逆・異世界転生 Ⅰ

Tro

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#4 ゴルゴーンの涙

時を駆ける三姉妹

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時は現代、俺の輝かしい歴史が刻まれていくであろう現在である。しかしながら、それはもう少し時間が掛かりそうな予感がする今日この頃でもある。何故ならば今の俺は『ここはどこ、俺は俺だー』の状態であるからだ。

今から数時間前、重要人物である俺は何者かによって拉致・監禁され自由を奪われている。その何者かというのが、例の三姉妹である。

おっと、三姉妹とは例の爺さんが探し求めていた例の三姉妹のことなのか? 答えは『そうだ』である。では、その三姉妹は相当な婆さんなのだな? と思うだろうが、そこはどっこい、美人三姉妹である。どうだ、うらやましであろう。

では、お前はどこに居るのだ? そうだな、どこかの安アパートの一室であろう。その証拠に六畳ほどの狭い部屋のようだが、そんなことよりも、とにかく汚い部屋である。そこら中にある食い散らかした跡、脱ぎっぱなしの服、呆れ果てた姿の寝具など、観察すればするほど『小汚い』部屋であり、まさしく三姉妹が居住するには相応しいアジトであろう。

俺が爺さんの話を頑なに信じているというのは、紛れもなくその登場人物たちが俺の目の前に居るからに他ならない。そしてその者たちの証言により俺が爺さんを信じるに至る確証を得た、というわけである。

「こいつ、役に立たないじゃん」とは次女のエ……エウリュアレだ。発音しにくいので、今後はエッちゃんと呼ぶことにしよう、ではなく、噂に聞くJK風の女子である。

「やはり、コレをどうにかしたところで、どうにもならないのは確定です」とは三女のメデューサ、これもJC風の女子だがエッちゃんに合わせてメデちゃん呼ぶことにしよう、ではなく、右目に眼帯、右手に書物を持つ、怪しさ満点の小娘である。

「まあまあ」とは長女のステンノー、どこがどうとかと言う前に全てが頼りなさそうで、妹たちの所業を見て見ぬ振りするJD風のお姉さんタイプだ。こちらも他に合わせてステちゃんと呼ぶことにしよう、ではなく、俺がこ奴らに拉致・監禁された経緯を説明しよう。



俺の爺さんの下ネタ、ではないが、爺さんの書いた日記を基にして書かれた物語『森の三姉妹』が世界中で大ヒットになったということを思い出して欲しい。本来、爺さんの日記を基にしているのだが、それをパクった作者が面白おかしく書いたおかげで、今では、いや昔から『森の三姉妹』に登場する三姉妹は架空の人物と思われている。

物語の中で三姉妹は現実離れした美貌の持ち主であり、その魅力に取り憑かれたら最後、全てを奪われるという魔性の三姉妹と描かれているのだ。しかし世の中には変人はつきものである。そんな三姉妹に興味を示さない男が居た。そいつは三姉妹の見かけに騙されることなく、その心の奥深くに潜む邪悪な性格を見抜き、三姉妹の誘惑に打ち勝ったという。

しかし、それを快く思わない三姉妹である。本性を見抜かれては先の商売に支障が出る、これは何としてもその男を我が下僕にしなければと、要は逆ギレしたわけである。

そこで三姉妹の次女ことエッちゃんが言葉巧みに男を誘い出し、今までの非礼を詫びたいと男に申し出たそうだ。だが、そんな見え見えの罠に引っかかる男ではなかった。そこで長女ステちゃんの出番である。男はステちゃんの人畜無害の容姿にコロリと騙され、というかステちゃんたちが三姉妹であることを知らなかったのが敗因であろう。突如あわられた三女のメデちゃんによって術をかけられ、めでたく三姉妹の下僕と成り果てた、というお話である。

しかし、これは飽くまでも物語、架空の話である。現にこうして俺の目の前で三姉妹がうろちょろしていようが、それを信じる者は全世界、全人類をもってしても俺だけであろう。そう、これこそが今、問題となっているところである。

さあ、みんなで想像してみよう。この地上から戦争がなくなり平和が訪れた幸福な世界をー、ではなく実在しているのに、それは嘘だよ~と全人類から思われたらどうなるだろうか。その存在は恥ずかしくなって姿を消すことだろう。そう、それが今現在、三姉妹が置かれた状況そのものである。

三女メデちゃんの話によると、例の本が出版されてからというもの、頭痛、目眩、吐き気などの諸症状が三姉妹を襲い、気がつけばウトウトコトコトと眠りこけていたそうだ。そして、ハッとしてドキュン、目が覚めると、時は現代、自身の体にも変化が。それは本の影響により実存在を疑われ架空の存在として認知された世界だ。

この世に存在しないものは存在しない。月に行っていないアポロ宇宙船とかUFO、果てはネッシーの怪獣と同様の存在と化した三姉妹。そう、もはやお伽話とされた三姉妹は現世においてその存在が許されない存在、居てはダメよの世界である。

よって彼女たちの体は少々透けているではないか。存在が否定された存在、この世の理から外れた外道、伝説の怪物であ~る。おっと、透けていると言っても服が透けているのではないぞ、存在そのものが透けているのじゃ。これでイヤらしい想像をした君たちには言っておこう、「悔い改めよ」と。

◇◇

さて、そんな三姉妹もバカではない。知恵もあれば美貌もあり、腹も空く。現状と原因を素早く察知した三姉妹、中でも三女のメデちゃんは一番若いとあってか柔軟に、そして理論的に考えることが出来た。そこで思いついたのが、そもそもの原因である爺さん、その孫にあたる俺に白羽の矢を立て責任追及してきたわけである。

そんな理由であれば、あの本の作者に言ってくれ、あれが主原因であろうと主張したが、生憎、あの本の作者は不詳、どこのどいつが書いたのかは分からない。だから俺のところに来たと言っていたが、ん? ではなぜ俺を知っているのだ? と疑問が沸騰してくるが、そこは問答無用で拉致された俺である。

ということで、汚物部屋と呼べそうな、いや事実そうなのだが彼女らに免じて『汚い部屋』程度にしておいてやろうと思いつつ、ゴミ山の三合目で待機している俺である。

そこで俺は特に拘束具のようなもので縛られているわけではないのだが、それでも逃げることが出来ない状態に陥っている。それは心理的な拘束とでも言えば良いのか、自分の意志では如何にもこうにも体を動かすことが出来ないでいるのだ。その間、三姉妹は協議を重ね、俺をどう料理したものかと思案中である。

せっかく捕らられた俺ではあるが、どうやら三姉妹とっては役に立ちそうにもなく、とんだ誤算であったようだだが、それを俺に問われても仕方のないことであろう。才能と才気に溢れる俺ではあるが、生憎とまだチャンスをものにしていない、つまるところ発展途上の俺なのである。そうであるからにして運さえ掴みさえすれば俺の天下は近い、と思っている日々である。

「これ、捨てるしかないじゃん」

俺の目の前で仁王立ちをする次女のエッちゃん、その方の有難いお言葉である。となると俺もその辺のゴミのように捨てられる運命なのであろうか。だが、体を拘束されているとはいえ口答えが出来ないわけではないぞ。

「待て、話せばわかる」と言ったはいいが秘策が有るわけではない。しかしそこは才気あふれる俺である。伊達に拉致られていたわけではないぞ。良く観察し良く噛めば健康と健全な肉体が手に入る、ではないが、どうやらこの三姉妹の特徴が分かりかけてきた俺である。そう、まずは相手を良く知れということだ。

「燃えるゴミは今日だった」とは三女のメデちゃんである。それが過去形であることに注意されたい。何故ならゴミの収集時間は午前8時まで、現在は疾うに日が暮れている時間である。それは部屋の窓から外を見れば分かるのだが、そこには分厚い、いや二束三文の安カーテンが掛けられている、というよりもブラ下がっているだけだ。どうもここの住民には圧倒的かつ壊滅的に生活力というものに欠けていると断定した。いや、そうではなく、ゴミの収集時間を過ぎているため、不当投棄しなければ次の収集日までは俺の生存は確約されたも同然、のはずだが、この三姉妹が地域のルール、掟を厳守するとは残念ながら思えない。ということは随時処分が可能ということか。ピンチだ。

「まあまあ」とは長女のステちゃんである。いいだろう、そんなに呑気に構えていられるのも今の内だ。いずれ俺のとっておきの策でお前たちを翻弄してくれよう。だがその前に、長女のステちゃんは掴みどころのないワカメか鰻のようにヌルヌルした性格のようである。それを言い換えれば優柔不断、万年最下位、廃部寸前の帰宅部といったところか。それに加え常に妹たちに依存しているようである。よって、ステちゃんは放置で構わないだろう。

そう考えると次女のエッちゃんはアホのようである。よって怒らせると不味そうだ。ということで三女のメデちゃんは一見賢そうに思えるが、俺からすればまだまだ子供、お子ちゃまである。攻略するならメデちゃんが最適であろうと俺は考えた。

そのメデちゃんは片目に眼帯、手には怪しい本を持っているのだが、その本こそ爺さんが書いたという日記帳である。それを元に俺を探し当てたと言っていたが、その本の入手経路や俺を探し当てた方法については問答無用である。もしかしたら本から漂う匂いを頼りにDNA判定をしたのかもしれい。ん? それはおかしいではないか。その日記帳の原本は俺が所有しているのだぞ。ちゃんと親父から本物だと聞いていたが。だが、そんなことは今となってはどうでも良い、とにかく説得の開始である。

「ああ、俺は俺であって爺さんとは何も関係がない、無関係だ。だから、その」
「静かに。それは分かっているから」

早速、俺の説得に食いついてきたメデちゃんである。あと一押しであろう。更に攻勢をかける俺である。

「それなら俺を解放してくれ。こんなことをしても無駄なだけだろう」
メデちゃんはまだまだ子供である。大人の事情とか世間の目など気にしてどうするよ、と大人の俺が親切丁寧に教授すれば理解できるはず。

「うるさいじゃん。そんなこと最初から知ってるじゃん。元に戻れないから困ってるんじゃん。でも責任とって欲しいじゃんか。あんた、バカ?」
「まあまあ」

あと少しというところでエッちゃんとステちゃんの介入である。これにより心を閉ざしてしまうメデちゃんである、と思う。せっかく改心しかけたメデちゃんを二人の姉がよって集って悪の道に引きずり込もうとする最悪の展開である。ならばそこに光を当て、真っ当な世界をメデちゃんに示すのが俺の役目ではないか。そうだ、そうに違いない。だから、そうだな、暫し待たれよ、チチンプイプイ。

この世からその存在を抹消されつつある三姉妹に愛の手を。しかし俺を除く全世界、全人類か彼女たちの存在を認めてはいない。それではどう足掻こうとも俺には勝ち目がないではないか。せめて特殊な力が有れば話は別だが、生憎とそれは温存中である。

だが、俺は閃いてしまったではないか。今の俺にはどうすることも出来なくても過去に戻り、爺さんの日記を消してしまえば良いのではないか。だがしかしそれにはタイムマシーンが必要となってくる。それをちょっとコンビニで買ってくるわけにはいかないだろう。仮に売っていたとしても、到底俺の財力でなんとかなる問題ではない。いや、そもそもなんで俺が金を出さなければならないのだ? それはおかしいだろう、いやいや、仮に売っていたらの話であって、それよりもコンビニではなく通販の方が有望であろう。

「タイムマシーンで過去に、爺さんの日記、消す、ば」と思わず口にしてしまった俺である。

「タイムマシーン? 過去? バカじゃん」とは何時ものエッちゃんである。勿論その後に「まあまあ」とステちゃんが続くが。

「過去、未来、日記、そうか、そうすれば、もしや、うん、そう、そう」とはメデちゃんの独り言である。そして俺の前に立ち塞がると、「責任を取ってもらおう、一緒に来い」と言いながら眼帯を外すメデちゃんである。

するとどうであろう、目が、部屋が、世界が、全銀河が、宇宙が回り出したではないかー。

「いきなりじゃん、その前に言うじゃん」
「まあまあ」

どんな時でもお決まりのセリフを言わずにはいられないエッちゃんとステちゃんである。だがそんな悠長なことを言っている場合ではない。回転するコマのような、いやいや、それどころではない、中性子星の光速回転のように、何が何だか分からない光景が、世界が宇宙が繰り広げられているのである。うおぉぉぉぉぉ。

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