあとに入院することになった病院であり、ローシュテールとローザベッラ婦人が今もなお入院している病院である。
ローシュテールとモカノフが接触していたかどうか、それを調べるのは魔導警察にまかせれば良いといわれてしまうかもしれないが、そうもいかない訳があった。
ララ経由で騎士に情報を頼み、頼んでいたブレイブ家の動向について書かれた手紙がきたのだが、別の便箋にあることが書き記されていた。
それは“魔導警察や騎士団の中に妨害工作をしているものがいるかもしれない”といった内容だった。
騎士曰く、操作の進みが遅いのだと言う。
通常の行方不明者の捜索ならば、犬に匂いを覚えさせて匂いを追わせたり、魔法でその場の過去に起きた出来事を見たりするのだが、どれもうまく行かない
犬に匂いを追わせてみても途中で匂いは途切れてしまい、魔法で過去の光景を見ようとしてもノイズがかかってしまい見れない。
モカノフが対策を打っているとも考えられるが、それだけでは説明しきれない事象が起きていた。
篠野部の捜索中にメルリス魔法学校の生徒とアスロンテ軍学校の生徒が喧嘩を起こしたり、森から魔獣がやって来たり、何かしらの小規模でありながらも放置することができない事案が多発していた。
単純に、タイミングが悪いと最初は思っていたそうだが何度もにたようなことが続くうちに騎士は妨害工作をされているのではないかと思うようになっていた。
これを感じたのは騎士だけではないようなのだが、どこからかフォローが回ってきているのか、自分の気のせいで片付ける者がほとんどだった。
だから魔導警察に調べてもらうわけにも行かず、こうやってロンテ先輩とローレス、ベイノットを連れ出して病院にまできているのだ。
「すみません。先輩に、こんなことに付き合わせてしまって……」
「別にいい。それに、そのモカノフってやつらは仇みたいなものなんだろ?だったらいくらでも手伝ってやる」
モカノフが強欲の薬や憤怒の薬と関係しているとするのならば、平和と健全な状態であったブレイブ家を破壊したかもしれない、ある種の仇であるかもしれないと、ロンテ先輩は認識しているようだ。
ローレスとベイノットがいる理由だが、これに関しては護衛をかねている。
表向き私も護衛の一人なのだ。
無論止められはしたが、体がなまってしかたがないだとか、町の地形を忘れてしまいそうだとか、駄々をこねてなんとか外出する権利を獲得した。
そうこう話しているうちにローザベッラ婦人がいる病室にたどり着いた。
病室の中に入れば、前にあったときよりも凛とした雰囲気のローザベッラ婦人がベッドの上で座っていた。
「よくいらっしゃいましたわ。体が言うことを聞かなくて、この状態になっていること、許してちょうだい」
「気にしないでください。私たちが先輩に頼んで押し掛けてんですから」
私が最後にあったのはパーティー会場にいったときだったか。
あの時はツンケンして、気難しそうだと思っていた。
そのあと、ヤバイ人と言う印象しかなかったが、性格の変化も薬が影響してのことで薬を抜き出してからは大分落ち着いたらしい。
ただ、完全に薬が抜けきったと言うわけではないから未だに情緒不安定名部分があるんだそうだ。
前の状態からはそう簡単に想像できない、穏やかなただの親子の会話が終わると、私たちが話す番になった。
「それで、私にいったいどんなご用なのかしら?」
「聞きたいことがあってきました」
本当はローシュテール本人に聞ければよかったのだけれど、今も眠ったままだから聞けない。
「モカノフと言う人物について、何か知っているこはありませんか?」
さすが貴族と言うべきなのだろうか、表情ひとつ変わることは無かった。
「……数年前に、主人の口から聞いた記憶がありますわ」
「それは本当ですか?」
「勿論、神に誓えますわ」
やっぱり、ローシュテールはモカノフを知っていたんだ。
「モカノフについて何かいっていませんでしたか?」
「そうですわね……。確か、“いい取引ができそうだ”と言っていたかと」
いい取引……?
その意味はわからないが、ローシュテールはモカノフと繋がっていたのは確定した。
それだけでも十分だと思うべきかな。
「なるほど。お答えいただき、ありがとうございます」
「いえ、私や主人が迷惑をかけたことを考えるとお安いものですわ」
この人、アーネチカさんを側室にすることを受け入れたことといい、今回のことといい、素の性格はとても善性が強い人間なのかもしれない。
それを考えると憤怒の薬も強欲の薬も、とても恐ろしいものだ……。
何であんなのを作ったんだか……。
魔導警察が“モカノフ”について調べた結果、スラムがなくなる一年ほど前のこと、あちこちで“モカノフ”と名乗りスラムの住人を勧誘している姿が目撃されているという情報を得た。
勧誘の内容は様々で、勧誘されてついていった者達がどうなったかに関してはスラムの住人であることもあってわからなかったらしい。
他の勧誘されてない、又は断った人たちで現在の居場所がわかる人たちに関しては特に何も起こっていないそうだ。
そしてブレイブ家の動向についてだが、私の予想は裏腹にブレイブ家は巻き込まれた訳ではなく、この剣に深く関係しているようだった。
スラムを失くすさい、金をだし動いていた者の中にブレイブ家当主、ローシュテールの名が並んでいたのだ。
しかも、スラムを失くすために活動し出したのがモカノフが現れた自棄と合致している。
ここだけ見れば、モカノフとローシュテールが手を組んでいたと思うだろう。
だが、手を組んでいたわけではないと思う。
ローシュテールとモカノフが手を組んでいるとするのならば、私たちとローシュテールが争っているときに何もしないのは不自然に思える。
それに、あれだけやらかしているローシュテールと手を組むのはリスクが高すぎると思うのだ。
私なら薬の効果が現れて荒れ出す前ならばまだしも、荒れ出したら確実に手を切る。
あるとするなら体の良い駒として利用している程度だろう。
話は変わって、ローシュテールがスラムで何をしていたかと言う話になる。
どうも、前々からブレイブ家の近くに住んでいる研究者に頼まれていたらしい、魔法や魔法と脳の関係について調べるための施設を建てようとしたらしい。
それで、どうしたら良いかと考えていたら、丁度タイミングよく王国が西のスラムをどうにか解消しようとしていると言う話を聞いて手を貸す変わりに一部の土地を使って施設を建てたようだ。
今もスラムの建物が一部残っていて、複雑になっている箇所があるし、きちんとことが進んでいるかと言えば別だけどね。
で、ローシュテールが建てた研究施設がどうなっているかっていうとローシュテールが昏睡状態になってから土地や建物の権利者がいなくなったものだから一時的に動きを止めているのだそうだ。
それに、おかしくなったローシュテールがなにもしてないとは言えないわけだしね。
研究者達は別の研究施設に移って研究を続けており、そこに関しては特に何か異変が起こっていると言うわけもなく平和に研究を続けているようだ。
「すくなくとも、モカノフとローシュテール、その後ろで動いてるSDSは関係あるってことなんだな」
「下手したら全部繋がってるかもしんねえってことかよ……」
「そうだよ」
もしかしたら憤怒の薬と強欲の薬を売っていたもの達も関係しているかもしれないけどね。
アイツらのアジトはローシュテールの屋敷に近く、研究施設からは遠いといった立地だけど、モカノフがご禁制の魔法薬である“神秘の魔法薬”を私に使ったことを思うと同じご禁制になりうる効果をもつ薬同士、関係していないとは思えなかった。
「でも、お父様がモカノフと繋がっている確証はねえんだろ?」
「それをこれから確認しに行くのに、ここに来てるんですよ」
情報を得てから、さらに二日。
私たちがいるのはローシュテールと衝突したあとに入院することになった病院であり、ローシュテールとローザベッラ婦人が今もなお入院している病院である。
ローシュテールとモカノフが接触していたかどうか、それを調べるのは魔導警察にまかせれば良いといわれてしまうかもしれないが、そうもいかない訳があった。
ララ経由で騎士に情報を頼み、頼んでいたブレイブ家の動向について書かれた手紙がきたのだが、別の便箋にあることが書き記されていた。
それは“魔導警察や騎士団の中に妨害工作をしているものがいるかもしれない”といった内容だった。
騎士曰く、操作の進みが遅いのだと言う。
通常の行方不明者の捜索ならば、犬に匂いを覚えさせて匂いを追わせたり、魔法でその場の過去に起きた出来事を見たりするのだが、どれもうまく行かない
犬に匂いを追わせてみても途中で匂いは途切れてしまい、魔法で過去の光景を見ようとしてもノイズがかかってしまい見れない。
モカノフが対策を打っているとも考えられるが、それだけでは説明しきれない事象が起きていた。
篠野部の捜索中にメルリス魔法学校の生徒とアスロンテ軍学校の生徒が喧嘩を起こしたり、森から魔獣がやって来たり、何かしらの小規模でありながらも放置することができない事案が多発していた。
単純に、タイミングが悪いと最初は思っていたそうだが何度もにたようなことが続くうちに騎士は妨害工作をされているのではないかと思うようになっていた。
これを感じたのは騎士だけではないようなのだが、どこからかフォローが回ってきているのか、自分の気のせいで片付ける者がほとんどだった。
だから魔導警察に調べてもらうわけにも行かず、こうやってロンテ先輩とローレス、ベイノットを連れ出して病院にまできているのだ。
「すみません。先輩に、こんなことに付き合わせてしまって……」
「別にいい。それに、そのモカノフってやつらは仇みたいなものなんだろ?だったらいくらでも手伝ってやる」
モカノフが強欲の薬や憤怒の薬と関係しているとするのならば、平和と健全な状態であったブレイブ家を破壊したかもしれない、ある種の仇であるかもしれないと、ロンテ先輩は認識しているようだ。
ローレスとベイノットがいる理由だが、これに関しては護衛をかねている。
表向き私も護衛の一人なのだ。
無論止められはしたが、体がなまってしかたがないだとか、町の地形を忘れてしまいそうだとか、駄々をこねてなんとか外出する権利を獲得した。
そうこう話しているうちにローザベッラ婦人がいる病室にたどり着いた。
病室の中に入れば、前にあったときよりも凛とした雰囲気のローザベッラ婦人がベッドの上で座っていた。
「よくいらっしゃいましたわ。体が言うことを聞かなくて、この状態になっていること、許してちょうだい」
「気にしないでください。私たちが先輩に頼んで押し掛けてんですから」
私が最後にあったのはパーティー会場にいったときだったか。
あの時はツンケンして、気難しそうだと思っていた。
そのあと、ヤバイ人と言う印象しかなかったが、性格の変化も薬が影響してのことで薬を抜き出してからは大分落ち着いたらしい。
ただ、完全に薬が抜けきったと言うわけではないから未だに情緒不安定名部分があるんだそうだ。
前の状態からはそう簡単に想像できない、穏やかなただの親子の会話が終わると、私たちが話す番になった。
「それで、私にいったいどんなご用なのかしら?」
「聞きたいことがあってきました」
本当はローシュテール本人に聞ければよかったのだけれど、今も眠ったままだから聞けない。
「モカノフと言う人物について、何か知っているこはありませんか?」
さすが貴族と言うべきなのだろうか、表情ひとつ変わることは無かった。
「……数年前に、主人の口から聞いた記憶がありますわ」
「それは本当ですか?」
「勿論、神に誓えますわ」
やっぱり、ローシュテールはモカノフを知っていたんだ。
「モカノフについて何かいっていませんでしたか?」
「そうですわね……。確か、“いい取引ができそうだ”と言っていたかと」
いい取引……?
その意味はわからないが、ローシュテールはモカノフと繋がっていたのは確定した。
それだけでも十分だと思うべきかな。
「なるほど。お答えいただき、ありがとうございます」
「いえ、私や主人が迷惑をかけたことを考えるとお安いものですわ」
この人、アーネチカさんを側室にすることを受け入れたことといい、今回のことといい、素の性格はとても善性が強い人間なのかもしれない。
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