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異世界旅行
228 技術
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あれからダンジョンから出て、ギルドで一角鷲の角を換金して宿屋に戻った。
ダンジョンの外はパンドラの遺産の影響で大慌てになっているのではないかと思っていたのだが、どうも私たちのいた階層でパンドラの遺産が発生__と言うか、現れたらしく、他にもダンジョンの下層に人があまり入っていない状態だったのも理由だろう。
まあ、仮に私たち以外にダンジョンに人がいたとしても、パンドラの遺産の影響で軒並み死んでしまっていそうだけれど……。
そう考えると、やっぱりパンドラの遺産ってなかなかにヤバイよね。
振り返りも程ほどにして、私たちは同じ宿屋に宿泊していると言うこともあり、バレンティノ夫婦のとっている部屋に集まって話をすることになった。
年のために、人に聞かれたりしないように防音なの魔法をカムラさんにかけてもらった。
「薄々思っていたが、世界規模だとはな……」
「はは、じゃなきゃ軍や魔導警察には入れていないよね……」
「それどころか、僕らのいた世界の武器を再現している時点で魔法と武を主としているメルトポリア王国以外の工業力のある国と繋がりがあるって言っているようなものだからな」
私がキャシーと初めてあう、ちょっと前に武器庫で見つけた手榴弾ね。
多分、もっと探れば銃とか見つかったんじゃないかな……。
キャシーがブラックブレスなる黒いワイバーンを使っていたブレスの劣化バージョンを使ったことによって周囲一体が吹き飛んだせいで確認もなにもできなくなっちゃったから手榴弾以外は作られているのかわからないけどね。
いや、シマシマベアーに強欲の薬が使われたときに銃が使われていた可能性があったのか……。
「まあ、量産はできていなそうだけど」
「そうなの?」
「魔法ばりの威力を誇るものなんてざらにあるだろ?グレーネード、地雷、火炎放射器。他にも、魔法の詠唱時間の問題やわざわざ近づくことなく相手を蜂の巣にできる技術があるんだから使わないわけないだろう?戦争だって刀や槍から銃に進化していったんだから」
確かに……。
「やつらのことだから量産できているのなら使っているだろうな。さすがに技術力に差がありすぎて一つ一つ作るのに時間がかかるんだろう」
よくよく考えれば鉄とか合金とかプラスチックとかを使うんだから、この世界の技術力を考えれば必然だよね。
それどころか、異世界の技術を使おうとしているんだから大々的に工場を建てたら政治的に色々と面倒なことになるだろうし、規模は必然と小さくなって場所も限られるから量産体制もできないよね。
異世界の技術を使うってなると悪目立ちはするし、簡単に見つかってしまうだろうし……。
あれ?でも、国の発展のことを考えると異世界の科学技術を輸入した方が戦争とかで有利になって国としては都合が良いのでは?
「今ふと思ったんだけど、なんで異世界の技術を輸入しないの?」
「簡単な話、世界の根幹から違うからだ。そんなことをしたら異世界に依存せざる終えなくなるからだ。穀物が作れない国が貿易で他国に依存する、そんな感じでな」
「そうなると、どうなるの?」
「都度都度、異世界の者を喚ばないといけなくなる。けれど確定で知識のあるものを喚べる方法はないし、かけで喚んだとしてもコストが高すぎることになるし異世界の者の人権がなくなる」
え?人権なくなるの?
……いや、わざわざ高い資材を払って喚んだ人が知識を持っていないとなると喚んだ人たちは資材が無駄になったと思ってしまいそうだよね。
そうなると、扱いが悪くなるのも必然……なのか?
「これをやると、召喚のコストとその後の利益を考えると圧倒的に釣り合わないんだよ。国が、というか国を回すための機関が潰れるんだ。実際に潰れた国が過去にあってだな……」
リアルでラノベみたいなことって起こるんだね……。
「しかも、この世界は魔法有りきで存在しているが、君たちの世界は話によれば魔法は存在していないのだろう?」
「そうね?」
「例え話だが、足だけの使うスポーツに手と足を使うスポーツをしてる者を入れると、どうなると思う?」
「間違いなくトラブルが起こるね?そもそもルールが違うし。……つまり世界単位でトラブルが起こるってこと?」
「ちょっと違うがな。異世界の技術を輸入すると公害を処理する技術がなかったり、そもそも公害に対する知識がなかったり、金属と金属を混ぜて作る金属?があるだろう?」
「合金ですね」
なんか色々混ぜて頑丈で軽い金属を作ったりするやつだよね。
ジュラルミンとかアルミとかね。
「そうそれ。君たちの世界では混ぜても何ら問題ないものだろうけど、この世界だと違う。鉄でも銅でも魔法的要素を持っていて、混ぜると魔法的効果が現れる」
「錬金術の類いですか?」
「そうだ」
「異世界の技術のために合金を作るとなると毒を持っていたり爆発したり……リスクが高すぎるし、物を作る前に必要なものがこの世界では使えないことが判明して計画が頓挫するんだよ」
なるほど、そもそもの話、同じ状況にできたないのか。
「だからあまり異世界の技術を輸入できないし、しないんだ。仮に輸入したとしても代打の物を見つけなければいけないし、危険が伴うから作ることもままならないのが現状だな。だから量産できるわけもないんだ」
「仮に作れたとしても、うまく発動するかは別物みたいだしね」
「そこら辺を考えると、魔法を使った方が色々と良いんだ。コストや時間、威力を考えると妥当だな」
なるほど……。
「あれ?カルタのは?」
「僕のは大丈夫だろう。テコの原理を使った機会仕掛けの弓矢といったらこれが出てきて、解くに原理とかは説明してないから」
「そっか」
ん?と言うことは……。
あれ?私がキャシーのアジトで見つけた手榴弾って私の知ってる手榴弾よりもヤバイ代物だったんじゃないの?
ていうか、あれ使う前に誤爆してた可能性すらあるよね?そもそも爆発しなかった可能性すらあるよね?
まともに機能したの、わりと奇跡だったんじゃ……。
気がついたとたん、すうっと体から血の気が引いてきた。
「永華?」
「私、キャシー相手に手榴弾使ったよね?」
「……使ってたな」
あの時のことを思い出したのか、カルタの顔色も血の気が引いたものになっていく。
あの時、この事実を知らなくて良かった……。
いや良くなかったのか?
「うわあ……。知らなかったとはいえ危ない橋渡ってた」
「こわ……。そなたら運が良いのか悪いのかわからんな……」
「犯罪組織に絡まれてる時点で運は良くないと思うよ?」
それはそう。
そもそも、いきなり異世界から喚ばれて森に放り出されてる時点で運なんてものは息してないと思うんだよね。
「あ~、知らない知らない。私知らない、そんなの。別の話しようよ」
「別の話?暴食の話するか?」
「物騒だけど、さっきの話よりまし……」
この先、会うかもしれない幹部の情報を知っておくことは良いことだからね。
下手すれば私たちが爆発してた事実なんて知らないんだ。
「いつもローブを被って、水晶越しで現れるから詳しいことはわからないがそなたらぐらいの年のころで、小さい方と同じぐらいの身長、あと性別も同じだな。喋り方を考えれば貴族かなにか、良いところの出だろうな」
水晶越し?テレビ電話みたいなものなのかな?
「対話するときは水晶を持たせた使いを寄越すんだ。使いの方は全く喋らないから詳しいことはわからんが、獣じみた動きをするな」
「いくら水晶越しでも使いが来てるんだから俺は行って欲しくないんだけどね~?」
キノさんがカムラさんに笑顔で圧をかけるがカムラさんは気まずげに目を反らす。
「し、仕方ないだろう。いつもいつも一人になったタイミングで来るんだぞ」
「逃げてよ」
「逃げるは恥……」
「死ぬよりましでしょ」
悪魔なのに武士じみた精神してるな……。
「……いつも「いい加減、封印を解く方法を教えろ」しかいわないし、最近は言葉では無理だとわかっているのか、実力行使が多くなってきてるから会う機会はほとんどないがな」
ふ~ん、犯罪組織に所属しているわりに暴食の幹部は比較的対話でどうにかしようとするタイプなのか。
「ただまあ、どうも、百年近く声が変わらないから長寿な種族なのかもしれんな」
そういえばキャシーも魔族だったな。
やっぱり、長い間続いてる犯罪組織なだけあって長寿な種族が多いんだろうか。
そうして、一通りSDSの話が終わったころ、キノさんがある提案をしてきた。
「そういえば、永華ちゃんの武器って壊れてたよね?」
「え?あぁ、木刀ですか?確かに枯れてたな……」
木刀が枯れるって言うのも、なんか言葉としておかしいけど事実なんだよな。
「まあ、あれも作ろうと思えば魔法で作れますし、魔法で強化できるから別に良いんですけど……。やっぱり、ダンジョンに木刀は無いですよね。でも私が扱える剣がないんですよ。西洋剣と日本刀じゃ色々と違いすぎて……」
「確かに、木の棒は無謀かなとも思ったけど魔法で強化して中々の切れ味だったから最初の方や雑魚相手に使う分には大丈夫だと思うよ?でも、それが通じない相手はこれからも出てくると思うんだよね」
「ですよね~」
「こいつ、剣は扱えないと言って握らないんですよ。まぁ、重さも攻撃の方法も違うので仕方がないと思いますけどね。専門外の武器を持たせて怪我をされても困るので」
「刀は斬る、剣は叩き潰す……いや、斬るのと突きなのかな?ん~、何て言えば良いかわからないけど、そもそも扱い方が違うんですよね。ホントにカルタの言う通り専門外で、単純な強度なら剣ですけど切れ味は刀……みたいな?」
私、西洋の剣には詳しくないから、明確な違いを説明しろと言われてもなにも言えないんだよね……。
明確な違いを言えるとするならば重さ、両刃か片刃か、反りの有り無し、あとは刃の厚さになるのかな?
「刀……極東の刀だね?確かに、剣と刀じゃ扱いは違うだろうし、代打は効かないかもね。それに、東野方じゃないと売っていないから買えないし」
「なら、あの刀をもした木はどこで買ったのだ?そこで買えば良かろう?」
「木刀しか売ってなかったんですよ。そもそも、日之出は調味料とか食材がメインなので」
むしろ、よく木刀が売ってたなって感じ。
もどきよりも木刀の方が振り心地よくて重宝してたんだけどね。
いまさらメルトポリア王国に戻るわけにも行かないし。
「じゃあ、俺たちこれからアルバシェラ公国に向かうんだけど、一緒に行かない?」
「え?」
アルバシェラ公国って神鋼龍と取引をしている国だよね?武器とか防具も神鋼龍の鱗で作ってるロマンの塊みたいな国だよね?
「永華が行きたがっていたので近々行こうと言う話にはなっていましたけど、良いんですか?夫婦二人の時間を邪魔することになると思うんですけど……」
「永華ちゃん、スッゴい目がキラキラしてるね。まぁ、これも何かの縁。ちょうど俺たちも行こうと思ってたところだし、アルバシェラ公国の知り合いが刀を作ってたから紹介してあげるよ」
「いいんですか!?」
「近い」
「あ、すみません」
あまりにも魅力的な提案に勢いよく立ち上がりキノさんに詰め寄る。
距離が近くなったのでカムラさんがグイグイと私の肩を押して、押し戻そうとする。
「迷惑をかけたし、魔法を使えるとはいえちゃんとした武器がない子達だけにしておくのもね?」
「異世界の話を聞きたいから構わんぞ」
「シャッ!」
「ほんと嬉しそうだな」
次の行き先、アルバシェラ公国に決定!
ダンジョンの外はパンドラの遺産の影響で大慌てになっているのではないかと思っていたのだが、どうも私たちのいた階層でパンドラの遺産が発生__と言うか、現れたらしく、他にもダンジョンの下層に人があまり入っていない状態だったのも理由だろう。
まあ、仮に私たち以外にダンジョンに人がいたとしても、パンドラの遺産の影響で軒並み死んでしまっていそうだけれど……。
そう考えると、やっぱりパンドラの遺産ってなかなかにヤバイよね。
振り返りも程ほどにして、私たちは同じ宿屋に宿泊していると言うこともあり、バレンティノ夫婦のとっている部屋に集まって話をすることになった。
年のために、人に聞かれたりしないように防音なの魔法をカムラさんにかけてもらった。
「薄々思っていたが、世界規模だとはな……」
「はは、じゃなきゃ軍や魔導警察には入れていないよね……」
「それどころか、僕らのいた世界の武器を再現している時点で魔法と武を主としているメルトポリア王国以外の工業力のある国と繋がりがあるって言っているようなものだからな」
私がキャシーと初めてあう、ちょっと前に武器庫で見つけた手榴弾ね。
多分、もっと探れば銃とか見つかったんじゃないかな……。
キャシーがブラックブレスなる黒いワイバーンを使っていたブレスの劣化バージョンを使ったことによって周囲一体が吹き飛んだせいで確認もなにもできなくなっちゃったから手榴弾以外は作られているのかわからないけどね。
いや、シマシマベアーに強欲の薬が使われたときに銃が使われていた可能性があったのか……。
「まあ、量産はできていなそうだけど」
「そうなの?」
「魔法ばりの威力を誇るものなんてざらにあるだろ?グレーネード、地雷、火炎放射器。他にも、魔法の詠唱時間の問題やわざわざ近づくことなく相手を蜂の巣にできる技術があるんだから使わないわけないだろう?戦争だって刀や槍から銃に進化していったんだから」
確かに……。
「やつらのことだから量産できているのなら使っているだろうな。さすがに技術力に差がありすぎて一つ一つ作るのに時間がかかるんだろう」
よくよく考えれば鉄とか合金とかプラスチックとかを使うんだから、この世界の技術力を考えれば必然だよね。
それどころか、異世界の技術を使おうとしているんだから大々的に工場を建てたら政治的に色々と面倒なことになるだろうし、規模は必然と小さくなって場所も限られるから量産体制もできないよね。
異世界の技術を使うってなると悪目立ちはするし、簡単に見つかってしまうだろうし……。
あれ?でも、国の発展のことを考えると異世界の科学技術を輸入した方が戦争とかで有利になって国としては都合が良いのでは?
「今ふと思ったんだけど、なんで異世界の技術を輸入しないの?」
「簡単な話、世界の根幹から違うからだ。そんなことをしたら異世界に依存せざる終えなくなるからだ。穀物が作れない国が貿易で他国に依存する、そんな感じでな」
「そうなると、どうなるの?」
「都度都度、異世界の者を喚ばないといけなくなる。けれど確定で知識のあるものを喚べる方法はないし、かけで喚んだとしてもコストが高すぎることになるし異世界の者の人権がなくなる」
え?人権なくなるの?
……いや、わざわざ高い資材を払って喚んだ人が知識を持っていないとなると喚んだ人たちは資材が無駄になったと思ってしまいそうだよね。
そうなると、扱いが悪くなるのも必然……なのか?
「これをやると、召喚のコストとその後の利益を考えると圧倒的に釣り合わないんだよ。国が、というか国を回すための機関が潰れるんだ。実際に潰れた国が過去にあってだな……」
リアルでラノベみたいなことって起こるんだね……。
「しかも、この世界は魔法有りきで存在しているが、君たちの世界は話によれば魔法は存在していないのだろう?」
「そうね?」
「例え話だが、足だけの使うスポーツに手と足を使うスポーツをしてる者を入れると、どうなると思う?」
「間違いなくトラブルが起こるね?そもそもルールが違うし。……つまり世界単位でトラブルが起こるってこと?」
「ちょっと違うがな。異世界の技術を輸入すると公害を処理する技術がなかったり、そもそも公害に対する知識がなかったり、金属と金属を混ぜて作る金属?があるだろう?」
「合金ですね」
なんか色々混ぜて頑丈で軽い金属を作ったりするやつだよね。
ジュラルミンとかアルミとかね。
「そうそれ。君たちの世界では混ぜても何ら問題ないものだろうけど、この世界だと違う。鉄でも銅でも魔法的要素を持っていて、混ぜると魔法的効果が現れる」
「錬金術の類いですか?」
「そうだ」
「異世界の技術のために合金を作るとなると毒を持っていたり爆発したり……リスクが高すぎるし、物を作る前に必要なものがこの世界では使えないことが判明して計画が頓挫するんだよ」
なるほど、そもそもの話、同じ状況にできたないのか。
「だからあまり異世界の技術を輸入できないし、しないんだ。仮に輸入したとしても代打の物を見つけなければいけないし、危険が伴うから作ることもままならないのが現状だな。だから量産できるわけもないんだ」
「仮に作れたとしても、うまく発動するかは別物みたいだしね」
「そこら辺を考えると、魔法を使った方が色々と良いんだ。コストや時間、威力を考えると妥当だな」
なるほど……。
「あれ?カルタのは?」
「僕のは大丈夫だろう。テコの原理を使った機会仕掛けの弓矢といったらこれが出てきて、解くに原理とかは説明してないから」
「そっか」
ん?と言うことは……。
あれ?私がキャシーのアジトで見つけた手榴弾って私の知ってる手榴弾よりもヤバイ代物だったんじゃないの?
ていうか、あれ使う前に誤爆してた可能性すらあるよね?そもそも爆発しなかった可能性すらあるよね?
まともに機能したの、わりと奇跡だったんじゃ……。
気がついたとたん、すうっと体から血の気が引いてきた。
「永華?」
「私、キャシー相手に手榴弾使ったよね?」
「……使ってたな」
あの時のことを思い出したのか、カルタの顔色も血の気が引いたものになっていく。
あの時、この事実を知らなくて良かった……。
いや良くなかったのか?
「うわあ……。知らなかったとはいえ危ない橋渡ってた」
「こわ……。そなたら運が良いのか悪いのかわからんな……」
「犯罪組織に絡まれてる時点で運は良くないと思うよ?」
それはそう。
そもそも、いきなり異世界から喚ばれて森に放り出されてる時点で運なんてものは息してないと思うんだよね。
「あ~、知らない知らない。私知らない、そんなの。別の話しようよ」
「別の話?暴食の話するか?」
「物騒だけど、さっきの話よりまし……」
この先、会うかもしれない幹部の情報を知っておくことは良いことだからね。
下手すれば私たちが爆発してた事実なんて知らないんだ。
「いつもローブを被って、水晶越しで現れるから詳しいことはわからないがそなたらぐらいの年のころで、小さい方と同じぐらいの身長、あと性別も同じだな。喋り方を考えれば貴族かなにか、良いところの出だろうな」
水晶越し?テレビ電話みたいなものなのかな?
「対話するときは水晶を持たせた使いを寄越すんだ。使いの方は全く喋らないから詳しいことはわからんが、獣じみた動きをするな」
「いくら水晶越しでも使いが来てるんだから俺は行って欲しくないんだけどね~?」
キノさんがカムラさんに笑顔で圧をかけるがカムラさんは気まずげに目を反らす。
「し、仕方ないだろう。いつもいつも一人になったタイミングで来るんだぞ」
「逃げてよ」
「逃げるは恥……」
「死ぬよりましでしょ」
悪魔なのに武士じみた精神してるな……。
「……いつも「いい加減、封印を解く方法を教えろ」しかいわないし、最近は言葉では無理だとわかっているのか、実力行使が多くなってきてるから会う機会はほとんどないがな」
ふ~ん、犯罪組織に所属しているわりに暴食の幹部は比較的対話でどうにかしようとするタイプなのか。
「ただまあ、どうも、百年近く声が変わらないから長寿な種族なのかもしれんな」
そういえばキャシーも魔族だったな。
やっぱり、長い間続いてる犯罪組織なだけあって長寿な種族が多いんだろうか。
そうして、一通りSDSの話が終わったころ、キノさんがある提案をしてきた。
「そういえば、永華ちゃんの武器って壊れてたよね?」
「え?あぁ、木刀ですか?確かに枯れてたな……」
木刀が枯れるって言うのも、なんか言葉としておかしいけど事実なんだよな。
「まあ、あれも作ろうと思えば魔法で作れますし、魔法で強化できるから別に良いんですけど……。やっぱり、ダンジョンに木刀は無いですよね。でも私が扱える剣がないんですよ。西洋剣と日本刀じゃ色々と違いすぎて……」
「確かに、木の棒は無謀かなとも思ったけど魔法で強化して中々の切れ味だったから最初の方や雑魚相手に使う分には大丈夫だと思うよ?でも、それが通じない相手はこれからも出てくると思うんだよね」
「ですよね~」
「こいつ、剣は扱えないと言って握らないんですよ。まぁ、重さも攻撃の方法も違うので仕方がないと思いますけどね。専門外の武器を持たせて怪我をされても困るので」
「刀は斬る、剣は叩き潰す……いや、斬るのと突きなのかな?ん~、何て言えば良いかわからないけど、そもそも扱い方が違うんですよね。ホントにカルタの言う通り専門外で、単純な強度なら剣ですけど切れ味は刀……みたいな?」
私、西洋の剣には詳しくないから、明確な違いを説明しろと言われてもなにも言えないんだよね……。
明確な違いを言えるとするならば重さ、両刃か片刃か、反りの有り無し、あとは刃の厚さになるのかな?
「刀……極東の刀だね?確かに、剣と刀じゃ扱いは違うだろうし、代打は効かないかもね。それに、東野方じゃないと売っていないから買えないし」
「なら、あの刀をもした木はどこで買ったのだ?そこで買えば良かろう?」
「木刀しか売ってなかったんですよ。そもそも、日之出は調味料とか食材がメインなので」
むしろ、よく木刀が売ってたなって感じ。
もどきよりも木刀の方が振り心地よくて重宝してたんだけどね。
いまさらメルトポリア王国に戻るわけにも行かないし。
「じゃあ、俺たちこれからアルバシェラ公国に向かうんだけど、一緒に行かない?」
「え?」
アルバシェラ公国って神鋼龍と取引をしている国だよね?武器とか防具も神鋼龍の鱗で作ってるロマンの塊みたいな国だよね?
「永華が行きたがっていたので近々行こうと言う話にはなっていましたけど、良いんですか?夫婦二人の時間を邪魔することになると思うんですけど……」
「永華ちゃん、スッゴい目がキラキラしてるね。まぁ、これも何かの縁。ちょうど俺たちも行こうと思ってたところだし、アルバシェラ公国の知り合いが刀を作ってたから紹介してあげるよ」
「いいんですか!?」
「近い」
「あ、すみません」
あまりにも魅力的な提案に勢いよく立ち上がりキノさんに詰め寄る。
距離が近くなったのでカムラさんがグイグイと私の肩を押して、押し戻そうとする。
「迷惑をかけたし、魔法を使えるとはいえちゃんとした武器がない子達だけにしておくのもね?」
「異世界の話を聞きたいから構わんぞ」
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次の行き先、アルバシェラ公国に決定!
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