ケイコとマチコ、ときどきエリコ

Tro

文字の大きさ
11 / 37
#12 強い風

#12.1 幻惑する風

しおりを挟む
ピーポー・プルプル、ピーポー・プルプル。

緊急事態を知らせる警報が鳴り響いています。それは、止めるまで鳴り止まない目覚まし時計のようなものです。しかし、それを止められるのはヨシコのみ、グースカ・スヤスヤ中です。

ピーポー・プルプル、ピーポー・プルプル、起きろよー、ヨシコー。

「うっさいなー、なによー、全くー、何の用なのさー」

眠い目を擦りなが、やっとこさ起き上がったヨシコです。ですが暫く警報を聞き流しながら、「ふーん、ふーん」と意味不明なことを申しております。そうしてやっと、少し頭が冴えてきたのでしょう、

「ふーん、ああ、うん、ああ、あああああ! えらいこっちゃー」と飛び起きたヨシコ、寝起きが悪いです。

「なになにー、あれれ、大変じゃーん」

宙に浮いているようなスクリーンを見ながら慌てるヨシコ……ではないようです。小難しい顔をしていますが、至って冷静、というよりも、余り興味が無さそうです。

「じゃあ、これでいっかー、ポチ」

スクリーンに向かって、何かを選択したようなヨシコです。そこには『Aセット』と書いてありました。他には『Bセット、Cセット』もあるようですが、ポチった後、欠伸をしながら二度寝を決め込むヨシコです。

そうして次に起きたのは半年後、長~い二度寝になりました、とさ。



さて、ヨシコが二度寝している間に起きた出来事を振り返ってみましょう。まず、ピーポーと鳴った警報ですが、地球に巨大な宇宙船が接近したことを告げていました。その宇宙船、どこの誰だか分からないので、取り敢えずUFOということにしておきましょう、そう、未確認飛行物体ということです。

そんなUFOが地球に何の用でしょうか。それをスクリーンで確認したヨシコが『大変じゃーん』と言っていたので、おそらく、その来訪者から敵意が見え隠れしていたのかもしれません。例えば地球を侵略しに来たとか、いきなり攻撃をしてきたりするかもしれません。その根拠は、そっと地球に近づいて来たということで、何か下心、いえ、邪悪な事を考えているはずなのです。

そこで、その対応として『Aセット』が選ばれました。その内訳は、結界と監視になります。まず結界ですが、これは地球全体を包み込む大きな『お守り』のようなものです。その効果は……そうですね、『守ってるよ』くらいのことでしょうか。

次の『監視』ですが、これは『ずっと見張ってるよ』ということでしょう。何を仕出かすか分からない来訪者ですから、悪さをしないように見張っている必要があるでしょう。

ということで、『Aセット』は来訪者から地球を守る、という願いと、その者を見張るという大変お得な『見守り』セットと言えるでしょう。ヨシコ、自慢の一品です。



さあ、ヨシコが起きてしまう前に、どんどん、お話を進めて参りましょう。地球に接近してきた大きなUFO、とうとう地上から見えるくらいのところまで近づいて来ました。そうなると当然、世界中で大パニック、宇宙人が攻めてきたとか、いやいや、友好的な宇宙人だから安心さ、という憶測が飛び交う——ではなく、誰も噂にもしませんでした。それは、そんなことくらいで騒ぐような人たちが居なかった、ということでしょう。

そう、たまには、『そんなものも来るよね』程度だったのです。それに、空を見上げても黒い点にしか見えませんし、夜空で見れば、星が一つ増えたようなものなのです。ですから皆さん、「ふ~ん」と思うだけで、大して関心を寄せていなかった……本当です、はい。決して誰にも見えていなかった、なんてことは無いはず、と思います。

そして、地球の上で、ただプカプカと浮かんでいたUFOではありません。なにやら小さな欠片のようなものが四方八方にシュパッ・シュパッと幾つも飛び出して行きました。差し詰め地球を研究するための調査船、といったところでしょうか。それらが世界中を飛び回り、なにやらフンフンと頷きながら地球のことを勉強しているようです。

では早速、その調査船、地球人的にはドローンと呼んだ方が相応しいと思いますので、そのドローンの活躍をこっそりと覗いてみましょう、そう、『こっそり』です。



大原海に浮かぶデッカイ島。その上空に現れたドローンです。八つの羽をブーン・ブンブンと唸らせながら海辺に直行。早速、調査対象を見つけたようなので、こっそりと対象に近づいて参ります、ブーン。

「ヒャッハー」

奇声を上げているのはウィンドサーフィンをしているシマコです。小さな板に大きい葉っぱをぶっ刺して帆の代わりにしています。そして波に向かって突進、波を飛び越える度に叫ぶシマコ、ウィンドサーフィンの術を習得したようです。

ということは、凧になって遊ぶのは飽きた、ということでしょう。でも、これなら何時でも自分だけで出来るので納得です。

そうしているうちに何度も波に挑み、その度に「ヒャッハー」のシマコです。これはまさしく風の子には打って付けでしょう。そしてその海の上を縦横無尽に快走して行きます。

そして、シマコの目がキラリッです。そう、大きな波、ビックウェーブの登場です。その波に向かってドキドキのシマコです。何故なら「今までこんな大きな波、見たことないぞー」とプルフプと震える足に力を込め、それを乗り越えた時の自分を想像します。

「ヒャッハー」

ビックウェーブに挑むシマコ、まだまだ経験不足ですが、それをワクワクで乗り切ってみせると誓います。いざ、勝負! デッカイ波ィィィ、です。

ドドド、ドドント、ドドパーン、シュワシュワ、ザザザー、あれえええ? です。

突然、目の前のビックウェーブが消えてしまいました。それどころか海上から波が消え、風も吹かなくなったのです。それはまるで——ええ、よく見れば氷の張ったような真っ平らな海面。これに「およよ」と驚くシマコです。

そこで試しに足を水面に浸けてみると、これまた「およよ」です。それは浸けた足が沈んでいかないではありませんか。

でもでも、それ以外の不思議は起きていません。燦々さんさんと輝く太陽にプカプカと浮かぶ白い雲。そして振り向けばそこに島が……あれ? 島がありませんね。見渡す限りの海、というか水平線しか見えません。これは困ったあああ、のシマコです。

「ここは、どこだあああ。私はあああ、誰だあああ」と叫んでみたシマコ、今日も大きく元気な声を出すことが出来ました。



ブーン・ブンブン。砂漠地方に現れたドローンです。早速、調査対象を見つけたようで、対象に近づいて行きます。それに、こっそりと付いて行きましょう、ブーン。

砂漠を疾走するサチコです。例によって魔法の絨毯に正座して乗っています。そして何時ものように砂漠の起伏に合わせて忙しく上下しています。そのせいでしょうか、絨毯がだいぶ擦り切れてきたようなので、珍しく街に向かっているサチコです。

そうして街に入ると、すぐに老舗風のお店に直行。そこの店主でしょうか、オバさんに声を掛けたサチコです。もちろん、お店とは絨毯を専門に扱っているお店です。

「オバさん、絨毯がね、あれして、こうしたのよ。それでね、どうしようか思ったんだけどね、見てもらった方がいいと思ったのよ。ほら、このままだとマズイかな~って思うんだけどね——」

相変わらず話の長いサチコです。この調子では何時まで経っても終わりそうにないので、オバさんが「まあ、いいから、とにかく見せなさいよ」と割り込みました。それに申し訳なさそうに絨毯を見せるサチコです。

そのサチコですが、言い訳のように話が長ったのには訳があるのです。それは、今オバさんに見せている絨毯が、オバさんによる手作り作品であったことです。ということは、はい、以前、絨毯の切れ端と申しましたが、それは誤りで、オバさんがサチコにプレゼントした品、ということになります。

よって、それを傷つけてしまったことで、あれこれと言っていた、ということでしょう。しかし、物を使うということは消耗するということです。そんな事を気にするようなオバさんではありません。因みにサチコが着ている白いロングコートも、このオバさんの作品です。ほら、背中に赤く『殺 血 恋』と書いてあったアレです。

「ああ、ここまで擦れてると張り替えないといけないね」

魔法の絨毯を一目見ただけで判断したオバさんです、なかなかの腕前と思われます。その判定に、

「ごめんなさい」とペコリのサチコです。
「ええっ? いいんだよ、使えば減るもんだしね。ただね~」
「ごめんなさい」

「いや、そうじゃないんだよ。今ね、珍しい事に、これの糸が売り切れなんだよ。だからね~、応急処置だけしておくから、また、後でいらっしゃいな」

「ごめんなさい」
「だから~、そうじゃないって」

こうして、応急修理された絨毯に乗り、また砂漠を疾走するサチコです。その表情は今ひとつ冴えません。それは、絨毯が擦り切れてしまったことを気にしてのことでしょうか。

そんな浮かない顔で、何時ものように砂漠の起伏を乗り越えようとした時です。絨毯が急に止まってしまい、その勢いで前にでんぐり返りするサチコです。うむ、これは危険ですね、安全性に問題ありです。せめてシートベルトかエアバッグを装備しなければならないでしょう。ところで、保険には入っているのでしょうか。万が一の備えは大切です。

急停車した絨毯からゴロンゴロンと転がって行くサチコです。そうして砂に突っ込み、不運が重なったことを嘆きます。そういえば今日の運勢はどうだったかしら、と頭の中を運勢がよぎってもいます。

「あんもー、なんなのよー、全くー」

全身に纏わり付いた砂を払いながら立ち上がる不機嫌なサチコです。そして急に止まってしまった絨毯を睨むと……あれれ、です。なんと、その絨毯がありません、見当たりません、家出です!

辺りをキョロキョロして絨毯を探しますが、全然見つかりません。いくら絨毯から転がったと言っても大して離れていないはずなのです。極端に言えば足元に有ってもおかしくないくらいでしょう。

しかし、それとは別に何かが変だと思ったサチコです。それはキョロキョロ序でに見渡した風景が何時もと少し違う? ような感じがしたからなのです。

広い砂漠は同じような光景が続きますが、それでも目印になるような『もの』があるのです。それは遠くに見える街の風景とか、一際目立つ砂丘や道路などです。そして、それらを何時も見慣れているサチコには馴染みの風景だったものが、微妙に違って見えたのでしょう。

いいえ、微妙どころか初めてみる風景に思わず、

「ここは、どこなのおおお、私はあああ、誰なのおおお」と叫んでみたサチコです。因みに、後半の『私は誰なの』というセリフは、風の子たちの間で流行っているみたいです、はい。



ここはジャングルを流れる長~い川の上流。そこにやって来たミツコは、何時ものようにいかだに乗って川下り……のはずでしたが、その川を見てアレレと驚いている最中です。それは、川というより、ただのくぼみだったからです。一体、川の水はどこに家出してしまったのでしょうか。

もしかしたら道を間違えて全く違う所に来てしまった、とも考えたミツコですが、私に限ってそんなことはないと否定しました。その証拠にミツコ愛用の筏が、その凹みにあったからです。

(これはおかしいです、ふむふむ)と考えるミツコ、その鋭い眼が上空の、ある一点に注がれました。そこにはブーン・ブルブルと飛び回るドローンの姿が。

(あれはなんでしょうか。取り敢えず調べておきましょう)、そう思ったミツコが、「とうぉぉぉ」と飛び上がり、空中を一段、二段と蹴って行きます。そうして、驚いて逃げようとするドローンを捕獲、それにぶら下がりました。そして、

「あなたは、何か知っていそうですね。さあ、私を案内しなさい」とドローンに命じたのでした。

それに、『はい、わかりました』と応じるドローンであるはずがない、と思われましたが、ミツコには協力的なドローンのようです。きっと争いを好まないのでしょう。ミツコを連れて川の跡をなぞるように飛ぶドローンです。

「なるほど、そういうことですか」

眼下を望むミツコです。そこには、確かに川が有ったのでしょう。しかし今はその跡だけを残して、水の無い、ただの道のようになっていました。

「これは由々しき事態です。これでは、このまま貴方を返す訳には行かなくなりましたね」

ミツコの言葉にピクっとしたようなドローンです。それはきっと、(逆らったら危ない奴)認定したからでしょう。その後、ドローンはミツコのしもべとして飛び続けたのでした。



大空を舞う鳥さんの背中に乗って、一緒に飛ぶリンコです。今日は、どこかの山越えではなく、長閑な風景の上をゆったりと舞っています。行き先は鳥さんに任せ、羽を伸ばせるところまで、どこまでも飛んで行きます。

「ねえ、こう単調だと眠くなってくるよね」

そんなリンコの声掛けに返事の無い鳥さんです。ですが、それでも気持ちが通じ合っているのでしょう、阿吽の呼吸で大空を舞い上がって行きます。

澄み切った青空、ところどころに浮かぶ白い雲、そして風は真っ直ぐに吹き、地上の景色がゆっくりと移り変わる、そんな光景に見入いるばかりのリンコです。

「ねえ、鳥さん。ちょっと高すぎない? それに、もっとゆっくり飛ぼうよ、急ぐ旅じゃないんだしさ」

リンコは鳥さんに呼び掛けましたが、羽を動かすのに忙しいのでしょう、鳥さんからの返事はなく、ただ只管に飛び続ける鳥さんです。でも、そんなに羽ばたき続けては鳥さんの体力が持ちません。そこで、もう一度声を掛けるリンコです。

「ねえ、鳥さんってばぁ、少し休もうよ、休憩しよ。疲れたでしょう」

リンコの声に無反応な鳥さんです。それで言葉を変えて、「ガーガガガ、ガーガー」としてみると、
「ピコピコピー、プルプル」と返ってきました。流石にこれは変だと思ったリンコです。
「ちょっと、あんた、誰なの?」と再度、鳥さんに問うと、体をプルっと震わせ、
「ピコンピコピー、ピッピッ」と唸りだし、いきなりの急上昇です。それに必死でしがみ付くリンコ、速さも尋常ではありません。それはまるでミサイルのよう、ビューンです。

「どこに行くつもり、なのよおおお、私は、誰なのおおお」

リンコを乗せた鳥さんは、狂ったように空高く打ち上がって行くのでした。



のほほんとした田舎道でニャージロウに乗るノリコは、傍にニャーゴを従えて散歩をしていました。見上げる空は青く、風も心地の良いもの。それらに誘われて初夏を満喫するノリコたちです。

にゃーごろごろ。

ニャーゴがいきなり走り始めました。それに、
「どこに行くのにゃ、でござるよ」と呼び止めるノリコです。もちろん、聞く耳を持たないニャーゴは、その足を止めるはずもありません。そして、高い木にスタッスタッと登ると、何かに向かって「シャー」と威嚇しているようです。

「ニャーゴ、また降りられなくなるにゃ、でござるよ」と言いながら、ニャーゴが登った木を見上げると、そこからブンブンという音が聞こえてきます。どうやらニャーゴはそれに向かって、「にゃー、シャー、ごろごろ、シャー」と唸っているようです。

ニャーゴが相手にしているのは、きっと虫だろうと思ったノリコです。そうしているとニャーゴが何かを咥えてスタッスタッと木から降りて来ました。どうやら『降りる』という技を会得したのでしょう。それとも、もうケイコの世話にはなりたくない一心から、かもしれません。

そんなことよりも、ノリコが顔を引きらせていました。それもそのはず、ノリコは大の虫嫌いなのです。それを咥えてニャーゴが戻ってくる、そう思うだけで鳥肌ものなのです。

「ニャーゴ、こっちにくるにゃー、あっちに行ってええええええ」

そう叫ぶノリコにお構いなく、捕獲した獲物をノリコに見せたくてしょうがないニャーゴ、まだまだ『お子ちゃま』です。得意満面でノリコの前に躍り出ました。

「ニャージロウ! ニャーゴをあっちにやってえええ」

絶望の淵に追いやられたノリコの、その断末魔が『のほほん』とした世界に響き渡りました。そして、ようやくその声を聞き届けたニャージロウがキリッとニャーゴを睨めつけます、ニャー、です。

その『ニャー』で咥えていた獲物を離したニャーゴ、その口元は『なんで?』と言っているかのようです。そして解き放された獲物は、まだガサコソと動いていて、その音だけで身震いするノリコ、思わず「ニャージロウおおお」と叫ぶのでした。

その声で、ガサコソ獲物を蹴飛ばしたニャージロウ、これで危機が遠ざかりました、のはずです。そうなると、『怖いもの見たさ』という欲求がノリコの頭の中に浮かんできました。それとも真実を知りたい探究心からでしょうか。顔を覆っていた手の指の隙間からチラリっと覗いてみるノリコです。

それは、ニャーゴが咥えてきたにも拘わらず、ニャーゴくらいの大きさがあり、全体は黒く、八本の触手が伸びていました。そしてその触手の先には羽があって、それがブンブンの正体のようです、まだカラカラと時々回っています。

そんな得体の知れない生物? にプルプルと身体を震わせるノリコに、更に止めを刺すかのように、ゴロンと得体の知れない生物をひっくり返すニャーゴ、心の中で(ほれっ)と無邪気に戯れていただけですが、それに、(にゃにすんじゃあああ)と心の中で絶叫するノリコです。

ニャーゴのせいで息絶えた得体の知れない生物、ピクリとも動きません。それを見たノリコがハッとして、「これはぁ」と何かに気がついたようです。ということは知っている生物でしょうか。しかしその後に「なんだろう」ということになりました。

ということで、動かなくなった得体の知れない生物に興味を失くしたニャーゴ、なんとなく安心したノリコ、大して興味がなかったニャージロウが、その場を離れようとした時です。その得体の知れない生物から「もしもし」という声が! これにびっくらこいたニャーゴ、ニャージロウ、そしてノリコたちは脇目も振らず、その場から逃げ出したのは言うまでもありません、逃げるにゃあああ。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

カリンカの子メルヴェ

田原更
児童書・童話
地下に掘り進めた穴の中で、黒い油という可燃性の液体を採掘して生きる、カリンカという民がいた。 かつて迫害により追われたカリンカたちは、地下都市「ユヴァーシ」を作り上げ、豊かに暮らしていた。 彼らは合言葉を用いていた。それは……「ともに生き、ともに生かす」 十三歳の少女メルヴェは、不在の父や病弱な母に代わって、一家の父親役を務めていた。仕事に従事し、弟妹のまとめ役となり、時には厳しく叱ることもあった。そのせいで妹たちとの間に亀裂が走ったことに、メルヴェは気づいていなかった。 幼なじみのタリクはメルヴェを気遣い、きらきら輝く白い石をメルヴェに贈った。メルヴェは幼い頃のように喜んだ。タリクは次はもっと大きな石を掘り当てると約束した。 年に一度の祭にあわせ、父が帰郷した。祭当日、男だけが踊る舞台に妹の一人が上がった。メルヴェは妹を叱った。しかし、メルヴェも、最近みせた傲慢な態度を父から叱られてしまう。 そんな折に地下都市ユヴァーシで起きた事件により、メルヴェは生まれてはじめて外の世界に飛び出していく……。 ※本作はトルコのカッパドキアにある地下都市から着想を得ました。

生贄姫の末路 【完結】

松林ナオ
児童書・童話
水の豊かな国の王様と魔物は、はるか昔にある契約を交わしました。 それは、姫を生贄に捧げる代わりに国へ繁栄をもたらすというものです。 水の豊かな国には双子のお姫様がいます。 ひとりは金色の髪をもつ、活発で愛らしい金のお姫様。 もうひとりは銀色の髪をもつ、表情が乏しく物静かな銀のお姫様。 王様が生贄に選んだのは、銀のお姫様でした。

王女様は美しくわらいました

トネリコ
児童書・童話
   無様であろうと出来る全てはやったと満足を抱き、王女様は美しくわらいました。  それはそれは美しい笑みでした。  「お前程の悪女はおるまいよ」  王子様は最後まで嘲笑う悪女を一刀で断罪しました。  きたいの悪女は処刑されました 解説版

放課後ゆめみちきっぷ

梅野小吹
児童書・童話
わたし、小日向(こひなた)ゆには、元気で明るくて髪の毛がふわふわなことが自慢の中学一年生! ある日の放課後、宿題をし忘れて居残りをしていたわたしは、廊下で変わったコウモリを見つけたんだ。気になってあとを追いかけてみたら、たどり着いた視聴覚室で、なぜか同じクラスの玖波(くば)くんが眠っていたの。 心配になって玖波くんの手を取ってみると……なんと、彼の夢の中に引きずり込まれちゃった! 夢の中で出会ったのは、空に虹をかけながら走るヒツジの列車と、人の幸せを食べてしまう悪いコウモリ・「フコウモリ」。そして、そんなフコウモリと戦う玖波くんだった。 玖波くんは悪夢を食べる妖怪・バクの血を引いているらしくて、ヒツジの車掌が運転する〝夢見列車〟に乗ることで、他人の夢の中を渡り歩きながら、人知れずみんなの幸せを守っているんだって。 そんな玖波くんのヒミツを知ってしまったわたしは、なんと、夢の中でフコウモリ退治のお手伝いをすることになってしまって――? これは、みんなを悪夢から守るわたしたちの、ヒミツの夢旅の物語!

きたいの悪女は処刑されました

トネリコ
児童書・童話
 悪女は処刑されました。  国は益々栄えました。  おめでとう。おめでとう。  おしまい。

未来スコープ  ―キスした相手がわからないって、どういうこと!?―

米田悠由
児童書・童話
「あのね、すごいもの見つけちゃったの!」 平凡な女子高生・月島彩奈が偶然手にした謎の道具「未来スコープ」。 それは、未来を“見る”だけでなく、“課題を通して導く”装置だった。 恋の予感、見知らぬ男子とのキス、そして次々に提示される不可解な課題── 彩奈は、未来スコープを通して、自分の運命に深く関わる人物と出会っていく。 未来スコープが映し出すのは、甘いだけではない未来。 誰かを想う気持ち、誰かに選ばれない痛み、そしてそれでも誰かを支えたいという願い。 夢と現実が交錯する中で、彩奈は「自分の気持ちを信じること」の意味を知っていく。 この物語は、恋と選択、そしてすれ違う想いの中で、自分の軸を見つけていく少女たちの記録です。 感情の揺らぎと、未来への確信が交錯するSFラブストーリー、シリーズ第2作。 読後、きっと「誰かを想うとはどういうことか」を考えたくなる一冊です。

星降る夜に落ちた子

千東風子
児童書・童話
 あたしは、いらなかった?  ねえ、お父さん、お母さん。  ずっと心で泣いている女の子がいました。  名前は世羅。  いつもいつも弟ばかり。  何か買うのも出かけるのも、弟の言うことを聞いて。  ハイキングなんて、来たくなかった!  世羅が怒りながら歩いていると、急に体が浮きました。足を滑らせたのです。その先は、とても急な坂。  世羅は滑るように落ち、気を失いました。  そして、目が覚めたらそこは。  住んでいた所とはまるで違う、見知らぬ世界だったのです。  気が強いけれど寂しがり屋の女の子と、ワケ有りでいつも諦めることに慣れてしまった綺麗な男の子。  二人がお互いの心に寄り添い、成長するお話です。  全年齢ですが、けがをしたり、命を狙われたりする描写と「死」の表現があります。  苦手な方は回れ右をお願いいたします。  よろしくお願いいたします。  私が子どもの頃から温めてきたお話のひとつで、小説家になろうの冬の童話際2022に参加した作品です。  石河 翠さまが開催されている個人アワード『石河翠プレゼンツ勝手に冬童話大賞2022』で大賞をいただきまして、イラストはその副賞に相内 充希さまよりいただいたファンアートです。ありがとうございます(^-^)!  こちらは他サイトにも掲載しています。

少年騎士

克全
児童書・童話
「第1回きずな児童書大賞参加作」ポーウィス王国という辺境の小国には、12歳になるとダンジョンか魔境で一定の強さになるまで自分を鍛えなければいけないと言う全国民に対する法律があった。周囲の小国群の中で生き残るため、小国を狙う大国から自国を守るために作られた法律、義務だった。領地持ち騎士家の嫡男ハリー・グリフィスも、その義務に従い1人王都にあるダンジョンに向かって村をでた。だが、両親祖父母の計らいで平民の幼馴染2人も一緒に12歳の義務に同行する事になった。将来救国の英雄となるハリーの物語が始まった。

処理中です...