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第7章 コーヒーは世界を回すかもしれない
第108話 よっしゃ、カフェをつくるぞ!
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とはいえトーヴァの言うことはもっともだった。今、アビシニア村を挙げた一大事業としてコーヒーの生産および流通を進めようとしている。
コーヒーのうんぬんかんぬんはチハヤ達に任せて、私たちはコーヒーをスムーズに広めるためのお店──つまりはカフェづくりに急ピッチで取り組まないといけない。
「サラちゃーん!! 木材がぜんぜん足りないよ! もっと持ってきてくれ~!!」
「わかりましたー!!」
今こそおじいちゃんが残したギルドの2階が役に立つときだった。ギルド兼カフェにするにあたって、みんなとあれこれ考えた結果、1階は受付とギルド機能を持たせて2階にカフェ兼簡易宿舎を設けることにした。
カフェだけなら心もとないけど、外からきたギルド員が泊まれる場所を用意することは本来のギルドの形。しぶっていたトーヴァも納得してくれて、改築工事がはじまっている。
ついでにと言うことで古びたギルドの建物全体を新しく生まれ変わらせる大工事だ。
村唯一の大工でみんなの家やお店を建ててきたバルトルトさんの指示で、私たちは分担して作業を進めることにした。
「グレースは、エルサさんと一緒に森から木材を集めてきて。……ただし、村のみんなを怖がらせないためにモンスターは人目につかないとこでね?」
「あい!」
元気よく弾けるような笑顔で返事をしてくれたグレースは、エルサさんの先導で森に向かう。
森には、コーヒーノキを育てるために伐採した大木が山ほど集まっている。入手した大木は、エルサさんが使いやすい大きさにカットし、あとは実際に使える木材にクリスさんの魔法で仕上げる。この工程で木はどんどん集まっていった。
人手が必要なために村のみんなやマリーのギルド員、そしてチハヤとクリスさんのゴーレムも使わせてもらって、急ぎ改築作業を進めていく。
カンカンカン、と小気味いい音が響く。
「そこの若いの! もっと腰入れてクギを打ち込め!」
「……いやいやいや、俺は一介の鍛冶師なんだけど」
「つべこべ言わずにやりな! レオナルド!!」
2階の高さに組んだ足場では、トーヴァやレオナルドのおっさんも汗をかきながら作業を進めている。私はと言うと、みんなに指示を出したりそれから──。
「あら、サラちゃん。やっているわね~」
様子を見に来る誰かの相手をしたりしていた。手で日差しをつくり、眩しそうに建物をながめるのは掃除屋のシーラさん。
「宿屋もできるって聞いて。完成したら、私もそこで働かせてくれるのかしら」
少し期待が込められたシーラさんのていねいな口調。私は満面の笑みを浮かべた。
「はい! 約束通り、シーラさんもギルドの一員です!」
そんなこんなで数日、コーヒーの研究とカフェの建築が同時並行に進められていった。私が知る限り十数年となかった村の一大変革に、騒がしく忙しく、でも楽しい時間が過ぎていく。
そして──。
*
「できました。一杯どうぞ、サラ様」
「サンキュ」
工事の終わったギルドの2階──新しく建設したカフェに私はいた。以前の薄汚い壁や天井ではなくて、ピカピカのペカペカの真っ白な壁はどこか落ち着かない。
そして、チハヤが間近にいるというのも落ち着かない。
「このカフェ──いえ、当店の一番のお客様です。淹れたてのコーヒーをどうぞ、味わってください」
言われた通りにそっとコーヒーカップに口をつけた。このカップも真新しいもので、チハヤが王都で買ってきたものの一つだ。
なにもかもが新しいカフェで、私はコーヒーを飲んだ。
ブラックだから、独特の強い苦味はあって……だけどその奥にどこかキリッとした味わいがある。
「いかがでしょうか?」
チハヤの表情がいつもよりも硬い。なぜかはわからないけど、緊張しているということだけは伝わってきた。
「……正直、ブラックはまだおいしさがわからないんだよね。だけど、前に飲んだときは苦いだけだったけど、今はちょっと味がわかるというか……う~ん、ごめんそんな感じ」
対して評価できない舌と、的確な言葉が浮かばない語彙力の無さには我ながら困ってしまう。
けど、チハヤはとてもうれしそうに満足気に微笑んだ。
「ありがとうございます。サラ様。それがコーヒーの味わいです」
チハヤは向かいの席に座ると、自分用に淹れたコーヒーカップを片手で持ち上げる。
「そうなんだ。じゃあ、いずれ慣れてくるかな? 村のみんなみたいに堂々とおいしいって、言えるようになるといいんだけど」
チハヤもコーヒーを飲む。とても様になる仕草だ。場所が違うだけなのに、なぜか特別なことをしている気分になってしまう。
頭の中では、なぜかヤマトさんと過ごした一日のことを思い出してた。
「サラ様」
チハヤはカップを置くと、改めてというかまじまじと私を見つめた。
「コーヒーの安全性と成分の結果を話す前に、伝えたいことがあります」
……えっ。待って。今、カフェにいるのはチハヤと私だけ。二人きりで伝えたいことって──。
心臓が早鐘をうつ。チハヤの表情が少しいつもと違うような気がして、目が泳いでしまう。っていうか、どこ見たらいい!?
「サラ様」
「は、はい……!」
あ~声が上擦っている! 焦るな、私!!
私の動揺に気がついていないのか、それとも気がついて丸ごと包み込もうとしているのか、わからないけどチハヤは笑顔を浮かべた。今まで見たことのないレベルの、まさに絵から飛び出てきたみたいな、天使と形容するにふさわしい笑顔に私は何も考えられなくなった。
チハヤは言った。
「コーヒーをつくること、カフェを開きコーヒーを広げること、そして至高の一杯を淹れること。それがこの世界に来た私の大きな目標でした。その夢を叶えていただきありがとうございました」
「へ? あっ、いや──」
なんだよ、コーヒーのお礼かよ! こ、告白されるんじゃないかって……いや、私の今の乙女心を返してくれ!
「なので、カフェでの最初の一杯はサラ様に提供したいと思ったのです。大切なお客様、いえ大切な人として」
「ぶっ……!」
不意打ちあっぶね! ちょうど飲んでいたコーヒーが口から出ちまうところだった!
「それでは、コーヒーの結果をリリアさんとレオンさんからお聞きください」
チハヤがイスから立ち上がると、階段をのぼって二人が入ってくる。チハヤは入れ違いで一階へ戻っていった。
……くっそ、あいつ。毎回毎回、不意打ちを喰らわせやがって! わざとやってるんじゃないだろうな!
コーヒーのうんぬんかんぬんはチハヤ達に任せて、私たちはコーヒーをスムーズに広めるためのお店──つまりはカフェづくりに急ピッチで取り組まないといけない。
「サラちゃーん!! 木材がぜんぜん足りないよ! もっと持ってきてくれ~!!」
「わかりましたー!!」
今こそおじいちゃんが残したギルドの2階が役に立つときだった。ギルド兼カフェにするにあたって、みんなとあれこれ考えた結果、1階は受付とギルド機能を持たせて2階にカフェ兼簡易宿舎を設けることにした。
カフェだけなら心もとないけど、外からきたギルド員が泊まれる場所を用意することは本来のギルドの形。しぶっていたトーヴァも納得してくれて、改築工事がはじまっている。
ついでにと言うことで古びたギルドの建物全体を新しく生まれ変わらせる大工事だ。
村唯一の大工でみんなの家やお店を建ててきたバルトルトさんの指示で、私たちは分担して作業を進めることにした。
「グレースは、エルサさんと一緒に森から木材を集めてきて。……ただし、村のみんなを怖がらせないためにモンスターは人目につかないとこでね?」
「あい!」
元気よく弾けるような笑顔で返事をしてくれたグレースは、エルサさんの先導で森に向かう。
森には、コーヒーノキを育てるために伐採した大木が山ほど集まっている。入手した大木は、エルサさんが使いやすい大きさにカットし、あとは実際に使える木材にクリスさんの魔法で仕上げる。この工程で木はどんどん集まっていった。
人手が必要なために村のみんなやマリーのギルド員、そしてチハヤとクリスさんのゴーレムも使わせてもらって、急ぎ改築作業を進めていく。
カンカンカン、と小気味いい音が響く。
「そこの若いの! もっと腰入れてクギを打ち込め!」
「……いやいやいや、俺は一介の鍛冶師なんだけど」
「つべこべ言わずにやりな! レオナルド!!」
2階の高さに組んだ足場では、トーヴァやレオナルドのおっさんも汗をかきながら作業を進めている。私はと言うと、みんなに指示を出したりそれから──。
「あら、サラちゃん。やっているわね~」
様子を見に来る誰かの相手をしたりしていた。手で日差しをつくり、眩しそうに建物をながめるのは掃除屋のシーラさん。
「宿屋もできるって聞いて。完成したら、私もそこで働かせてくれるのかしら」
少し期待が込められたシーラさんのていねいな口調。私は満面の笑みを浮かべた。
「はい! 約束通り、シーラさんもギルドの一員です!」
そんなこんなで数日、コーヒーの研究とカフェの建築が同時並行に進められていった。私が知る限り十数年となかった村の一大変革に、騒がしく忙しく、でも楽しい時間が過ぎていく。
そして──。
*
「できました。一杯どうぞ、サラ様」
「サンキュ」
工事の終わったギルドの2階──新しく建設したカフェに私はいた。以前の薄汚い壁や天井ではなくて、ピカピカのペカペカの真っ白な壁はどこか落ち着かない。
そして、チハヤが間近にいるというのも落ち着かない。
「このカフェ──いえ、当店の一番のお客様です。淹れたてのコーヒーをどうぞ、味わってください」
言われた通りにそっとコーヒーカップに口をつけた。このカップも真新しいもので、チハヤが王都で買ってきたものの一つだ。
なにもかもが新しいカフェで、私はコーヒーを飲んだ。
ブラックだから、独特の強い苦味はあって……だけどその奥にどこかキリッとした味わいがある。
「いかがでしょうか?」
チハヤの表情がいつもよりも硬い。なぜかはわからないけど、緊張しているということだけは伝わってきた。
「……正直、ブラックはまだおいしさがわからないんだよね。だけど、前に飲んだときは苦いだけだったけど、今はちょっと味がわかるというか……う~ん、ごめんそんな感じ」
対して評価できない舌と、的確な言葉が浮かばない語彙力の無さには我ながら困ってしまう。
けど、チハヤはとてもうれしそうに満足気に微笑んだ。
「ありがとうございます。サラ様。それがコーヒーの味わいです」
チハヤは向かいの席に座ると、自分用に淹れたコーヒーカップを片手で持ち上げる。
「そうなんだ。じゃあ、いずれ慣れてくるかな? 村のみんなみたいに堂々とおいしいって、言えるようになるといいんだけど」
チハヤもコーヒーを飲む。とても様になる仕草だ。場所が違うだけなのに、なぜか特別なことをしている気分になってしまう。
頭の中では、なぜかヤマトさんと過ごした一日のことを思い出してた。
「サラ様」
チハヤはカップを置くと、改めてというかまじまじと私を見つめた。
「コーヒーの安全性と成分の結果を話す前に、伝えたいことがあります」
……えっ。待って。今、カフェにいるのはチハヤと私だけ。二人きりで伝えたいことって──。
心臓が早鐘をうつ。チハヤの表情が少しいつもと違うような気がして、目が泳いでしまう。っていうか、どこ見たらいい!?
「サラ様」
「は、はい……!」
あ~声が上擦っている! 焦るな、私!!
私の動揺に気がついていないのか、それとも気がついて丸ごと包み込もうとしているのか、わからないけどチハヤは笑顔を浮かべた。今まで見たことのないレベルの、まさに絵から飛び出てきたみたいな、天使と形容するにふさわしい笑顔に私は何も考えられなくなった。
チハヤは言った。
「コーヒーをつくること、カフェを開きコーヒーを広げること、そして至高の一杯を淹れること。それがこの世界に来た私の大きな目標でした。その夢を叶えていただきありがとうございました」
「へ? あっ、いや──」
なんだよ、コーヒーのお礼かよ! こ、告白されるんじゃないかって……いや、私の今の乙女心を返してくれ!
「なので、カフェでの最初の一杯はサラ様に提供したいと思ったのです。大切なお客様、いえ大切な人として」
「ぶっ……!」
不意打ちあっぶね! ちょうど飲んでいたコーヒーが口から出ちまうところだった!
「それでは、コーヒーの結果をリリアさんとレオンさんからお聞きください」
チハヤがイスから立ち上がると、階段をのぼって二人が入ってくる。チハヤは入れ違いで一階へ戻っていった。
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もし違っていた場合は修正しますので、遠慮なくお伝えください。
(追記2018.07.02)
お気に入り400超え、驚きで声が出なくなっています。
どんどん上がる順位に不審者になりそうで怖いです。
(追記2018.07.24)
お気に入りが最高634まできましたが、600超えた今も嬉しく思います。
今更ですが1日1エピソードは書きたいと思ってますが、かなりマイペースで進行しています。
ちなみに不審者は通り越しました。
(追記2018.07.26)
完結しました。要らないとタイトルに書いておきながらかなり使っていたので、サブタイトルを要りませんから持ってます、に変更しました。
お気に入りしてくださった方、見てくださった方、ありがとうございました!
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