苦手な人と共に異世界に呼ばれたらしいです。……これ、大丈夫?

猪瀬

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子は鎹

205 危険物!?

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永華視点

篠野部を支えつつ、敵のアジトから脱出できる場所を探しながらあわよくばヘラクレスの無実の証拠や私たちを狙う理由を知れればいいと歩き回っていたときだ。

 ある部屋を見つけた。

 他の部屋に扉の作りがしっかりとしている。

「確実に何かあるな。キャシーの部屋じゃないから……モカノフあたりか」

「なら重要書類とかあるかな?あ、キャシーの部屋の方が目当てのもの見つけやすい?」

「いや、ない。あの散らかった部屋には書類なんか一枚もなかったし、あれが書類仕事をできるようには思えないな。完全にクソガキだ」

「篠野部って存外口悪いよね」

 むしろ、ここまで言わせてるキャシーがすごかったりするんだろうか……?

 というか、篠野部が見たことあるのがキャシーの私室で仕事部屋は別にあるんじゃないかな……。

 そう考えたけど、目的のものが手に入るのならばモカノフでもキャシーでも、どうでも良かったから推定モカノフの部屋にはいることにした。

 だが扉が開くことはなかった。

 うん、まあ、そうなるよね。

 鍵束のどれかを使えばいけるかな?と思って使ってみても、どれもこれも外れで推定モカノフの部屋に使えるだろう物は無かった。

「ダメか……」

「君、針金も自己魔法の範囲内だったりしないかい?できたらピッキングみたいなことできるだろう」

「え、持ってないからわかんない。そもそもその発想がなかった」

「僕も今思い付いた」

 紐状の物を操るから、できなくもなさそうだけど……。

 なんか犯罪に使えそうだから、針金のことは忘れてしまってもいいだろうか。

 ともかく、どうにかこうにか扉を開けなければ先には進めない。

 運が良ければ、ここの地図が手に入るかもしれないから入りたいんだけど……。

「ん~……」

「蹴り上げるなよ。音でバレる」

「わかってるよ」

 流石にこの状態で蹴り開けるなんてしないよ。

 それはそうと、篠野部の自己魔法で扉を熱で切ってしまえば音もたてずに開けることはできるかもしれないけど、今の篠野部は魔法を使わない方がいいから無しだな。

 糸を向こう側に通して鍵を開けたりできないかな……。

 そう思って糸を取り出して試行錯誤してみる。

「ん~……」

 糸なんて柔いものだから上手く解錠できないな……。

 鍵穴に糸をさしこんでピッキングの真似事をしたって今みたいに柔いせいで上手くできないんだろうな……。

 扉を開けられそうな方法……。

「う~ん……」

「解錠魔法は?」

「上手く使えないんだよね。魔方陣もうるおぼえで……」

 こんなことが起きるなんて思っても見なかったし、最悪蹴破ればいいと思たかし、早々使うことなんて無いと思ったから覚えるの後回しにしたからこうなってるんだよなあ……。

 過去の自分の行いを悔いたいと思いつつも、こんなことになるとか早々予想できないから仕方ないと思う。

「僕が使える」

「死ぬギリギリまで魔力を吸い取られてるのに何言ってんの……」

「だが、他に方法はない」

「魔方陣は覚えてる?」

「あぁ、だが口頭で伝えて君が作るなんて無理があるだろう」

 確かに、極端な話しになるけど要は複雑な図形を作らなければいけないんだから口頭で説明して作るのは無理があるか……。

 一旦、ここは諦めるにして、どうしようか……。

「……」

 どうしようか頭を悩ませていると、ふと対面にある部屋が気になった。

 立ち上がって、おもむろにドアノブを捻ってみると開かない。

 なら、鍵束は?

 鍵を差し込んで回す。

 カチャン__

「……開いた」

「なんでそこに入ろうとしてるんだ?」

「いや、なんとなく……。勘?」

「……開けてみろ」

「うん」

 篠野部は私の勘を少しでも信用足り得るものだと思ってくれてるらしい、言われるがままに扉を開けてみると、そこは武器庫のようだ。

「うわ、物騒」

「犯罪組織なんだから妥当だろ」

 それもそうだけど、剣に斧に弓矢、槍、三節紺、刃渡り大きさ色々なナイフ、あとはでかいハサミ、モーニングスターなんかの様々な種類の武器が取り揃えてあった。

「外れたか?何か使えそうなもの……」

「フラフラの篠野部が、児野へや歩き回るの怖いからやめて」

 動こうとする篠野部を無理矢理待機させて、私は部屋のなかに使えそうなものがないか物色することにした。

 やっていることは空き巣だけど、背に腹はか得られないし、先に手をだしたのは向こうだから……。

「ん~、マジで武器しかないな」

 武器庫に鍵があるわけ無いし、使えそうなものと言えば薄目の剣をバールの変わりに使うことなんだけど、それすらもうまく行くかは微妙だし……。

「ん?あれ?……なんで、これがここに……」

 使えそうなものを、そうやって武器の山を掻き分けていると見覚えのある丸くて緑色の危険物が目に入った。

 なんで、こんな危ないものがここに……。

 確かに武器庫だからあるのは違和感ないけど、銃すらもない、この世界の科学力的に有るのはおかしいんじゃ……。

 カン、カン__

 小さい音が聞こえて慌ててしまい、危険物を取り落としてしまいそうになる。

 落とさなかったことに安堵して、使えるかも?と思いポケットにいれていくことにした。

 それから音の正体を知ろうと振り向いたら、手に小さいナイフをもって、それを推定モカノフの部屋の扉に突き立てている篠野部がいた。

「え、どうした?おかしくなった?」

 二ヶ月以上も閉じ込められて、死ぬ手前ぐらいまで魔力を吸い取られていたんだから奇行に走るのも納得できるけど、今は勘弁してほしい。

「失礼だな。魔方陣を掘ってるんだよ」

「魔方陣?」

 篠野部の手元を覗き込んでみると、確かに魔方陣をナイフで扉に描いているようだった。

「これ……」

「解錠魔法のものだ」

「なるほど、これならそこまで派手にならないね」

「少し音は出るがな。まさか、護身用にかったナイフをこんな使い方することになるなんてな。武器庫に放り込まれてたのも運が良かった」

 淡々と魔方陣を掘っていく篠野部の邪魔をしないように周囲に音に釣られて誰か近づいてきていないか警戒する。

 そのうち魔方陣が出来上がり、篠野部が魔力を注ごうとしたところで止めた。

「頼るくらいしてくれても良くない?」

「温存しないといけないだろう」

「魔力ギリギリしかない篠野部に言われたくないね」

「……」

 黙った篠野部を放置して魔方陣に魔力を注ぎ込む。

 少し加減が難しかったから、苦戦して時間がかかってしまったけど、なんとか鍵が開いた。

「よし、開いた」

「そうか。本当に魔法が戻ったんだな」

「先生たちのお陰」

 扉を開いて中を覗き込む。

 事前に確認してたが、やっぱりこの部屋には誰もいないらしい。

 中は整理整頓されていて、埃一つないかもしれないくらい綺麗だ、仕事机の上には書類が乗っかっているのが見えた。

 罠に警戒しつつ、机の上に乗っかった書類の内容を見てみることになった。

「これは違う。これも違う。こっちも、これも、どれも違う。……む、“ヘラクレス・アリスの擬装死の報告書”ってことは、これか」

「お、見つけた!?」

 篠野部のもとに駆け寄ってみれば、小難しい内容も文章だった。

 だがタイトルは理解できた。

 間違いない、モカノフ達がヘラクレスの冤罪を作り出した証拠だ。

「そっちはどうだ?」

「あったよ。これ」

 私が差し出したのはコンバットナイフ、この世界に本来ならばあるはずもない代物であり、報告書の内容からして凶器はこれだったに違いないだろう。

「コンバットナイフ?なんでこれがここに……」

「私たち以外の皇さん達とは違う、私たちみたいな非正規って言えば言いかな?そんな感じで転移してきた人間が、使ってたっているのならおかしくはないでしょ」

「……なるほどな。その同郷はずいぶんと腕がいようだ。報告書を見る限り、ほぼ一発で仕留めているらしい。確実に堅気じゃない」

「は~、関り合いになりたくない……」

 篠野部から報告書をもらい受け、コンバットナイフを部屋の中に部屋のなかに放置されたままのタオルを使ってくるみ、鞄中にいれる。

 持ってきていた転移魔法を応用した魔法がかけられている鞄の中で魔法が発動して相手方、カリヤ先輩達のところに転移された。

 これで目的のうち、一つを達成した。

「……ん?僕たちの書類か」

 篠野部が見つけたのは私たちについて書いている報告書らしいのだが、内容は私たちの生年月日とか血液型らしい。

 他にもあるが私たちが関与していたとされる事件ばかりだ。

 まるでストーカーのようで、気味が悪い。

 私たちを狙っている理由は書類を読む限りは篠野部は何かしらの儀式に使いたいらしく、私に関しては呪術に使うとかなんとか……。

 私に関してはあってもなくてもいいらしい、なんか失礼だな。

 ん~、でもこれあれだな。

 詳しいことなにも書いてないから情報が増えないな。

 増えた情報と言えば、計画には魔獣人とやらが必要になる今は隠れてしまっているから見つからないってところかな。

 あと、もう一人、人間の方も探しているみたいだけど……。

 なんか怨み節が濃いな……。

「……ねぇ」

「なんだ……?」

SDSセブン・デットリー・シンズって、ただの噂じゃなかったっけ?」

「そう聞いたんだがな……」

 書類に書かれた組織名、そこにはSDSセブン・デットリー・シンズと書かれており、どうもきな臭い。

「だが、ローシュテールも、その名を口にしていたな」

「あ~……もしかして、物語とかでよくある主人公達が敵対する闇に隠れて蠢く巨悪って感じ?」

「多分、そうだな……」

 ……こういうの、物語のなかだけにしてほしいな。

 カツン__

 静かな空間に足音が響いた。

 もしかして誰かこの部屋を見にきたのかと思ったが、黒服が部屋の前を一人が通りすぎていっただけだった。

 背中が見えなくなったのを確認して、早いところ出ていくことにする。

「……早く行こうか」

「あぁ……」

 そうしていくらか進むと出口らしき階段が見えたと同時に、露出の多い服をきた中性的な人物が筆頭に、黒服達が現れて通せんぼしていた。

「おっと……」

「最悪だ……」

「キヒヒ」

 冷や汗が流れ、不気味な笑い声がアジトに響いた。

 どうやら私たちの動きが読まれていたのか、ここにたどり着くことはわかっていたことらしい。
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