逆・異世界転生 Ⅰ

Tro

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#14 2500年後の涙

#11 この世界と繋ぐもの

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「諸君、聞いてくれ。そして、我々を苦しめ閉じ込めている嘘、数々の嘘をこれから暴いていく。だから、……諸君、そして全世界の皆さん、聞いてくれ。俺の、これから言うことは全て真実である。それは——」

映像から語る男の姿や声を、ここに居る三人は誰も見てはいないが、情報空間に放たれた男の映像は、男が言うように全世界へと送られている。そして、少なくない数の人々がこれを見たことだろう。

本来は例の劇場から発信するつもりだったようだが、それは何者かの手引きによって阻止されてしまった。しかし、すぐさまプランBに移行、こうして男が持つ情報が世界を駆け巡っている、という訳である。だが、男の映像は21分間だけこの世界に存続し、その後、この世から抹殺されてしまったようである。それを短いととるかどうかは別問題として、誰かにとっては、とても不都合であったことは間違いないだろう。

男が映像で語ったことは、もちろん例の会社、陽一たちを奴隷として扱った会社のことである。そしてその会社の不正を暴き、糾弾する内容であったが、それを男がどのようにして入手したのかは不明である。しかしながら、その内容からして、おそらく内部告発されたものであろうくらいは推測できそうである。それ程、内部に精通していなければ得られそうにない情報であった、と言えるだろう。

その内容とは、例の会社が特許まで取得したという『合法的奴隷制度』その根幹を否定するものである。人を奴隷として扱うことは現在はもちろんのこと、遠い未来であっても『非人道的行為』とされている。しかし、それはあくまで対象が『人』であって、それがもし『人』でなかったとしたらどうだろうか。例えば、『人』に似たアンドロイドであれば、奴隷のように扱ったとしても何ら問題はないだろう。むしろ、そのような目的のために作られるはずだ。そこで、その『人』でなければという箇所を拡大解釈し、『人』であって『人』にあらず、という存在を考えつき、死人しびとであれば、人権を如何どううのとは言われないだろと考えたようだ。

そうして時代は会社の思惑と一致したのだ。それは、過去に人型のアンドロイドが普及したものの、諸問題が顕著になったため禁止されてしまったのだが、その利便性が忘れられていなかったことと、人が出来ることは殆ど再現できる、という『人型』であることの優位性が求められていた時である。そこで、アンドロイドという『機械』ではなく、本物の人間であれば、どこにも負けない商材となる、と会社は考え、過去から死人しびとを召喚するという、突拍子もないことを——古い時代の我々にはそう思えるが、未来ではそれが可能となっているようだ。

しかし、これに何ら問題が無いとは言い切れないだろう。いくら現時点では過去の人であっても、『生きた』人間を召喚、またはさらって来る訳であり、当然、社会からの批判は免れようがない。そこで捻り出したのが、過去において犯罪を、それも殺人なのど重罪を犯した者であり、かつそれらを使役できるのはその被害者の子孫である、という構図である。これならば、というか、これでかなりの批判をかわすことが出来た、そうだ。

過去に遡れば、犯罪者はゴロゴロと居ることだろう。そして同様にその被害者も同数以上居ることになる。そうなれば商売として成り立つとして、時代の流れに乗るかのように事業を拡大していった、ということになるらしい。更に、過去から人を連れてくるということは、既に『この世』の『人』ではない、言い換えれば魂だけの存在・霊魂なので、当然、人としての権利を持ち合わせてはいない、かつ、そのような存在を然るべき行政機関が口を挟めるものでもない。要は『人』であって『人』にあらず、という、とても都合の良い存在なのである、ということになっている。

◇◇

さて、遠い未来において、何でもかんでも可能になったとはいえ、大昔の人間を『蘇らせる』のではなく召喚する、という点が、如何にも矛盾を含んではいないだろうか。だってほら、あの陽一や例の男などは、生死を別にすれば同時に存在することになるではないか。それって『おかしい』のではないかという、ごく普通に疑問に思えてしまうが、そこはそれ、例の会社の特許にして最高秘密となっている訳で、それらの矛盾は『解決した』となっている。そしてそれが、『そんなものなんだ、ふ~ん』という具合に、あまり問題視されてこなかったようだ。だがそれはきっと、何か大きな力、例えば政治的な圧力があったに違いない、と思われる。

そうして隠された事実、というか真実は、このまま闇に葬られていく、と会社の偉い人たちは思ったことだろう。そんな隙を突くように、秘密という情報はシタシタと零れ落ち、例の男の手に渡った。そしてその情報は、まるで闇から光を求めるがごとく、世界中の人の目に触れることになり、ある者は信じ、ある者は信じなかった。

その情報、つまり真実とは、大昔に亡くなった例の男のDNAと、現在生きている例の男とでは、非常に微細なレベルにおいて相違があったのだ。つまりは『別人』ということである。ということは一体、例の男は誰なのであろうか。そして陽一も同様なのだろうか。

その答えは、『過去』から召喚した、と会社が自慢し、特許まで取得した技術が大いに疑わしいということである。——確かに過去から人を召喚する特殊な技術を持ち合わせていたようだが、問題はその過去、何時のどこの過去であるのか、という点である。そして真実とは、例の男や陽一たちを過去から連れてきた、までは正解であるが、その過去とは、この世界の過去ではなかった。つまり、会社の言っている『過去』とは、この世界の『過去』ではなく、別の、そう、別の時間軸、それもかなり隣接している時間軸を指していたのだ。それは別次元から『召喚』したということになるだろう。よって、無実の罪を着せられた陽一は加害者どころか被害者ということになる(あくまで現時点においての話であって、そのまま何事もなく、元の世界で時間が経過していれば、もしかして——の可能性は有り得るだろう)。

◇◇

三人の目の前に広がる画面は、既に何も映ってはおらず、例の男と陽一は、共に頭を座席に付けてスヤスヤと眠りこけている。一方、御嬢様の方は、いったい自分がどこに居るのかさえ良く分かっていないようだ。ましてそこが、ゴトゴトと揺れるでもなく、また高速移動しているらしいが、一切それを体感することは無く、ただただ退屈な時間が過ぎるばかりだったので、御嬢様の瞼が閉じるのも時間の問題であろう。

そうして、噂をすればなんとやらで、ウトウトしてきた御嬢様だったが、、右隣に座る例の男から、何やらカチッという音を聞いたような気がしたようだ。それで、そっと男の様子を伺っていたのだが、特に変わったところもなく、「深い眠りに落ちている」ようにしか見えなかったため、自分も目を閉じ、心地よい眠りに誘われて行くのであった。

こうして三人揃ってグースカピーとしている間、例の男の異変は既に始まっていたようだ。それは、徐々にではあるが、男の姿が薄くなり、だんだんと存在そのものが消えて行くのであった。もしこれを御嬢様が見ていたら、きっと可愛らしい悲鳴をあげたことだろう。

こうして男の姿は、まるで幽霊のように薄くなり、この世から消えて——しまったのだが、これは先程、御嬢様が聞いたという音と関係があるようだ。あれは男の首輪が外れた音であり、その結果、男はこの世界から消えた、ということになるらしい。ということはつまり、あの首輪は男を奴隷として縛るものではなく、この世界に繋ぎ止めるための拘束具だったようだ。

それでは、この世界から解放された男はどこへ行ったのか、であるが、普通に考えれば元いた場所に戻ったというのが自然であり、それがこの世の理というものだろう。では、陽一も消えてしまったのか、というと、まだ御嬢様の隣で寝息を立てているところである。でも、いずれ同様な運命を辿ることだろう。——その前に、いま陽一が見ている夢を覗いてみることにしよう。一体こんな時にどのような夢を見ているのか、興味は湧かないだろうか、では。

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