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第7章 コーヒーは世界を回すかもしれない
第107話 仲が良いのか悪いのかはっきりしてくれ
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「なんでトーヴァ先輩は私を避けるのでしょうか?」
えーっと、今聞くことなのか、とは言えない。仕事とは関係のない話というわけじゃなくて、物理的にしんどい今の状況で聞くことなのか、ってこと。
私たちは例のごとく山道を登っていた。まあ、それはいいんだけど、何度往復してもこの道は慣れない。息が上がるし、足が痛い。
チハヤはともかく、マリーもそしてリリアも平気な顔をしているけど、ついでにリリアは心ここにあらずという感じだけど、いったいギルドの人たちはどんな鍛錬を積んでいるんだ!?
……かといって沈黙はいやだ。おい、誰か答えろよ!
仕方ないから、私が口を開いた。
「トーヴァとなにがあったの? ギルドセンターで」
先輩と後輩の間柄ということは、きっとトーヴァが指導していたんだろうと思うけど、ギルドでの様子を見る限りあいつの指導はめちゃくちゃだ。マリーんとこのギルドの事務員も心配してたって言ってたし。
正直、慕われる要素ゼロなんだが。
「トーヴァ先輩には、お世話になったんです。右も左もわからなかった私をここまで育ててくれて──」
ぽつりぽつりと言葉をつむぎながら、リリアはトーヴァとの過去を語っていく。あいつ、乱暴だけど面倒見はいいからな。もしかしたらウマが合ったのかもしれない。
「まず、教えられたのはギルド員になめられない方法です」
「……はい?」
「なめてる奴にはガンをつけろと言われました。それから、文句言ってくる奴には何倍もまくしたてて、それでもダメなら手を出せと」
いや、否定しようと思ったけど、容易にトーヴァの姿を想像できてしまう自分がいる! あいつ、なんてこと教えてやがんだ!!
「それから──」
リリアの話は、ちょうど道が開けコーヒーノキが見えてきたところで止まった。トーヴァからの教えは、それは常識外れのひどいものだった。どれだけひどいかと言うと、マリーが頭を抱え、チハヤが眉間にしわを寄せるほど。
トーヴァがふざけてなのか真面目なのかわからないけど、話していた「教え」をリリアはたぶん真面目すぎるから疑うこともなく真に受けたのだろうと思う。
「はー話してなんだかすっきりしました! また、先輩に話してみます! それで、これが例のコーヒーノキですね!」
こっちは疲れたけど、リリアは悩みを話せたのかすっごい元気だ。
「そう、これがコーヒーの実をつくる木。調べてもらってもいい?」
「もちろんです!!」
ちょいと引き込まれそうな輝く笑顔を浮かべると、リリアはさっそく木に近づいていった。
いい子だ~とてもああ~疲れたはずなのに元気がもらえる~。ああ、エルサさんとグレースはともかくクリスさの毒牙には気をつけよう。絶対いらんこと言いそうだもん。
「ふむ。リリアさんの見立て、気になります。行ってきていいですか、サラ様!」
ダメって言われても行くんだろうが。
はいはい、と返事をするとチハヤはリリアの横に並んでまた熱心に話し込んでいる。そして、一緒にコーヒーノキの木肌を触っていた。……なぜ?
「わたくしも出資者として話に参加いたします」
マリーまで加わり、木肌を触っている。ついでにレオンさんを始め錬金術師も集まってきて、なんやかんやと小難しい話をしていた。
……ここにいても意味ねぇーな。
「チハヤ」
*
ということで、チハヤの魔法で一足早くギルドに戻ってきたわけだけど。机に向かっていたトーヴァが化物を見たような勢いで壁に張り付き私を凝視していた。
「な、なんだよ。サラか! 驚かすんじゃねぇーよ!」
「リリアならまだかかりそうだよ。……ってか、なんでそんなに逃げ回ってるの? あの子は少し寂しそうだったけど」
「ああ、いや……」
トーヴァはバツが悪そうに頬をかく。そして、観念したのか真相を語り始めた。
「あいつはすげぇ真面目な奴だったんだ、だから──」
……トーヴァが話した中身はこうだった。真面目過ぎるがゆえに仕事においても、ギルド員との関係においても空回りばかりしていたリリア。落ち込んで自信を失っていたところに話しかけにいったのが始まりだった。大げさな「対処法」を教えれば事態が好転するかもしれないと、冗談みたいなことを言ったら──。
「本気にしたってこと?」
「ああ。そしたら予想外にハマって、仕事が上手くいくようになったって目を輝かせて。引くに引けなくなって適当なことを言っていたら、暴走するようになってしまった」
いつもの威勢はどこへ行ったのか、落ち込むトーヴァ。いや、不器用かよ。どっちも。お互いがお互いのことを考えているはずなのに、微妙にボタンを掛け違っていて上手くいかない。
私が大きくため息をつくと、久しぶりにチッと舌打ちを鳴らしてトーヴァは伸びをした。
「リリアの話は以上だ。それより、ギルドをカフェにするんだろ!? ギルド長。こっちはこっちで準備を進めないと」
「……そうだね」
そうなんだけど、なんかモヤモヤすんだよな。二人のこの感じ、放っておけないというか既視感があるような気がするっていうか……。
えーっと、今聞くことなのか、とは言えない。仕事とは関係のない話というわけじゃなくて、物理的にしんどい今の状況で聞くことなのか、ってこと。
私たちは例のごとく山道を登っていた。まあ、それはいいんだけど、何度往復してもこの道は慣れない。息が上がるし、足が痛い。
チハヤはともかく、マリーもそしてリリアも平気な顔をしているけど、ついでにリリアは心ここにあらずという感じだけど、いったいギルドの人たちはどんな鍛錬を積んでいるんだ!?
……かといって沈黙はいやだ。おい、誰か答えろよ!
仕方ないから、私が口を開いた。
「トーヴァとなにがあったの? ギルドセンターで」
先輩と後輩の間柄ということは、きっとトーヴァが指導していたんだろうと思うけど、ギルドでの様子を見る限りあいつの指導はめちゃくちゃだ。マリーんとこのギルドの事務員も心配してたって言ってたし。
正直、慕われる要素ゼロなんだが。
「トーヴァ先輩には、お世話になったんです。右も左もわからなかった私をここまで育ててくれて──」
ぽつりぽつりと言葉をつむぎながら、リリアはトーヴァとの過去を語っていく。あいつ、乱暴だけど面倒見はいいからな。もしかしたらウマが合ったのかもしれない。
「まず、教えられたのはギルド員になめられない方法です」
「……はい?」
「なめてる奴にはガンをつけろと言われました。それから、文句言ってくる奴には何倍もまくしたてて、それでもダメなら手を出せと」
いや、否定しようと思ったけど、容易にトーヴァの姿を想像できてしまう自分がいる! あいつ、なんてこと教えてやがんだ!!
「それから──」
リリアの話は、ちょうど道が開けコーヒーノキが見えてきたところで止まった。トーヴァからの教えは、それは常識外れのひどいものだった。どれだけひどいかと言うと、マリーが頭を抱え、チハヤが眉間にしわを寄せるほど。
トーヴァがふざけてなのか真面目なのかわからないけど、話していた「教え」をリリアはたぶん真面目すぎるから疑うこともなく真に受けたのだろうと思う。
「はー話してなんだかすっきりしました! また、先輩に話してみます! それで、これが例のコーヒーノキですね!」
こっちは疲れたけど、リリアは悩みを話せたのかすっごい元気だ。
「そう、これがコーヒーの実をつくる木。調べてもらってもいい?」
「もちろんです!!」
ちょいと引き込まれそうな輝く笑顔を浮かべると、リリアはさっそく木に近づいていった。
いい子だ~とてもああ~疲れたはずなのに元気がもらえる~。ああ、エルサさんとグレースはともかくクリスさの毒牙には気をつけよう。絶対いらんこと言いそうだもん。
「ふむ。リリアさんの見立て、気になります。行ってきていいですか、サラ様!」
ダメって言われても行くんだろうが。
はいはい、と返事をするとチハヤはリリアの横に並んでまた熱心に話し込んでいる。そして、一緒にコーヒーノキの木肌を触っていた。……なぜ?
「わたくしも出資者として話に参加いたします」
マリーまで加わり、木肌を触っている。ついでにレオンさんを始め錬金術師も集まってきて、なんやかんやと小難しい話をしていた。
……ここにいても意味ねぇーな。
「チハヤ」
*
ということで、チハヤの魔法で一足早くギルドに戻ってきたわけだけど。机に向かっていたトーヴァが化物を見たような勢いで壁に張り付き私を凝視していた。
「な、なんだよ。サラか! 驚かすんじゃねぇーよ!」
「リリアならまだかかりそうだよ。……ってか、なんでそんなに逃げ回ってるの? あの子は少し寂しそうだったけど」
「ああ、いや……」
トーヴァはバツが悪そうに頬をかく。そして、観念したのか真相を語り始めた。
「あいつはすげぇ真面目な奴だったんだ、だから──」
……トーヴァが話した中身はこうだった。真面目過ぎるがゆえに仕事においても、ギルド員との関係においても空回りばかりしていたリリア。落ち込んで自信を失っていたところに話しかけにいったのが始まりだった。大げさな「対処法」を教えれば事態が好転するかもしれないと、冗談みたいなことを言ったら──。
「本気にしたってこと?」
「ああ。そしたら予想外にハマって、仕事が上手くいくようになったって目を輝かせて。引くに引けなくなって適当なことを言っていたら、暴走するようになってしまった」
いつもの威勢はどこへ行ったのか、落ち込むトーヴァ。いや、不器用かよ。どっちも。お互いがお互いのことを考えているはずなのに、微妙にボタンを掛け違っていて上手くいかない。
私が大きくため息をつくと、久しぶりにチッと舌打ちを鳴らしてトーヴァは伸びをした。
「リリアの話は以上だ。それより、ギルドをカフェにするんだろ!? ギルド長。こっちはこっちで準備を進めないと」
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