ものぐさ令嬢は帰りたい

中綿げにを

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5話 原作厨がログインしました

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さて、お待ちかねの魔力検査。すっ飛ばしておりましたけど、10歳になった頃に基礎魔力量の測定はしておりますの。これは王国民全員が受けるものでございます。
その際、一定の魔力量を保持している場合は、学園への入学時に魔法科を希望出来るようになりますの。これは国内どの学園でも共通の資格でございます。
まぁ簡易テストみたいなものですので、属性や具体的な数値は分からない仕様になっているのですけどね。
そして、学園へ入学した際の魔力検査でそれぞれの属性、スキル、現在の魔力量を測定するのですわ!
属性は火、水、木、土、風の4つ。レア属性として聖と光がございます。基本属性の4つは文字通りなので割愛させていただきますわ。
聖属性は文字通り神官や聖女、医療従事者が使うことのできる魔法でございます。結界を張ったり、異常状態を回復したりとこの属性を持っていたら将来はブラックな可能性は高いですが安泰でございます。
光属性は一見チート魔法なのですが、この世界では危険な属性でなのです。というのもこの世界、よくある闇属性がございませんの。正確に言えばあるのですが、光属性に含まれておりまして。人の心に作用する使い方をしますと、所謂闇属性的な効果を出すことも可能なのです。光属性が出た人は精神健康診断を受ける決まりになっておりますの。そこでサイコパス判定を受けると監視がついてしまったり、魔力封じの首輪をつけられたりします。自由に魔法を使えなくなるのですね。

と、いうような事を今しがた先生が話している最中です。
自己紹介タイムは先生が面倒とのことですっ飛ばされましたわ。ゲームの時よりも若干やる気のなさが増しているような気がいたしますわね。

この後、モカ嬢のモンスター級の魔力量が大公開されるのですね。楽しみですわぁ。ゲーム通りですと、彼女は聖属性。大聖女来たれり。王都はお祭り騒ぎとなりますわね。これがきっかけで攻略対象及び各ご令嬢にちょっかいをかけられるのですわ。
攻略対象の生徒たちは複数属性持ちの方ばかり。ロースト殿下は4つ全て、ベルビット様は水、木、土の3つ、エッグノッグ様は火と木、オウフロア様は火と風でしたわ。魔力量が低くても2属性持ちということは稀にございます。
ちなみに私の属性は、ゲームの設定通りならお察しの通り光属性。まぁ原作厨の神ですからそこは変わらないでしょう。精神健康診断面倒ですわね……他には確か火と土でしたっけ。お父様曰く、トリプレッソ家は代々3属性以上を持っている優秀な家系らしいので、そこは変わらないと思いたいのですが、どうでしょう。



さて、時間がきたので中庭へと移動いたします。移動時もキフィ嬢とモカ嬢と共に移動しておりました。殿下はダッシュで追いついたベルビット様と共に。中庭に移動した私たちは1人の神官の前に案内されました。
その隣には台座の上置かれたお盆と空中に浮かぶ球体が。どうやらあの球体が測定器のようですわね。
ゲームではモカ嬢の測定の様子しか出ておりませんでしたし、測定器も「カルファの測定が終わった。次は私の番。恐る恐る測定器に手をかざすと……」というテキストだけで絵はありませんでした。球体はわかりますけれど、お盆??あれは何なのでしょう。
中性的な顔立ちの麗しい神官は不遜な態度で測定器の使い方を説明を始めま……ってあれ、神よね?どう見ても神よね!?

『悪役令嬢よ、聞こえているか。今お主の心に直接語りかけておる。今から始まるイベントはわかっておるな。検査を受ける順番は間違うでないぞ』
「テンプレはおやめなさい」
「カルファ様?」
「……いいえ、なんでもないわ」

まさかの心に直接呼びかける系で接触を図ってくるとか……うっかり声に出してしまったじゃない!キフィ嬢は特に気にしていなかったからよかったものの。変人だと思われていたら嫌だわ。
しかしなんでまたこの場にいるのよあいつ。

『折角だから間近で見ようと思うてな』

そんなことだろうと思いましたわ!!検査を受ける順番ね……どうせモカ嬢の直前に受けろとでも言いたいのでしょう。だってゲームがそうだったのだもの!

『理解が早くて助かる』

私の脳内でアホなやりとりをしながらも、生徒に向けての説明は滞りなく進んでおります。
説明をしながら私の脳内に語りかけるということをさらっとこなす辺り、伊達に神を自称しておりませんわね。

「えー、まぁ1人ずつ受けていただく訳ですが、この装置に全部記録されるので順番は適当で構いません。先生、いかがいたしますか?」
「あぁ、好きな順でいいんじゃないか?」
「と、いうことですので、受けたい方からどうぞ」

そうは言われましても誰も手をあげません。まるで誰かが動き出すのを待つかのように。

「僕が最初じゃないと多分みんな気まずいよねぇ」

と、手を挙げたのはロースト殿下。そうですね、階級を重んじる方々が大半のクラスですものね。
神官(神)に誘導され、測定器に手をかざす殿下。

球体からぼうっと火が出たと思ったら水が溢れお盆に貯まり、まるで水盆に球体が浮んでいるかのようです。次の瞬間、球体の下半分から土がこぼれ落ち、お盆は木が生えていない鉢植えのようになりました。直後草が芽吹き、すくすくと育ったかと思うと、どこからともなく風が吹き、木々はチリとなって消えました。
私たちは皆その幻想的な光景に目を奪われました。

どうやら測定が終わったようで、残された球体には何やら数値や文字が書かれております。

「素晴らしい!さすが王族ですね。4属性全てをお持ちです」
「兄上には聞いていたけれど、これはなかなか幻想的な測定だね」

殿下はホクホクしながらこちらへ戻ってこられました。
継いでベルビット様、無茶振りされたグラニュー様の測定が終わるとご令嬢がたが我先にと測定器へと向かいます。気づいたら皆1列に並んでおりました。私たちも3人仲良く並びます。

「カルファ様の次もモカさんの次も気がひけるから、3人の中なら最初がいいですわ」
「そしたらキフィ様の次は私が受けようかしら?」
「えぇ……そ、そんな、お二方の次なんて」
「いえ、モカさん。私たちの直後の方が気が楽かもしれませんわよ」
「トリプレッソ家は代々複数属性持ちの方ばかりなのですわよね?ですからカルファ様の前後であれば、比べる意味もないのでございます!」
「そ、そうかもしれません」

そんなやりとりの合間も、私は脳内に語りかけられておりました。3人の順序が決まると『でかした』とのお声が聞こえてきましたが、シカトしてしまいました。

そして、キフィ嬢の番。彼女が手をかざすと、「もしゃっ」という音が。
見ると棉のような土がお盆に溢れその上部はキラキラした石になっておりました。

「これは、レアスキルでございますね」

どうやらキフィ嬢は土属性の他に、『鉱物錬成』というスキルを持っていたようです。ゲームでは双子の片方がジュエル購入画面でおりましたけども、何か関係があるのかしら。

「お兄様たちとお揃いのスキルで嬉しいわ」

なるほど、シナモン家の伝統スキルなのかもしれませんね。ニコニコしたキフィ嬢は私とモカ嬢がよく見える位置へと移動いたしました。
そして私の順番が。少々緊張しながら測定器へ近づきます。

「ネタバレは嫌だが展開はわかっているだろう。早くしろ」

恐る恐る手をかざす私へ神官(神)が小声で話しかけました。色々と台無しでございますわ。
意を決して球体へ右手をかざしますと、バチっという音と共に稲妻が天へ。手にはちくりとした痛みが残り、球体はそのまま燃え、そしてお盆には半分ほど土が溜まっておりました。

「光、だと?」

コレット先生の眠そうな目がカッと開きました。ざわめく生徒たち。

「えー、光属性が検出されましたので、トリプレッソ伯爵令嬢は後ほど精神健康診断を受けていただきます……それからスキル『ものぐさの友合理主義』ですか」

そんなスキル、設定にありましたっけ?……彼の微妙そうな顔を見るとどうやら神も知らないことが起きているようです。何とも言えない表情でキフィ嬢の元へ行きました。モカ嬢を見つつも話しかけてくださるキフィ嬢。その声音は心配そうでした。

「大丈夫?精神健康診断って……」
「えぇ、ありがとう。どちらかというと『ものぐさの友合理主義』っていうスキルがよくわからなくて」
「合理主義スキルは文官長や領主様に多いスキルでしたわよね?」
「そうですけども、私思い当たる節があまりなくて」
「いずれ領地で……?!?!?!?!」

急に視界が真っ白になり、皆の驚く声ばかりが聞こえてきます。数秒経ったころでしょうか、徐々に視界がクリアになってゆきます。球体はからは虹色の粒がキラキラと溢れでておりました。

「何という魔力量。聖属性でこれほどとは」

まるで台本を読むかのように神は宣いました。その言葉を聞いて色めき立つクラス。モカ嬢は小走りでこちらへ駆け寄ってきました。

「すごいじゃないモカさん!」
「もしかして大聖女様だったりするのかしら?」
「そんな!キフィ様、何と恐れ多いことを……」

コレット先生は目が死んでいました。

「……大聖女と光属性と王子って新任教師の受け持つクラスじゃないだろう」

という呟きはしっかりと聞きましたわ。でも貴方様は王族の遠縁ですから。きっと大丈夫ですわ。
ロースト殿下はニコニコとこちらを見ており、ベルビット様はハトが豆鉄砲を食らったような顔をなさっておりました。殿下たちを囲むご令嬢がたからはよくない視線が。平民に近しい身分の方は純粋に喜んでいらっしゃるようね。

「さて、それでは私は急いで教会へ戻らねばなりませんので」

神は大変満足した、というような顔でそんなことを言い、文字通り飛んで行かれました。
それにしても、もしゃっ、キラキラ、ぷかぷか、チクっと……シナモンズの言葉はあながち間違っていなかったのでございますわね。彼らは詩の才能もあるかもしれません。



精神健康診断は後日、他学年の方と合同で受けるようで、学園初日はここで終わり。みんな仲良く寮へ帰って行きましたわ。もちろん私たち3人も。モカ嬢は部屋の広さに驚いたと言っておりました。目を輝かせて可愛らしかったです。キフィ嬢はものを作るには些か狭いと言っておりましたが一体何を作ってらっしゃるのでしょう。今度遊びに行ってみましょうか。

なんやかんやで初日は無事に終わったのかしら?ヒロインにはすっかり友達認定されてしまったけれど、この感じならどうにかなりますわよねきっと!
エリーナの紅茶を頂いた私はお父様への手紙を書きあげ、眠りにつくのでありました。

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